双極性障害とは?原因や症状と治療法に加え、診断基準・再発率について

職場のメンタルヘルスなどで大きな注目を集めている精神疾患としてうつ病が挙げられますが、うつと躁を繰り返す双極性障害は精神医学の分野で古くから注目されていました。

それでは、双極性障害とは、どのような原因や症状があるのでしょうか。再発率や診断基準、治療法などについてもご紹介します。

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双極性障害とは

双極性障害とは、古くは循環病もしくは躁うつ病と呼ばれた疾患であり、DSM(アメリカ精神医学会の診断基準)では、気分の浮き沈みにより社会不適応が生じる気分障害の1つとされています。

双極性障害の歴史

うつという病状は非常に古くから注目されており、古代ギリシアのころから、人間の体液の異常が精神疾患を引き起こすと考えられ、メランコリアやマニアなどの4つの主要な体液のバランスが崩れたため、うつ病や双極性障害が発症すると考える体液学説が唱えられていました。

クレペリンの二大精神病研究

その後、19世紀には、現代の精神医学に多大な影響を与えたクレペリンという精神科医が、『精神医学教科書』において、精神疾患の中でも特に治療が困難で、予後が悪いにも関わらず、器質的な異常が見当たらない内因性精神病と呼ばれるものは次の2つであると指摘します。

【クレペリンの二大精神病研究】

  • 早発性痴呆:一度発症すると、時間を経過するごとに症状が悪化していき、最終的に痴呆(認知症)のような症状を示すため、若い状態で認知症になってしまう病気
  • 循環病:1度発症すると、気分の浮き沈みに加え、症状が良くなったり悪くなったりをある一定のサイクルで繰り返す病気

この循環病と呼ばれる病気こそが、現代での双極性障害にあたります。

このクレペリンが提唱した循環病の概念は躁状態とうつ状態が交互に出現する現在の双極性障害に加え、いわゆる(内因性)うつ病や躁状態のみを示す単一型の病態も循環病に含める「躁うつ一元論」という疾病概念でした。

その後、1960年代に躁うつ病の捉え方は、クレペリンの一元論から、躁状態とうつ状態を繰り返すものとうつのみ、躁のみという単一症状を示すものは別の疾患であると分離されます。

双極スペクトラム

こうして、独立した疾病概念を獲得した躁うつ病ですが、その後、抑うつ神経症の患者の20%には双極性の経過をたどっていることが見出され、1983年に双極スペクトラムという考えが導入されました。

【双極スペクトラム】

厳密にどの程度の症状の強さから躁病の症状が出ていると判断するのではなく、完全な躁病の症状出現から、微弱なものまでは連続体(スペクトラム)を保っているという考え方

この考えの導入により、躁状態、うつ状態が強く出ている場合に加え、うつ状態は強いが躁状態は軽微であるケースなども双極性障害としてまとめられ、1994年委は米国精神医学会によるDSM-Ⅳに採用されるに至りました。

双極性障害の種類

DSM-Ⅴでは双極性障害とその関連障害という疾患群がまとめて記載されており、次のような亜型が存在します。

【双極性障害及びその関連障害】

  • 双極Ⅰ型障害:明確な躁病エピソードと大うつ病エピソードが繰り返される
  • 双極Ⅱ型障害:軽躁病エピソードと大うつ病エピソードとが繰り返される
  • 気分循環性障害:2年以上にわたり軽躁病エピソードより軽度な軽躁状態と大うつ病エピソードより軽度なうつ状態が繰り返される
  • 物質・医薬品誘発性双極性障害及び関連障害:薬物などの影響により、双極性の症状が出ている
  • 他の医学的疾患による双極性障害及び関連障害:身体疾患の影響により双極性の症状が出ている
  • 他の特定される双極性障害及び関連障害:気分エピソードと閾値以下の症状で4つの精神疾患の診断基準が示されている
  • 特定不能の双極性障害及び関連障害:双極性障害のような病態を示すが、確定的な診断が出来ず、暫定的に双極性障害が疑われるときの診断

双極性障害の症状と診断基準

双極性障害の症状の特徴は何と言っても躁状態のエピソードとうつ状態のエピソードを交互に繰り返すことです。

その診断基準とされる症状は次の通りです。

躁病エピソード

【躁病エピソード】

  1. 気分が持続的に異常に高揚し、開放的、易怒的になる。亢進した活動や活力がある。このような期間が少なくとも1週間、ほぼ毎日続く。
  2. 以下のうち少なくとも3つ(気分が易怒性のみでは4つ)を認める。
    ①自尊心の肥大・誇大
    ②睡眠欲求の減少
    ③普通より多弁・しゃべり続けようとする切迫感
    ④観念奔逸・いくつもの考えがわいてくる
    ⑤注意散漫
    ⑥目標志向性の活動・精神運動焦燥
    ⑦まずい結果につながる活動に夢中になること
  3. 社会的・職業的機能に著しい障害を引き起こしている
  4. 何らかの物質によるものではない

軽躁エピソード

軽躁エピソード

  1. 気分が持続的に異常に高揚し、開放的、易怒的になる。亢進した活動や活力がある。このような期間が少なくとも4日間、ほぼ毎日続く。
  2. 以下のうち少なくとも3つ(気分が易怒性のみでは4つ)を認める。
    ①自尊心の肥大・誇大
    ②睡眠欲求の減少
    ③普通より多弁・しゃべり続けようとする切迫感
    ④観念奔逸・いくつもの考えがわいてくる
    ⑤注意散漫
    ⑥目標志向性の活動・精神運動焦燥
    ⑦まずい結果につながる活動に夢中になること
  3. 症状がないときとは異なり、明らかに機能的変化がある
  4. 変化が他者から観察できる
  5. 社会的・職業的に著しい障害を引き起こしたり、入院を必要とするほどではない
  6. 物質によるものではない

抑うつエピソード

 

【抑うつエピソード】

  1. 以下の症状のうち5つが2週間の間に認められ、そのうち少なくとも一つは①か②
    ①抑うつ気分
    ②興味や喜びの喪失
    ③体重の増減・食欲の異常
    ④睡眠障害
    ⑤精神運動焦燥・精神運動制止
    ⑥疲労感・気力低下
    ⑦無価値観・罪責感
    ⑧思考力低下・集中力低下
    ⑨希死念慮
  2. 苦痛が明らかか、社会的・職業的な機能障害を認める
  3. 物質によるものではなく、その他の病気によるものでもない

双極Ⅰ型と双極Ⅱ型の違い

前項で、双極性障害には双極Ⅰ型と双極Ⅱ型の二つが存在することをご紹介しましたが、この二つの違いは躁病エピソードがみられるかどうかです。

  • 双極Ⅰ型障害:躁病エピソード+抑うつエピソード
  • 双極Ⅱ型障害:軽躁エピソード+抑うつエピソード

なお、双極性障害の一番の難点は病識が薄く、早期治療に結び付きにくいことです。

躁病エピソードの場合は、患者自身がエネルギーにあふれている状態なので、本人にはかえって調子が良く元気であるとさえ感じられます。

双極Ⅱ型障害は、軽躁エピソードと双極Ⅰ型に加え、躁状態の症状が穏やかであるため、重篤度ではないと考えがちですが、それは誤りです。

激しい躁状態に陥ると、患者本人もしくは周囲の家族などが困り、異常だと気づくことができる可能性が高いため、医療機関へ早期に繋がることができる可能性も高くなります。

これに比べ、双極Ⅱ型障害は、本人もまわりもそれほど困らない程度の状態に陥ってしまうことが多く、専門機関へつながる頃には何らかの心理社会的問題を呈しているということも少なくありません。

双極Ⅱ型障害と結びつきやすい障害

さらに、双極Ⅱ型障害は様々な疾患を併発する可能性が高いということも大きな問題です。

 

双極Ⅱ型障害と結びつきやすい障害

  • 不安障害
  • 摂食障害
  • パーソナリティ障害
  • ヒステリー
  • アルコール・薬物依存
  • ADHD
  • 社会恐怖

基本的に双極性障害では、躁状態とうつ状態が交互に出現するという特徴がありますが、双極Ⅱ型障害ではうつ状態と軽躁状態が同時に生じる混合状態が起こりやすいことは非常に問題です。

うつ状態で最も危惧されるのは自殺企図ですが、うつ症状が強い際には自殺をする気力も失せています。

しかし、混合状態では、高揚している気分なのに、不安感がぬぐえないなど思考や気分、意欲などがバラバラの状態になっているため、抑うつ気分が強いのにも関わらず、衝動性は高いため、突発的に自殺を試みるなどの恐れがあるのです。

双極性障害の原因

先述したように、内因性疾患の双極性障害はその原因が特定されていません。

しかし、これまでに躁うつ病の治療のため、その原因を探ろうとした多くの取り組みがあります。

遺伝的要因

統合失調症や内因性うつのように、躁うつ病も遺伝するという報告が古くからなされてきました。

これを遺伝負因と呼びます。

双子を対象とした一卵性双生児研究では、二人とも双極性障害を発症する確率は36~60%程度なのに対し、遺伝子が同じでない二卵性双生児では7~13%と非常にリスクが低くなります。

心理査定を行うときには既往歴に加え、必ず家族歴を聞きますが、近親者に双極性障害の人がいる場合、その家族も発症するリスクはあると考えられるでしょう。

性格的要因

うつ病を勉強していると必ずと言ってもいいほど見かけるメランコリー親和型性格という用語があります。

これは、テレンバッハという精神科医が提唱した性格気質で、前項の遺伝要因にも通ずるのですが、生得的な性格である気質を元に、うつ病を発症した患者の性格傾向を分析することで提唱されました。

メランコリー親和型性格

秩序を守ることに非常に忠実で、決まり事をしっかりと守り、良心的で義務感の強いまじめな人。消極的なため、秩序が保たれているときは安定しているが、自分ではどうしようもないことが起り、秩序が崩れてしまうと破綻し、うつを発病する。

そして、メランコリー親和型性格ほどではないですが、躁うつ病(今でいう双極Ⅰ型障害)に通ずる性格傾向としてマニー親和型性格というものも提唱されています。

マニー親和型性格

自己中心的で秩序に対し両価的(秩序を守りたい一方で、破りたいという相反する気持ち)な気持ちを抱えている。権威に対し反発的で、自分自身を強く持っており、エネルギーにあふれ、熱中する傾向にある。

心理社会的要因

これは原因というよりも、発症の引き金となる誘因として捉えられますが、双極性障害患者の既往歴を聞いていくと、発症には死別やリストラ、人間関係の悪化など何らかの強いストレスを受ける状況で発症しているという見方がなされています。

また、強いストレスがかかっている際には何とか頑張れていても、重い責任などから解き放たれたときに発症する「荷降ろし」によって発症するケースなども存在します。

遺伝的な要因(気質も含む)が発症に関連していることはすでに述べましたが、遺伝子情報が全く同じであっても100%するわけではない、つまり、何らかの環境要因が発症にも関連しており、遺伝的な脆弱性が何らかのストレスにより発症するという見方のことを脆弱性-ストレスモデルと呼びます。

神経伝達物質

うつ病ではセロトニンと呼ばれる脳内の神経伝達物質の分泌異常に作用するSSRIという治療薬が有効であることが知られています。

そして、うつの病像を併せ持つ双極性障害においても、脳内の何らかの物質の分泌異常が関連していると考えられています。

しかし、うつ症状に対するSSRIなどの抗うつ薬だけでは、躁症状を抑えることができず、現在躁状態を抑える薬物の作用機序に関しても詳しくは分かっていないのです。

双極性障害の治療法

双極性障害の治療アプローチは主に薬物療法とカウンセリングなどの心理療法の2つから行われます。

薬物療法

双極性障害への薬物療法として、まず選択肢にあがるのはリチウムです。

これは、双極性障害にのみ適用される薬であり、1817年にスウェーデン沖の岩石から発見されて以降、1881年にランゲ,K.によってはじめてその治療効果が報告されました。

リチウムは躁病エピソードを抑える為に非常に優れた効力を持つことが知られていますが、問題となるのは、長期的な服用による中毒症状であり、血中濃度の管理に加え、腎臓でのリチウムを排出を阻害するような薬を併用しないようにする、きちんとした服薬管理を徹底するなどを行わなければなりません。

また、次いで選択されるのはSSRIやSNRIなどといった抗うつ薬です。

これはうつ状態の症状を落ち着かせるために用いられることが多いのですが、長期的な予防効果に関しては見込めず、うつを落ち着けることで次の躁症状が現れる躁転を促してしまう危険があるため必ずしも使うことが望ましいとは言えません。

最後に選択される可能性があるのは抗精神病薬です。

これは、統合失調症の治療薬として用いられるものであり、ドーパミンと呼ばれる神経伝達物質の分泌異常に対して作用する薬です。

第二世代の抗精神病薬は抑うつに対する作用も期待できるとされますが、単体でのうつ病層のコントロールや再発予防が難しいことが指摘されているため、リチウムに代わる選択肢とはなり得ません。

心理療法

薬物療法は、双極性障害の症状を抑え、不安定な気分を改善させることに効果を発揮します。

しかし、薬には必ず副作用が生じ、その強さには個人差があるのです。

そのため、副作用に悩み、服薬をやめてしまうことで症状が再度出現し、再発してしまうというケースや、躁状態では病識が薄くなってしまうため、治療の必要を感じず服薬をしないということが双極性障害の再発率の高さに繋がっていることが考えられます。

そのため、双極性障害の症状に関して心理教育を行ったり、日頃の心理社会的ストレスや対人関係に関して介入を行う心理療法を併用することで、より安定した状態を維持することができるでしょう。

双極性障害の再発率

双極性障害は非常に再発率が高い精神疾患として有名です。

同じ気分障害であるうつ病よりも再発率が高く、双極性障害は9割以上が再発するというデータがあるほどです。

特に再発が懸念されるのは双極Ⅰ型障害であり、「薬の服用を中止してから1年半ほどで8割も再発してしまった」という報告が示すように、双極性障害は完治という終結がありません。

クレペリンが指摘した2大精神病は、内因性の疾患です。

精神疾患には、何らかの身体器官が損傷(頭をケガするなど)することが原因の外因性疾患とストレスなど心理社会的問題が原因の心因性疾患がありますが、そのどちらでもなく、原因が特定できていないという疾患が内因性疾患です。

次項以降で詳しく触れますが、原因不明ということは、その根本を治療することができないということであり、統合失調症及び躁うつ病は完治することは非常に難しく、症状が抑えられ、生活が送れるようになる寛解状態を目指すため、再発率が非常に高いということが考えられます。

双極性障害について学べる本

双極性障害について学べる本をまとめました。

精神疾患の分類と診断の手引

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米国精神医学会が発行しているDSMは精神疾患に関しての診断基準を呈示しています。

そのため、実際に双極性障害がどのような疾患なのかを捉えるうえで必須の1冊と言えるでしょう。

双極性障害(躁うつ病)の人の気持ちを考える本 (こころライブラリーイラスト版)

自分の気分が両極端を揺れ動き、周囲の人も巻き込んでしまうことの多い双極性障害という疾患を患うとどのような思いを抱くのか想像できるでしょうか。

自分が病気であるという意識はないにも関わらず、医療機関で病気なので気を付けるようにと言われてもなかなか受け入れることができないのは想像に難くありません。

そのため、実際に双極性障害の人の気持ちを考えるためにも、本書に目を通すことをお勧めします。

内因性の気分障害

内因性の精神疾患は原因が特定されていないため、症状を抑えながら病気と付き合っていくという治療しか現代の医学では行えません。

しかし、その事実を一番つらいものと感じるのは患者本人であり、医学的なアプローチに加え、その人の抱えるこころの辛さを軽減し、寄り添うのが心理士の役割であると言えます。

そのため、しっかりと双極性障害に関する学びを深めると共に、心理士という立場で何が求められるのかを考えてみましょう。

参考文献

  • 松元圭(2017)『双極性障害研究から零れ落ちたもの : 社会学的研究へ向けての予備的考察』関西大学大学院人間科学 : 社会学・心理学研究 (86), 65-85
  • 土屋マチ・赤塚大樹(2010)『双極2型障害の鑑別診断の重要性』愛知県立大学看護学部紀要 16, 9-14
  • 井藤佳恵・粟田主一(2012)『高齢者の気分障害 (特集 老年内科医に必要な精神神経疾患の知識)』日本老年医学会雑誌 49(5), 534-540

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    • この記事を書いた人

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    臨床心理士指定大学院に在学していました。専攻は臨床心理学で、心理検査やカウンセリング、心理学知識に関する情報発信を行っています。

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