適応障害とうつ病の違いとは?混同されやすい両者の違いをわかりやすく解説

2022-03-20

ストレス社会である現代において、うつはこころの風邪と例えられることも増えてきました。しかし、そのような現代社会のストレスによって発症している抑うつ状態は適応障害であることが大半です。

それではうつ病と適応障害の違いとはいったい何なのでしょうか。混同されやすいうつ病と適応障害の違いについて詳しく解説していきます。

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適応障害とは

適応障害とは、はっきりと確認できるストレスにより、3か月以上にわたって情緒や行動面の症状が出現し、社会適応に支障をきたしているものを指します。

ストレス社会の現代において「新型うつ病」と呼ばれる疾患が世間やマスコミをにぎわせていますが、これは伝統的なうつ病と比べて「新型」であり、その中の1つに適応障害が含まれているため、うつ病と適応障害が混同されやすいのでしょう。

ありがちな適応障害のケースとしては職場のストレスによって発症するケースなどが挙げられます。

例えば、大企業に勤めているサラリーマンが部署の異動により、新しく配属先となった上司との人間関係にトラブルを抱えている、新しい部署の仕事に慣れることができず、ミスが増え、だんだんと会社のことを考えることがおっくうになってしまったなどのケースが挙げられます。

適応障害の症状は非常に多岐に渡り、次のようなものがみられます。

【適応障害の主な症状】

  • 抑うつ感
  • 不安感
  • いら立ち
  • めまい
  • 吐き気

そして、この抑うつ感を巡る、意欲の低下や気分の落ち込み、不眠などの症状はうつ病でも見られるため、適応障害はうつ病は同じような疾患のように見えるのです。

うつ病とは

うつ病は次のような症状がほぼ毎日一日中存在する精神疾患のことです。

【うつ病の症状】

  • 抑うつ気分
  • 興味や喜びの喪失
  • 食欲の減退
  • 睡眠障害
  • 精神運動制止
  • 疲れやすさ・気力の減退
  • 強い罪悪感
  • 思考力や集中力の低下
  • 自殺念慮

うつ病は古くから精神医学の分野で注目されていた疾患であり、最も病理の深い精神病と呼ばれる疾患の一つでもあります。

なお、米国精神医学会の発行するDSM-5では、うつ病の関連疾患として抑うつ症候群と呼ばれる疾患群を示しており、一般的にうつ病と呼ばれるものは、大うつ病性障害に該当します。

適応障害とうつ病の違い

それでは、適応障害とうつ病の違いとは何なのでしょうか。

原因による違い

うつ病は古くからその病理の深さにより大きな注目を集めている疾患です。しかし、現代の医学においてもその原因は何なのかはっきりと特定されていません。

このような、何らかの身体的異常を基盤として発症しているだろうが、現代の医学ではその明確な原因が不明な疾患のことを内因性疾患と呼びます。

これに対し、適応障害は元々抑うつ神経症と呼ばれる疾患の一部でした。

そして、神経症と呼ばれる疾患は無意識的な葛藤や心理社会的ストレスなど心理的な要因により発症するのです。

適応障害の診断基準にも明記されていますが、適応障害は明確なストレス因が原因となるものという点でうつ病と異なるでしょう。

【適応障害とうつ病の原因】

  • 適応障害:心因性疾患
  • うつ病:内因性疾患

障害分類の違い

現在、世界的に普及している米国精神医学会の発行する精神障害の診断と統計マニュアルであるDSMでは、基本的に外側から観察可能な症状のチェックリストを設ける、症候論を採用しています。

そして、似た症状を呈する精神障害を大分類としてまとめているのです。

このようにして精神障害を分類しているのですが、うつ病に関連する精神障害群は抑うつ症候群と呼ばれ、次のような精神障害が含まれます。

【抑うつ症候群の下位分類】

  • 重篤気分調節症
  • うつ病/大うつ病性障害
  • 持続性抑うつ障害
  • 月経前不快気分障害
  • 物質・医薬品誘発性抑うつ障害
  • 他の医学的疾患による抑うつ障害
  • 他の特定される抑うつ障害

一般的にうつ病と呼ばれる疾患はこの中のうつ病/大うつ病性障害となります。

これに対し、適応障害は心的外傷およびストレス因関連障害群と呼ばれる分類に属しています。

主な心的外傷およびストレス因関連障害群は次の通りです。

【心的外傷およびストレス因関連障害群の下位分類】

  • 反応性アタッチメント障害/反応性愛着障害
  • 心的外傷後ストレス障害
  • 急性ストレス障害
  • 適応障害
  • 他の特定される心的外傷およびストレス因関連障害

このように、DSM上でも適応障害はうつ病ではなく、ストレスに起因するPTSDやASDなどの障害に近いものであると考えられているのです。

【適応障害とうつ病の障害分類】

  • 適応障害:心的外傷およびストレス因関連障害
  • うつ病:抑うつ症候群

発症しやすい性格の違い

うつ病は古くからその発症リスクを調べるために、発症前の病前性格に注目が集まっていました。

そして、うつ病になりやすい性格傾向としてメランコリー親和型性格というものがあります。

メランコリー親和型性格とは、次のような性格のことを指しています。

【メランコリー親和型性格】

秩序への志向性が高く、几帳面という形で固着しすぎている。自分に対して過度に高い要求水準を掲げ、これが叶わない時にはその不全館を負い目として体験しやすい。具体的な人格特徴としては、几帳面、堅実、綿密、勤勉、強い責任感、誠実、律儀、世話好き、権威と序列を尊重する、気遣いなど他者配慮傾向の強さなどが挙げられる。

これらをまとめると、メランコリー親和型性格は非常にまじめで頑張り屋さんな人物像が見えてきます。

そして、そのような人がうつ病を発症すると、その真面目さから、うつ病という苦しい状態になったのは自分が悪いと非常に自罰的な態度を見せるのです。

これに対し、適応障害などの心因性の抑うつでは、わがままであったり利己的な性格傾向がみられるとされています。ストレス因となるものに対し、不満を口にするなど他罰的な傾向がみられるという点で大きく異なるのです。

そのため、このような性格傾向は発症前の適応や療養中の態度にも関連してきます。

うつ病患者は発症前の社会適応は非常によく、何らかのきっかけでいきなり発症すると生活全般に抑うつ症状が現れます

一方、適応障害では発症前の社会適応はあまり良くないことも多く、ストレス因によるものであるため、職場などストレスを感じる対象については抑うつ症状を呈しますが、休日に遊びに行くなど場面ごとに抑うつを呈するのです

【適応障害、うつ病になりやすい性格】

  • 適応障害:他罰的、わがまま、利己的
  • うつ病:自罰的、真面目、頑張り屋さん

うつ病と適応障害の違いについて学べる本

うつ病と適応障害の違いについて学べる本をまとめました。

初学者の方でも手に取りやすい入門書をまとめてみましたので、気になる本があればぜひ手に取ってみてください。

新版 適応障害のことがよくわかる本 (健康ライブラリーイラスト版)

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講談社
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適応障害とうつ病の違いを知るためには、まずは両者の疾患概念についてしっかりと学ぶ必要があります。

適応障害について、易しく解説してある本書を読んで、まずは適応障害について詳しく学びましょう。

よくわかる うつ病 診断と治療、周囲の接し方・支え方 別冊NHKきょうの健康

適応障害について学んだあとは、うつ病についてもしっかり勉強しましょう。

図解がついていて読み進めやすい本書であれば、身に着けた適応障害の知識と照らし合わせながら両者の違いを探っていきやすいはずです。

精神障害の連続性

診断を下し、それぞれの疾患にあった治療を行うために疾患概念を確立することは必要です。しかし、その一方で実際の臨床現場では、どちらの疾患であるか厳密に分けることが難しいという課題もあるのです。

そのため、現在の心理臨床の現場ではスペクトラム(連続体)という考えを採用し、精神障害を捉えなおそうという動きが強まっています。

そして、実際に適応障害を発症した人の40%は5年後に、うつ病と診断が変更されるなどの報告もあり、適応障害はうつ病の前段階なのではないかという考えも提唱されているのです。

ぜひ、今後も適応障害とうつ病の違いに関する動向を見守っていきましょう。

【参考文献】

  •  生田孝(2014)『臨床現場における「新型うつ病」について』労働安全衛生研究 7(1), 13-21
  • 豊田益弘・河合正登志・西島久雄・井上道雄・石井正宏・井上悟(1989)『気分変調性障害 (いわゆる抑うつ神経症) の臨床統計的研究』昭和医学会雑誌 49(3), 277-285
  • 大野裕(2018)『うつ病の新しい考え方』総合健診 45(2), 359-365

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    • この記事を書いた人

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    臨床心理士指定大学院に在学していました。専攻は臨床心理学で、心理検査やカウンセリング、心理学知識に関する情報発信を行っています。

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