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抑圧とは?最も基本的な防衛機制の意味や具体例、性格・発達との関連を解説

人間のこころには無意識と呼ばれる領域があることは広く知られています。しかし、その無意識の内容すべてが自分にとって望ましいものとは限りません。そこでこころには無意識から意識を守るための防衛機制と呼ばれる機能が作用しているとされています。今回は抑圧という防衛を取り上げ、その意味や具体例についてご紹介していきます。

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抑圧とは

一体、抑圧とはどのような意味を持っているのでしょうか。

抑圧の読み方と定義・意味

抑圧(よくあつ)は精神分析の創始者であるフロイト,Sが提唱した無意識的なこころの働きである防衛機制の1種です。

初期のフロイトは催眠療法に注力していました。

催眠療法は当時の欧米で多くみられていたヒステリーの治療とために用いられることが多く、患者を催眠にかけるとそれまで本人に語れることのなかったトラウマティック内容がスラスラと語られ、催眠が解けると患者は語った内容を全く覚えていませんでした。

フロイトはこれを受け、人のこころには自分が知っている領域以外、つまり無意識的な領域が存在し、自分が認めがたい欲動や記憶は普段無意識の中に閉じ込められていることに気づきます。

そして、その認めがたい欲求や記憶が意識へ昇ってこないようにするこころの働きを抑圧と名付けたのです。

抑圧の具体例

抑圧の具体例としては心因性の記憶喪失が挙げられます。

映画やドラマなどで何かしらの事件に巻き込まれた精神的ショックによって事件に関する一切の記憶がなくなってしまったというのを見たことがありませんか?

そのような時、命に関わるような恐ろしい件権をしたという記憶を思い出してしまうと大きな恐怖が生起し、生活を送るのが困難となってしまいます。

そこで、抑圧によって事件に関する記憶を思い出すことが無いよう無意識の中に閉じ込めておくことで記憶喪失が起こるのです。

抑圧と抑制

抑圧とよく似ている用語の一つに抑制(よくせい)というものがあります。

例えば周囲の目が気になるので、イライラすることがあっても口に出さないという経験をされている方も多いのではないでしょうか。

しかし、この例ではイライラするという感情を感じていながら、周囲と良好な関係を築くためにイライラを意識的に表に出さないように努めているという対処しています。

このような、感情や衝動などを本人が自覚し、意識的に抑え込むことは抑制と呼ばれています。

これに対し、抑圧は意識に上ってこないよう完全に抑え込んでしまう対処法ですので、望ましくない記憶や感情、欲求は本人にまったくもって自覚されないという違いがあります。

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抑圧と他の防衛機制との関連

抑圧は最も基本的な防衛機制と述べましたが、他の多くの防衛機制は抑圧がベースとなって働いています。

というのも、抑圧は意識に望ましくない感情や欲動が昇ってくることが無いように抑え込んでおく防衛ですが、あくまで抑え込まれたものは無意識下にとどまるのみで消えてしまうわけではありません。

そのため、何かがきっかけで意識に上ってくるリスクや、ずっと抑え込んでおくことに多くのエネルギーを必要としてしまいます。

よって、抑圧によって一度無意識下に抑え込み、その後、自分が認められる形に変えて表出するという形をとります。

知性化

知性化とは、望ましくない衝動や欲動を知的なものに置き換えて表出する防衛です。

例えば、何か悪口を言われて抱いた攻撃性をそのまま表出してしまうと、人を殴ってしまうなど社会適応に支障をきたしてしまいます。

そこで、知性化によって社会的に認められる言葉に変換し、論理的に反論するという知性化を行うことによって、不適応に陥るのを防ぐことができます。

昇華

昇華は好ましくない感情や欲求を社会的に認められる形に変換することです。

例えば性的な欲求をそのまま表出するのではなく、芸術作品や小説などを作成するエネルギーに変換する、攻撃性をスポーツや仕事に取り組むエネルギーに変換することなどが挙げられます。

昇華は社会的に評価される形で、欲求を十分に充足できるという観点から非常に適応的な防衛であることが知られています。

抑圧と発達

抑圧は私たちの発達の過程においても重要な役割を果たしています。

フロイトは、リビドー(性的欲求)が集中する身体部位ごとにいくつかの発達段階に分けた心理性的発達理論と提唱しています。

その中の男根期(エディプス期)と呼ばれる段階では、エディプス・コンプレックスと呼ばれる重要な発達課題に直面します。

男根期では、異性の養育者(母親)に対して性的な欲求を抱き、同性の養育者(父親)に対して敵意を抱きます。

そして、それと同時に力が勝っている父親に勝てることがないのは明白であり、争いに負けて男性の象徴であるペニスを奪われてしまうという去勢不安を抱きます。

しかし、そのままでは母親・父親とも社会的に望ましい関係を築けません。そのため、母親に対する性的欲求と父親に対する敵意を無意識へ抑圧します。

そうすることで父親を憧れる男性のモデルとして内在化し、次の発達段階へと進むことができるとされています。

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抑圧と性格

抑圧は誰しもが行っていることとされています。

しかし、そればかりに頼ってしまう人には独特の特徴があるとされています。

抑圧にばかり頼ってしまう人は、自分が認められる範囲が非常に狭い、つまり社会的に望ましい「良い人」にこだわっています。

つまり、良い人である・人との摩擦を避けるために個性的な主張を行うような自分なりの考え・感情・欲求を抑え込んでいるのです。

そのため、一見すると人づきあいが良く、優しい人に見えますが、付き合いが長くなってみると人としての面白みに欠け、何を考えているかわからない・その人らしさが全く見えない不気味な人という印象を与えることもあります。

このような性格の人はヒステリー性格と呼ばれています。

抑圧と精神疾患

抑圧は自らを守るために、認められない記憶や欲求などを無意識に抑え込む防衛でした。

しかし、この防衛があだとなり精神疾患を発症するケースがあります。

例えば、生命に危機を感じるような場面(事故や災害、犯罪など)に巻き込まれることで、こころに重篤な傷を負い発症するPTSDと呼ばれる精神疾患があります。

PTSDには悪夢を見るなどの侵入症状、その出来事を思い出させる刺激を避ける回避症状などが特徴的で、社会適応に大きな支障をきたす疾患です。

これは、そのような危機的状況に関する記憶がよみがえることを防ぐため、無意識下へ抑圧する反面、いつまでもその記憶に向き合えなくなってしまいます。

そのため、自我が弱まった夢に抑え込めない記憶が現れたり、記憶の想起を促す刺激に直面し抑圧しきれないことを避ける回避症状が生じると説明することができます。

抑圧について学べる本

抑圧を学ぶ上でおすすめの書籍をご紹介します。

精神分析的人格理論の基礎

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日本における精神分析の大家である馬場禮子先生の本書はこれから精神分析について学びたい方へおすすめの一冊です。

難解な精神分析の用語も日常での例を交えて書かれているため、内容を理解しやすく防衛機制に関しても詳細に解説されています。

防衛機制の心理分析: 心理分析法中級シリーズ第5巻

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防錆機制の心理分析は様々な防衛機制に関する詳細な説明に加え、防衛機制に関する心理テストも添付されていることもあり、自分の防衛傾向を知ることができます。

自分の防衛の傾向を知ることで、防衛機制がより身近に感じられるかもしれません。

多くの防衛の基礎となる抑圧

抑圧は多くの防衛機制の基礎となる防衛であり、精神分析において非常に重要視されている概念です。

しかし、抑圧だけに頼りすぎてしまうと社会適応に支障をきたすことも。

これを機に様々な防衛機制について学びを深め、自分のこころの癖を見つめ直してはいかがでしょうか。

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参考文献

  • 馬場禮子(2008)『精神分析的人格理論の基礎-心理療法を始める前に』岩崎学術出版社

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    臨床心理士指定大学院に在学していました。専攻は臨床心理学で、心理検査やカウンセリング、心理学知識に関する情報発信を行っています。

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