神経性過食症(過食症)とは?原因や症状と診断基準、治し方を解説

2022-02-24

摂食障害は現在の心理臨床の現場でもその死亡率の高さから最も注目を集めている精神障害の1つです。異常な食行動から極度に痩せてしまう神経性やせ症が目立っていますが、摂食障害概念を構成するもう1つの精神障害である神経性過食症(過食症)も見過ごすことはできないでしょう。

それでは神経性過食症とはいったいどのような精神障害なのでしょうか。その原因や症状と診断基準、チェックリスト、治し方について解説します。

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神経性過食症(過食症)とは

神経性過食症とは、無茶食いや気晴らし食いと呼ばれる短時間で大量の食べ物を摂取する過食行動を特徴とする摂食障害です。

しかし、そのような過食を行えば体重が増加してしまうはずですが、神経性過食症患者は体重増加に大きな怖れを抱いているケースも多く、自己誘発性嘔吐や下剤の使用、もしくは一時的な節食・絶食により体重増加を避けようとすることもあります。

神経性やせ症(拒食症)との違い

神経性やせ症(拒食症)患者の中にも、無茶食いを行い、その後下剤の使用などの行動を行う排出型というよく似た精神障害もありますが、両者の決定的な違いは体重の減少があるかどうかであり、神経性過食症の場合は重篤な体重減少を伴わないという点で異なります。

神経性過食症の死亡率

摂食障害は精神障害の中で非常に死亡率の高いものとして有名です。

神経性やせ症ほどではありませんが、神経性過食症も死亡率が高く、3.5%にまで至るという報告もあります。

なお、神経性やせ症は、痩せすぎによる衰弱や身体機能異常による合併症を引き起こし死に至るケースが多いですが、神経性過食症は正常体重であるため、自殺による死亡が最も多いとされています。

特にアルコール依存症を合併する場合は27.7%、合併しない場合では3.5%となっており、アルコール依存症の併存は危険因子として注目すべきものだと言えるでしょう。

神経性過食症の原因

神経性過食症を含む摂食障害は一つの原因によって発症するのではなく、心理的、生理的、家庭・社会・文化的要因など様々な要因が複雑に作用しあうことで発症すると考えられています。

そして、発症のリスクとなる準備因子を持っている人に対し、ダイエットやストレスなどの誘発要因が加わることによって発症するのです。

神経性過食症の準備因子としては、社会的文化的要因・環境的要因・個人的要因の3つに分類することができます。

社会文化的要因

社会文化的要因とは、神経性過食症を引き起こすような社会的な風潮のことです。

現代の雑誌モデルや芸能人など望ましいとされる外見の人の多くは痩せた体型をしています。

そして、そのような望ましいイメージは雑誌やテレビ、SNSなどのメディアによって情報が拡散され、私たちの中に良いイメージとして残ることで、社会的風潮が出来上がります。

神経性過食症は女性に多いことが知られていますが、このような社会的風潮が痩身願望を助長し、太ることへの過剰な恐怖から無茶食い後に代償行動を行うという指摘があります。

環境的要因

環境的要因の主要なものとしては家庭環境が挙げられます。

神経性過食症患者には、愛情に欠ける家庭もしくは過保護すぎる家庭などが特徴的であるということが古くから指摘されています。

特に夫婦間の問題が子どもへと転嫁されるケースも散見されており、実際にはうまくいっていない夫婦関係を子どもの病気という共通の目標によって回避しようとしたり、妻や夫への不満を子どもを通じて解消しようとする三角関係など、歪んだ家族システムは摂食障害の発症リスクとなることが知られています。

個人的要因

個人的要因は、身体的な要因や性格・行動、認知の特性など幅広い要因を含んでいます。

その中でも神経性過食症は、自己スキーマと呼ばれる自分の身体的特徴・社会低役割・性格特性や興味・スキルなど自分に関する様々な側面に関する認識に歪みがあることが指摘されています。

特に、自分が太った体型であるという肥満自己スキーマが神経性過食症の大きな特徴であり、このスキーマを神経性やせ症や健常者よりも多く有しているために、自分の良いところも悪いところも受容し、受け入れる自尊感情が低下してしまい、体型不満というネガティブな感情を経験したり、過食行動という不適切な食行動が導かれると考えられています。

そして、自尊感情の低下は症状の増悪や長期化にも関連していることが指摘されているため、神経性過食症の核となるのは自尊感情の低さと歪んだ自己スキーマであると言えるでしょう。

摂食障害に気づくためのチェックリスト

摂食障害全国支援センターの運営している「摂食障害情報ポータルサイト」では、神経性過食症を含む摂食障害に気づくためのセルフチェックリストを掲載しています。

もしかして神経性過食症かもと思われる方やそのような方が身近にいらっしゃる場合はまずこのチェックリストに目を通してみましょう。

摂食障害のチェックリスト

  • 体重・体型への関心が高い。
  • 太るのが怖い。
  • 食事の量を減らすことがある。
  • 自分でコントロールできずに、一度にたくさん食べてしまうことがある。
  • たくさん食べた後に、食べたものを吐いたり、食事を抜いたり、たくさん運動したりする。
  • やせている。
  • 周りからはやせているといわれるが自分ではそうは思わない。
  • カロリーや体重のことで頭がいっぱいになる。
  • 生理がこない、不順になった。
  • 手足が冷えやすい。

出典:摂食障害全国支援センター「摂食障害情報ポータルサイト

神経性過食症の重症度

神経性過食症はその異常な食行動の頻度によって重症度が変わります。

【神経性過食症の重症度】

軽度:不適切な代償行動のエピソードが週に平均して1~3回
中等度:不適切な代償行動のエピソードが週に平均して4~7回
重度:不適切な代償行動のエピソードが週に平均して8~13回
最重度:不適切な代償行動のエピソードが週に平均して14回以上

しかし、神経性過食症患者のうちアルコール依存症を併発しているものは死亡リスクが高まるなどの報告があるように、一概に代償行動が軽度に該当するからと言って安心はできません

他の精神障害の併発や社会機能の低下など多角的な視点から重症度に関する判断が求められるのです。

神経性過食症の治療法

認知行動療法

神経性過食症は歪んだ肥満自己スキーマと低い自尊感情が特徴的です。

そのような歪んだ自己認知に対しては、認知の歪みを修正し、行動を変容させることで気分の安定を図る認知行動療法が有効です。

特に神経性過食症は肥満に対する恐怖が根底にあるため、ただ単に過食行動を制限させるのではなく、その根底にある認知を変容させるようにアプローチすることが求められます。

家族療法

神経性過食症は家族に問題があるケースも少なくありません。

そのようなケースには、家族システムの歪みを修正しようとする家族療法が有効です。家族療法では、家族のコミュニケーションやそれぞれの家庭内役割について、家族の構成員全員が向かい合い、不適応的な家族システムの変容を目指します。

摂食障害に関する正しい知識を共有することで、家庭内で患者を支える基盤づくりになるという点でも有効でしょう。

薬物療法

場合によっては薬物療法が検討されることもあります。

特に神経性過食症に対してはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)を始めとする抗うつ薬、抗てんかん薬、非定型抗精神病薬などの有効性が指摘されていました。

SSRIの一つであるフルオキセチン(プロザック)は、唯一神経性過食症の治療において保険適用が認められている抗うつ薬です。

しかし、これらの薬物療法による過食や肥満に対する体重減少効果はそれほど顕著ではありません。

そもそも、摂食障害の病態生理が生理学的に解明されているわけではないため、薬物療法はあくまで補助的なものであり、心理療法と併用して用いられることが求められます。

神経性過食症の歴史

摂食障害は非常に古くから注目されてい来た精神障害です。

過食に関する最も古い記録は紀元前3世紀にまで遡ることができます。

過食症(Bulimia nervosa)の「Bulimia」とはギリシア語で牛のような食欲という意味の「Bulimous」という用語に由来し、猫や犬、人肉食など幅広い食行動の異常が報告されていました。

そして、それまでは胃や腸などの消化器官の不調により食行動に異常がみられると考えられていましたが、1869年になり、食行動の異常をきたす患者の捉え方が一変します。

モートンというロンドンの医師は拒食という症状が内臓の不調など生理的な問題のみならず、悲哀という心理的要因が深く関わっていると指摘し、「神経性消耗症」という疾患概念を提唱し、食行動の異常を伴う摂食障害は精神的な不調に起因するものであると考えられるようになります。

しかし、その後、約80年間は食行動の異常のうち、食事を摂ることを拒否したりすることによってどんどん痩せていってしまう拒食症を中心とした研究がなされてきました。

しかし、1950年代ごろから、過食と肥満症との関連を検討する動きが活発となり、1970年代に入ると、標準的な体重ではあるものの、拒食症患者と同様に強烈なやせ願望を抱いており、定期的な過食行動と自己誘発性嘔吐や下剤の使用などの代償行動がみられる患者群に注目が集まるようになります。

そして、1977年には野上らが過食をしては下剤や自己誘発性嘔吐を行う患者群を拒食症の一部であると指摘を行いました。

その直後1979年に、ラッセルが提唱した過食症(Bulimia nervosa)が正式に、単一の精神障害として採択され、過食症は拒食症の一部ではなく、摂食障害という障害群を構成する1つの精神障害としてその概念が確立されたのです。

神経性過食症について学べる本

神経性過食症について学べる本をまとめました。初学者の方でも手に取りやすい入門書をまとめてみましたので、気になる本があればぜひ手に取ってみてください。

神経性食思不振症と過食症

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摂食障害はその発生機序の複雑さもあり、様々な視点から研究がなされています。

生物医学的な視点、社会文化的な視点、心理学的な視点と多角的な視点から摂食障害を捉え、その治療法に関して考察している本書から神経性過食症を詳しく学びましょう。

過食症かな?とちょっと思ったら最初に読む本

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過食症は体重の減少が起こらず、隠れ食いなどをするケースもあるため、周囲から過食症だと気づかれにくいという特徴があります。

そのため、早く過食症ではないかと気づくことが何よりも大切です。

ぜひ本書から過食症かもしれないと気づくための大切なポイントについて学びましょう。

食行動をコントロールできない罪悪感

過食症は、食べてはいけないと分かっているのに、つい無茶食いをしてしまうという罪悪感から自己評価が低下し、最悪の場合は自殺なども考える非常に恐ろしい病気です。

そのため過食症の人に対して接するときに何よりも大切にしたいのは、本人が食行動をコントロールできないという苦しみに共感することでしょう。

そうして信頼関係を築くことではじめて社会適応への道を歩むことができます。

ぜひこれからも神経性過食症について詳しく学んでいきましょう。

【参考文献】

  • 奥田紗史美・岡本祐子(2005)『摂食障害に関する研究の動向と展望』広島大学大学院教育学研究科紀要. 第三部, 教育人間科学関連領域(54), 319-327
  • 鈴木(堀田)眞理(2016)『VI.摂食障害の救急治療と再栄養時のrefeeding症候群』日本内科学会雑誌 105(4), 676-682
  • 摂食障害全国支援センター「摂食障害情報ポータルサイト」https://www.edportal.jp/about/about_check.html
  • American Psychiatric Association(高橋三郎・大野裕監訳)(2014)『DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル』医学書院

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    臨床心理士指定大学院に在学していました。専攻は臨床心理学で、心理検査やカウンセリング、心理学知識に関する情報発信を行っています。

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