TAT(主題統覚検査)とは?目的・特徴・実施方法と解釈を解説

2020-12-15

カウンセリングなど、心理臨床の現場で用いられる心理検査。多様な種類がありますが、それぞれの検査には特徴があり、心理療法の目的に合わせ使い分けられます。今回はTAT(主題統覚検査)を取り上げ、その特徴や活用法、TATを学ぶためにおすすめの書籍をご紹介します。

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TAT(主題統覚検査)とは

TATとは主題統覚検査と訳される心理検査です。正式名称は「Thematic Apperception Test」であり、その頭文字をとってTATと呼ばれます。この検査は1935年に「Murray,H.A.(マレー)」と「Morgan,C.D.(モーガン)」によって考案された被験者のパーソナリティを測定する検査です。

TAT(主題統覚検査)の目的

TATは被験者のパーソナリティ(性格傾向)を測定することを目的とした検査です。そもそもパーソナリティを測定する検査には様々な種類がありますが、この検査はその中でも意識の奥深い層である「無意識」を測定することに長けた投映法に該当します。つまり、被験者本人が自覚していない無意識レベルでのパーソナリティを測定する際に用いられる検査です。

無意識の層のパーソナリティを測定する投映法の検査としてはロールシャッハ・テストが有名です。しかし、日本におけるTATの大家である坪内順子さんは「ロールシャッハ・テストで把えられたものは、りょうど人格の骨組みのようなものである。TATは、人格の肉付きを知ることができる」として、TATはリアルな人格の表れ方を捉えることができる心理検査であるとしています。

TAT(主題統覚検査)の特徴

TATでは人物を含んだあらゆる状況が描かれたカードを提示し、被検者に自由なストーリーを語ってもらいます。そして、その解釈により被検者のパーソナリティを明らかにするものです。

TATで用いられるカードはどれも漠然とした光景が描かれており、人によってどのような状況に見えるかは様々です。これは被検者が知覚した内容を意味づける心の作用に、個人の内的な欲求と外的環境からの圧力とが関連しているという考えに基づいています。

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TAT(主題統覚検査)の実施方法

TATで用いられるカードは全部で31枚もあり、それぞれに独自の意味合いを持っています。しかし、そのすべてを使って検査を行っては検査者・被検者共に負担が大きく、現実的ではありません。そこで、坪内(1984)はその中から検査の目的に沿ってカードを10枚程度選択し次のような教示します。

「これからあなたに色々な人や景色の書かれた絵を見せます。この絵を見て思い浮かぶ物語を作って、私に話してください。この絵の中の人は今何を感じ、どうしているのか、この絵の前にはどんなことがあって、この絵の後にはどうなっていくのか、話の筋を付けて話してください。

だいたい5分くらいで話せる短いものでいいです。あなたの話すことを私がこの紙に書いて行きますので、書ける早さで話してください。

絵は13枚くらいあります。1枚づつ渡していきますから、1枚に1つづつお話しを話してください。」

そして、語られる物語を一字一句漏らさぬよう書き留め、検査終了後に語られた内容を分析・解釈をします。

しかし、数分に渡って語られる物語をすべて書き留めることは非常に難しく、逐語録が遅れてしまうことへの焦りは、被検者の物語を妨げたり、解釈に必要な情報が揃わないといった恐れもあるでしょう。そのため、テープレコーダーの使用が推奨される場合もあるほどTATの実施には熟練を要します。

TAT(主題統覚検査)の分析と解釈

TATの分析・解釈法は様々な立場が存在します。大別すると語られる内容を個別に読み取り、解釈を加えることで被検者のパーソナリティや生き方を理解しようとする立場と記号化や標準反応をまとめることで数量的に判断する立場の2つが挙げられます。

しかし、個別理解の方法は検査者の主観が入ってしまうという批判があります。その一方数量化する試みは未だ体系化されておらず、TATのもつ個人の生活史の中における決定的で典型的なエピソードが表されるという特徴を無視するものだという声もあります。

TAT(主題統覚検査)の活用法

TATはその実施方法や解釈が未確立で、臨床家個人の判断に依存しているというのが実状です。また、検査を実施するうえで多大な手間や労力がかかることから広く活用されている検査とは言い難いものがあります。

しかし、用いるカードが被検者から引き出す反応の多様性や語り自体に治療効果があるという考えから、ナラティヴ・ベイスド・アプローチの考えになじむため臨床の場面で用いられる可能性を指摘しているものもあります。

※ナラティヴ・ベイスド・アプローチとは、一般性や普遍性を追い求める実証主義への反証として現れたクライエントの語りから全体像を把握することを重視した立場のこと。

TAT(主題統覚検査)について学べる本

TATについて学ぶ上で重要となる書籍をご紹介します。

TATアナリシスー生きた人格診断

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TATをこれから学ぶ人におすすめの一冊です。検査の実施法から解釈まで幅広く解説がなされています。

TATパーソナリティ26事例の分析と解釈の例示

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TATの実施前において事例に目を通しておくことで、より自分が検査者となった際のイメージが湧きます。様々な事例が挙げられているため、熟練の検査者のTATの分析と解釈を参考にできるでしょう。

TAT(主題統覚検査)はケースにあわせて使いましょう

TATだけでなく、心理検査にはそれぞれの特徴による長所と短所が存在します。そのため、クライエントの見立てを行う際に必要に応じてテストバッテリー(検査を組み合わせること)を組みましょう。

被検者のリアルな性格傾向が示されるという特徴から、ケースによってはTATが糸口となりセッションが進むこともあるでしょう。そのため、被検者の負担も考慮しつつ、どのカードを提示した際の反応を見たいのかしっかりと見通しを持って検査を実施するよう心がけましょう。

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参考文献

・坪内順子(1984)『TATアナリシスー生きた人格診断』垣内出版

・栗村昭子(2006)『TAT(主題統覚検査)についての一考察』関西福祉科学大学紀要 (10), 55-62

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    臨床心理士指定大学院に在学していました。専攻は臨床心理学で、心理検査やカウンセリング、心理学知識に関する情報発信を行っています。

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