PM理論とは?意味や分類、診断方法や活用例などをわかりやすく解説

2021-09-15

私たちは、様々な集団に属しながら生活をしています。集団は何らかの目標に向かって進み、そこには目標達成のために集団を導いていくリーダーの存在があります。

こうした組織を目標達成に導く能力や資質のことをリーダーシップと呼びます。20世紀以降、リーダーシップに関する研究が盛んに行われ、様々な理論が提唱されています。

今回は、代表的なリーダーシップ論のひとつである「PM理論」を取り上げ、PM理論とは何か、意味や分類、診断方法、活用例などをわかりやすく紹介します。

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PM理論とは

PM理論とは、三隅二不二が提唱した、集団におけるリーダーシップの類型化を試みた理論です。

リーダーシップの行動をP(Performance:目標達成)機能M(Maintenance:集団維持)機能に分け、その2つの機能の強さによって、リーダーシップの方向性を4つに分類しています。

PM理論は、リーダーシップの行動に着目したアプローチが特徴であり、リーダーシップ論のうち「行動理論」に位置付けられます。

リーダーシップ論の変遷

リーダーシップ研究において、まず考えられた理論が「資質理論」と呼ばれるリーダーシップに適する資質特性を探るアプローチでした。つまり、リーダーは生まれながら持っている先天的な特性によってリーダーシップを発揮していると考えられていました。

しかし、資質や特性だけではリーダーシップを説明できないとして、優れたリーダーシップを発揮する人とそうでない人の行動の違いを研究し、リーダーシップを発揮する上で有効な行動を探る「行動理論」が登場しました。

さらに、「状況適合理論」と呼ばれる、個人の特性や行動だけでなく、どのような条件下でどのような行動が有効なのかといった様々な状況や条件を考慮したアプローチが登場し、その後、今日に至るまで様々な理論が提唱されています。

P(Performance)機能の意味と具体例

P(Performance)機能とは、「目標達成機能」と訳され、集団の目標達成・課題解決・生産性向上など成果を上げるために発揮される機能を指します。

具体例としては、目標設定や計画立案、進捗管理、メンバーへの指示・指導などが挙げられます。

提唱者の三隅二不二によると、P機能は目標達成のために、厳しく力強い、父親のようなリーダーシップと表現されえる機能です。

M(Maintenance)機能の意味と具体例

M(Maintenance)機能とは、「集団維持機能」と訳され、人間関係を良好に保ち、チームワークを維持するなど、集団に調和をもたらすために発揮される機能を指します。

具体例としては、メンバーへの声掛け(褒める・労う)や気遣い、メンバーの相談に乗る、メンバー間のトラブル解決に関与するなどが挙げられます。

なお、父性的なP機能に対して、M機能は母親のように受容的なリーダーシップと表現されます。

PM理論におけるリーダーシップの分類

PM理論では、リーダーシップを目標達成と機能維持の2つの視点から、P機能・M機能の強弱によってリーダーシップを分類しており、いずれかの機能が弱いと組織に損失をもたらすと考えられています。

機能が強い場合をアルファベット大文字・機能が弱い場合を小文字で表しており、以下のPM型・Pm型・pM型・pm型の4つに分類されます。

PM型

P機能・M機能ともに備わっており、理想的なリーダーシップ像と考えられています。

P機能が強く、目標を明確にして成果を上げる力を有していることに加えて、M機能の特徴である、チームワークを重んじて集団をまとめることもできます。

Pm型

P機能が強く、M機能が弱いことから、目標達成能力が高い一方で、集団をまとめる力に乏しいタイプです。

P機能が強いため、目標設定や計画が明確で、メンバーへの指示を徹底するなど管理して、目標達成することが可能です。

しかし、M機能が弱いため、メンバーに気を配ることが不得手であり、メンバーのモチベーション向上に至らず、長期的にはパフォーマンスが低下してしまうことも懸念されます。

そのほか、集団をうまくまとめることができないため、集団の雰囲気は悪くなり、メンバーが残らないといった場合も少なくありません。

pM型

P機能が弱く、M機能が強いことから、集団をまとめる能力は高いものの、集団の成果を上げる力に乏しいタイプです。

M機能が強いため、面倒見が良く、メンバー間の関係を良好に保つなど集団をまとめる力は備わっています。

しかし、目標達成に向けて戦略や計画を立てるなどのP機能が弱く、メンバーに気を遣いがちで集団を引っ張ることが苦手であり、集団の成果を上げる力が不足しています。

pm型

P機能・M機能ともに弱く、集団の成果を上げることも、集団をまとめることも難しい、リーダーシップに乏しいタイプです。

PM理論の活用

PM理論は、リーダーシップの自己分析のほか、組織においても人材配置や教育など様々な場面で活用されています。

自己分析

自身の行動をP機能とM機能に分けて振り返ることで、自らの強みを知り、伸ばしていくべき機能が見えやすくなり、より良いリーダーシップを発揮することに近づきます。

例えば、M機能が弱い場合は、メンバーとのコミュニケーションの質を高めていくことが重要であり、対応としては1on1ミーティングのようなメンバーと対話の機会を設けることが挙げられます。

こうしたメンバーに気を配り、意見を聴く機会を増やす行動が、次第にメンバーからの信頼を集め、相談しやすい雰囲気が醸成されるなど、集団のまとまりをもたらすM機能の向上につながります。

一方、P機能を伸ばすためには、目標達成を意識した行動を取ることが重要です。対応としては、明確で具体的な目標を掲げてメンバーに共有し、目標達成に向けた行動計画を立て、メンバーの進捗管理や指導を行うことが挙げられます。

さらに、自身が目標達成への意欲を高める姿勢を示していくことによって、メンバーの意識を変える上で大切な行動となり、P機能の向上につながります。

組織分析

PM理論は組織分析を進める上でも役立てられています。

例えば、全体としてM機能が弱い場合だと、組織内での対立が多く、まとまりに欠けている様子が想像されます。P機能が強い組織では、一見すると成果を上げているものの、組織の雰囲気は悪く、離脱するメンバーも少なくないため、長期的な発展が困難になることが懸念されます。

一方、P機能が弱い場合は、目標達成に向けての意欲に乏しく、組織内で馴れ合いが生じている様子が想像されます。M機能の強さからメンバー間の関係が良好に保たれていても、集団のまとまりを意識するあまり、他者への指摘が遠慮しがちになるなど、成果の向上に結び付きにくいことが懸念されます。

このように組織内のバランスを把握することは、どこに誰を配置するべきかといった判断に役立ちます。また、それぞれ得意・不得意もあるため、複数人が協力してリーダーシップを発揮する形を作り、お互いの強みを生かして、弱みを補い合うといった配置を行うことも考えられます。

加えて、組織全体として弱みとなる機能があれば、その機能を高めることに主眼を置いた研修や教育を実施することで、組織体制の改善や発展につなげることが可能となります。

PM理論の診断方法・テスト

PM理論において、自身や上司、自組織がどのタイプに分類されるかを把握するために、診断ツールを活用することも一法です。

インターネットで「PM理論診断」などで検索すると見つけることができますが、「株式会社HEARTQUAKE」が提供している「PM理論診断テスト」などが代表的です。

P機能・M機能に関する各10項目ずつ(計20項目)の質問に対して、当てはまるかどうかを5段階で回答します。そして、合計点数から4つのタイプに分類されます。

自己採点によって日頃の自身の行動を振り返るほか、部下など他者による採点によって客観的な評価を把握することも重要です。自分の中ではできていると思っていたことが、実は周囲には伝わっていなかったという場合もあり、周囲とのギャップを埋めることにもつながります。

PM理論は資質ではなく行動に主眼を置いており、得点や分類は変化し得るものと考えられます。そのため、1度きりではなく定期的に診断して自身を振り返りながら、足りない部分を伸ばすための行動目標を立てることも大切です。

PM理論について学べる本

最後に、リーダーシップ論やPM理論について詳しく学ぶ上で参考になる書籍を紹介します。

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PM理論を含め、様々なリーダーシップ論が分かりやすくまとめられています。一読することで、リーダーシップ論の概要を掴むことができる一冊です。

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理論編・実践編の構成となっており、理論編ではリーダーシップの変遷や各論が整理され、全体像が分かりやすく理解できる内容です。その後、実践編を読むことで活用法など実践的なイメージが掴むことができ、バランスの良い1冊となっています。

30年以上前に発売された書籍ではありますが、PM理論を提唱した三隅二不二著書の著書であり、PM理論とは何かを理解する上では非常に役立つ1冊です。

日々の行動によってリーダーシップを伸ばす

PM理論では、リーダーシップを「行動」と捉えられています。つまり、生まれ持った資質だけでなく、日々の行動を意識することによってリーダーシップを発揮することができると考えます。

PM理論は、2つの機能を軸にしたシンプルで分かりやすい理論であり、自身の特徴を把握し、伸ばすべきポイントや行動指針を明確にすることに役立ちますので、一度活用されてみてはいかがでしょうか。

参考文献

村山昇 著 若田紗希 絵(2018)『働き方の哲学 360度の視点で仕事を考える』ディスカヴァー・トゥエンティワン
小野善生 著(2013)『最強の「リーダーシップ理論」集中講義』日本実業出版社
舘野泰一・堀尾志保 著(2020)『これからのリーダーシップ 基本・最新理論から実践事例まで』日本能率協会マネジメントセンター
山岸俊男 監修(2011)『徹底図解 社会心理学―歴史に残る心理学実験から現代の学際的研究まで』新星出版社

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    • この記事を書いた人

    blue_horizon

    民間企業在職中に心理カウンセラーを志し、心理学を学び始める。臨床心理士指定大学院卒業後は、司法及び産業領域の心理職として稼働。公認心理師・臨床心理士。

    -日常生活への応用

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