心理療法(サイコセラピー)とは?カウンセリングとの違いやその種類と効果について

2021-07-14

今日、様々な場面で心理療法(サイコセラピー)という言葉が聞こえてくるようになりました。心理療法(サイコセラピー)とは、医療分野だけでなく教育分野・産業分野でも活用されている治療方法です。

今回はそんな心理療法(サイコセラピー)について、種類や効果、よく混同されるカウンセリングとの違いなどを解説し、学ぶ方法も合わせてご紹介いたします。

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心理療法(サイコセラピー)とは

心理療法(サイコセラピー)とは、主に心理学的な領域で呼ばれる名称であり、医学的な領域では精神療法と呼ばれることが多い療法です。

心理療法は広範な意味を含んでおり、様々な近接する専門領域(医療・カウンセリング等)の理論や方法に重なる部分も多いため、今回は心理領域に特化してご紹介します。

心理療法の意味と定義

心理療法とは、専門的な知識・技術を習得した専門家(公認心理師・臨床心理士)が心理的問題を抱えているクライエントに対して、問題の解消もしくは減少させることを目的とした療法です。

個人に対して行われるものだけでなく、集団に対して行われる療法もあります。また、心理療法は特定の理論モデルに準拠して行われるため、エビデンス(科学的根拠)がある療法です。その為、宗教などの信仰による精神的安定を獲得する目的とは、根本的に異なっています。

カウンセリングとの違いと共通点

一般的に心理療法は、心理的問題に対しての治療行為を目的としているのに対し、カウンセリングは人間が人生の様々な場面で直面する問題への対処を目的としている、という点で違いがあります。

これは、心理療法が医学的な治療方法として生まれたきた歴史背景がある為であり、現在も医学領域では精神療法と呼ばれ、病気を治療する医学モデルに基づいて使われることが多いことからも、カウンセリングとは大きく異なっています、

しかし、心理的問題に対して援助を行う点は共通しています。面談や対話を中心として患者を援助する点はとても似ているし、教育分野や産業分野においてはカウンセリングと呼ばれていることが多い事も事実です。

また、実際の現場では人生において誰もが直面する問題と、医学的問題を分けることが難しいケースも多くある為、心理療法とカウンセリングを併用して行うことも少なくありません。

心理療法の理論

心理療法には、それぞれの理論に基づいて大きく4つの種類があります。

精神力動的な心理療法

フロイトの精神分析に代表される心理療法です。クライエントの思考や感情、行動に影響を与えている無意識にアプローチし、心理的問題を解消しようとする療法です。発達段階や人生経験の中で獲得してきた自我や、様々な人間関係を重視します。

認知行動的な心理療法

観察可能な行動に焦点を当てた行動療法に、人間の認知機能を重視する認知療法などが合流して出来た心理療法です。カウンセラーとクライエントの関係性よりも、直接的な行動や認知を修正することで心理的問題を解決しようとする療法です。

人間性心理学的(ヒューマニスティック)な心理療法

人間を心と身体が一体となった全体としてとらえ、自由意思を持った主体的な存在としてとらえる人間性心理学を基礎とした心理療法です。クライエントの個性を尊重し、クライエントが持つ潜在的な力や資源を引き出すことを重視します。

問題解決の方法を提供することよりも、クライエントとの関係性を重んじる傾向が強いです。

その他

以上の心理療法の他に、芸術的な媒体を活用するクリエイティブセラピー(音楽療法や芸術療法)や、各文化圏の特色を生かした心理療法(日本における森田療法や内観法)などがあります。

心理療法の代表的な種類一覧

数ある心理療法の中から、代表的な心理療法をご紹介します。

精神分析

神経症の治療を目的として生まれ、後に無意識を精神の根元とする精神力動的な考え方の流れを築いた心理療法です。

一般的には、無意識の中にある言葉や感情を意識かすることを目指します。感情の表出を伴い、抑圧された思いや欲望を認識し言語化させる事で治療を行います。

交流分析

交流分析は「自分の感情・思考・行動に対して自分が責任を負っており、自分が自分の人生の総責任者」であると考え、「自立性の達成」を目標としています。今ここでの自分の対応の仕方、生き方を変える事で、新しい生き方の獲得を目指します。

認知行動療法

人生で直面する様々な問題は、それ自体が問題なのではなく、それをどのように受け止めるのか、受け止め方(認知の仕方)が問題となるとする、人間の認知の仕方に焦点を当てて問題解決を目指す論理療法。

人間の行動に焦点を当て、問題行動が起きるのは間違った行動の学習の結果であり、望ましい行動を獲得するために新しい行動を学び直せば良いという行動療法が組み合わさって発展してきた心理療法です。

暴露法(エクスポージャー法)

暴露法(エクスポージャー法)は行動療法の一種で、恐怖症や不安障害の治療に持ちられる心理療法です。

クライエントが恐怖や不安を感じる対象にクライエントをさらし、それに直面した後に脅威事象(恐れている事象や周りの反応など)が起こらないことを実感させることで、恐怖や不安を取り除くことを目標としています。

来談者中心療法

来談者中心療法は、人格内の一致・統合を目指す自己実現の傾向を活用し、人が最高に実現(自己実現)された状態を目指す心理療法です。

心理療法士とクライエントの関係性重要視し、クライエントが自身の能力に気づき、成長し変化していくことを目標としています。

家族療法

家族療法は、家族を一つのシステムとして捉え、その家族システムを対象としてアプローチしていく心理療法です。

問題行動は個人の問題ではなく、その背景にある家族システムやコミュニケーションにより生じると考えます。そのため、家族全員の問題に対する問題認識・解決方法・感情を調整(家族間で共有・認識)することで、解決を目指します。

短期心理療法(ブリーフ・サイコセラピー)

短期心理療法は、当事者間で用いられている特定のコミュニケーションに焦点を当て、それを変容させることを目的とした心理療法です。問題のコミュニケーションや解決に関するコミュニケーションに介入し、解決を目指します。

自律訓練法

自律訓練法とは、自己暗示を用いて心身のリラックスを目標に用いられる心理療法です。現在多くの書籍や教材で紹介されており、世間一般で広く知られている心理療法の一つです。

日常生活に取り入れやすいため、スポーツ選手なども取り入れている人が多いですが、稀に副作用が出る場合があることは意外と知られていません。生活に取り入れる場合は正しい知識と指導者の指導の下、身につけてください。

心理療法の効果

心理療法の効果は今まで様々な研究者によって研究されてきました。効果としては、心理的問題・身体症状が改善・解消したというものから、「不安がなくなった」「モヤモヤした気持ちがスッキリした」まで、幅広い効果が確認されています。

ここで理解していただきたいことは、心理療法は万能では無いということです。薬や手術などにより怪我や病気を治癒(完治)する医療とは異なり、心理療法は心理的問題・身体的症状の解消や軽減を目的にしています。

その為、クライエントが納得した場合(問題に対する認識が変わり、問題と捉えなくなった等)、原因が取り除かれていないにも関わらず心理療法が集結する場合もあります。

このような性質のため、「心理療法は効果がない」と誤解されている場面が多々ありますが、そもそもの目的が異なることを理解する必要があります。過度な期待をしないこと、そして心理療法の目的をしっかり理解することが、心理療法を受ける上でとても大切な条件になります。

心理療法の実施例

ここからは、心理療法が実際にどのように行われているのか、各場面ごとに見ていきましょう。

教育現場

教育現場(学校や特別支援学校)で心理療法士が単独で心理療法を行うことはありませんが、教育の一環として生徒や保護者への心理教育・教員へのコンサルテーションなどで、心理療法の理論などを使って説明や体験学習を行うことがあります。

また、スクールカウンセラーとして学生や保護者に対して個別のカウンセリングを行うこともあります。このように、治療目的ではなく予防や心理教育を主な目的として活用されることが多いです。

医療現場

医療現場では医師の指導のもと、心理療法(精神療法)が行われています。主に統合失調症やうつ病・神経症などの治療の為に行われますが、心理療法単独で行われるのではなく、投薬治療などと併用して行われます。

さらに、心理療法士は患者本人や家族などへの心理的援助を担うことが多く、診断前・治療中・完治後の心のサポートにおいて心理療法は活用されることが多いです。

産業現場

産業現場では、1.病的症状に至らない為の予防。2.症状が悪化した従業員に対しての対応。3.回復後の復職支援。4.従業員に対しての教育研修などに心理療法は活用されます。

治療・相談業務以外にも、啓蒙活動として心理療法を活用し、重度の症状が確認された場合はリファー(病院などの専門機関を紹介すること)を行うこともあります。

日常生活において

上記以外にも、自律訓練法などに代表される心理療法があります。心の安定や心身をリラックスさせることを目的に活用されておます。得られる効果や正しい手順、副作用を確認して行うことで、より健康的な日常生活を送ることができます。

心理療法を学ぶ方法

現在はインターネットや書籍などで、様々な心理療法を学ぶことができます。その為、それぞれの心理療法がどのような科学的な根拠に基づいているのかをしっかり調べ、正しい知識を学ようにすることが大切です。

心理療法士の資格を取るには

現在様々な心理療法士(〇〇カウンセラー等)が存在しています。今回は代表的な心理療法士をご紹介します。

臨床心理士

臨床心理士は、公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会の試験に合格し、認定を受けることで取得できる資格です。日本において長い間、心の専門家として位置付けられてきた資格です。

臨床心理士になるためには、指定大学院を卒業するか、医者として心理臨床経験を2年以上経験するなど、臨床経験を経験したのち資格試験に合格する必要があります。

公認心理師

公認心理師とは、2017年から新しくできた心理療法士唯一の国家資格です。こちらも指定大学院を卒業するか、医者として心理臨床経験を2年以上経験するなど、臨床経験を経験したのち資格試験に合格する必要があります。

現状、臨床心理士と公認心理師の間に実務的な差はありません。今後国家資格としてそれぞれの分野においてどの様な位置付けになるのかが注目される資格です。

産業カウンセラー

産業カウンセラーとは、主に産業現場(職場)でカウンセリングを行うカウンセラーです。働く人やその家族、職場環境などに心理学的知見から援助を行う仕事です。

主にメンタルヘルスの援助、キャリア開発の援助、職場における人間関係の援助を目的に活動しており、臨床心理士・公認心理師に次いで活躍している資格です。産業カウンセラー養成講座を修了すれば受験資格が得られるため、社会人が比較的目指しやすい資格になります。

心理療法について学べる本

これから心理療法のついて学びたい人にオススメの書籍をご紹介します。

臨床にいかす心理療法(著)白井幸子

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精神力動的な心理療法を中心に紹介している書籍です。初めて心理療法を学ぶ人から現役で心理療法師として活躍している人まで幅広い立場の人に読まれています。

理論や知識だけでなく、心理療法がどのように現場で活用されているのか、またどのようなプロレスで効果が現れるのかが分かりやすく書かれている数少ない書籍です。

基礎から学ぶ心理療法(著)矢澤美香子

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初めて心理療法を学ぶ人が、基礎から代表的な技法まで幅広く学ぶことができる書籍です。それぞれの心理療法の歴史も学ぶことができるので、満遍なく学びたい人にはオススメの書籍です。

心理療法を正しく知ることは、心の健康管理に役立つ

心理療法を学ぶということは、心について学ぶということです。心についての知識があるということは、心の問題に直面したときにどのように対応(行動 ・認識)すれば良いかを前もって知っているということです。

また自分自身だけでなく、家族や友人・職場の人への声掛けにも応用することができます。この記事を読んで興味も持った心理療法がありましたら、ぜひご自身でも調べてみてください。

 参考文献
白井幸子 『臨床にいかす心理療法』(2004) 医学書院
『産業カウンセリング 産業カウンセラー養成講座テキスト Ⅰ』(2018)日本産業カウンセラー協会
大学院入試問題分析チーム編集『臨床心理士・指定大学院合格のための心理学キーワード辞典』(2008)オクムラ書店

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    • この記事を書いた人

    Tatsuhiro

    臨床心理学・産業組織心理学を学んだ後、専門学校の相談員として活動中。産業カウンセラー資格を取得後、産業領域でのカウンセリング業務を行う予定。

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