学習・記憶 心理学の用語

古典的条件づけとは?現代の心理療法への活用と日常生活への応用

古典的条件づけとは、パブロフによって発見された動物の反射についての概念です。一見すると複雑で、オペラント条件づけと混同してしまう人も多いのではないでしょうか。今回は具体例を交えながら、古典的条件づけについて説明し、同時に「消去」や「行動療法」といった心理学の用語についても学んでいきましょう。

「古典的条件づけ」と聞くと、一般には耳慣れないかもしれませんが、「パブロフの犬」なんて言葉をドラマや小説で耳にしたことがある人もいるのではないでしょうか。

条件づけは、一見すると複雑な概念に思えるかもしれませんが、一度理解してしまえばスムーズに覚えられる知識です。心理学領域では基礎中の基礎となる概念ですので、この機会に、一緒に勉強してみましょう。

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古典的条件づけとは

教科書や専門書で理解しようとするとなかなか難しい条件づけ理論です。この記事では、出来るだけ分かり易く、具体例を使って説明します。実際にイメージしながら読んでいただけると、理解しやすいかと思います。

古典的条件づけの定義

犬に餌をあげると唾液分泌が生じる。パブロフ(Pavlov, I. P.)は、犬に音を鳴らした後に餌を与える(これを餌と音の対提示と言います)を繰り返すと、犬は音を聞いただけで唾液を分泌することを発見しました。

この犬が「音が鳴れば餌をもらえる」と学習していった過程を「古典的条件づけ」または「レスポンデント条件づけ」と呼びます。

古典的条件づけの具体例:梅干し

「古典的条件づけ」は犬に限らず、私達も知らず知らずのうちに条件づけられています。では、具体的な例を挙げてみます。

まず、あなたの口は乾いているか、唾液が分泌して湿っているか口の中を意識してチェックしてみて下さい。どうでしたか?乾いていましたか?湿っていましたか?

では、確認した上で、以下の分を読んでみて下さい。実際にその場面を想像して、ジェスチャーをづけ加えるとより分かり易いのでオススメです。

あなたの目の前に梅干しがある。赤く熟れたこの梅干しは、見るからに酸っぱい。

あなたは、左手の親指と人差し指で、この酸っぱい梅干しをつまんで持ち上げる。そしてパクリと一口で梅干しを口に含む。

舌上で梅干しは酸っぱい汁を絞り出し、あなたの口には梅干しの酸味が広がる。

いかがでしょうか。あなたの目の前には実際には梅干しは無いかもしれません。それなのに、この文章を読んで想像しただけで、唾液分泌が促され、さっきよりも口の中は湿っているのではないでしょうか。

あなたは今までの人生で梅干しは酸っぱいものだと経験しているため、この文章を読んだだけでも、過去の学習から唾液が分泌したのです。

古典的条件づけとオペラント条件づけの違い

古典的条件づけとは「S(刺激)」と「R(反応)」の条件づけなので、S-R連合と呼ばれます。犬を例にとって考えるとSは「音」であり、Rは「唾液分泌」にあたります。

一方で、オペラント条件づけとは、「S(刺激」「O(有機体)」「R(反応)」の条件づけであり、S-O-R連合であるところに違いがあります。Oは有機体の自発的行動を指します。

つまり、犬を例にとって考えてみると、音を聞いて(刺激)お座りをする(有機体)と餌が貰える(反応)。するお、犬は餌をもらえたことが嬉しくて、それからは音を聞いたらお座りをするようになりますね。

この様に、オペラント条件づけとは、有機体(動物)のさまざまな行動を自発し、その行動がもたらした結果によって、次の行動が変化することを指します。

※オペラント条件づけについては、以下の記事で解説しています。

古典的条件づけの方法

古典的条件づけという学習過程を説明するために、派生した専門用語がいくつかありますので、主要なところだけでも理解しておきましょう。こちらも、イメージしながら読んでいただけると、理解しやすいかと思います。

刺激と反射の種類

古典的条件づけでは、刺激と反応が以下の通りにまとめられています。

無条件刺激(US)条件づけをしなくても生得的に反応を引き起こす刺激
条件刺激(CS)条件づけによって反応を引き起こすようになった刺激
無条件反応(UR)無条件刺激によって誘発された反応
条件反応(CR)条件刺激によって誘発された反応

では再度、犬を例にとって考えてみましょう。犬は初めは音を聞いただけでは「この音は何だ?」と理解できずに何も反応を生みません。

一方で、餌は音が無くとも唾液分泌という反応を生みますね。よって、餌は「無条件刺激(US)」であり、これによって起こった唾液分泌は「無条件反射(UR)」です。

ですが、音と餌の対提示を繰り返すと、犬は「あ、この音が聞こえたということは、餌が貰えるぞ」と理解でき、唾液を分泌するようになります。この時、音は「条件刺激(CS)」となり、音だけで引き起こされた唾液分泌は「条件刺激(CR)」と呼ばれるのです。

強化と消去

犬に音を聞かせてから餌をあげる。これを繰り返すと、犬は「この音が聞こえたと言うことは、餌が貰えるぞ」とドンドン覚えていきますね。

繰り返せば繰り返すほど「この音が聞こえたと言うことは絶対に餌が貰える」と確信を持てるようになります。この学習の過程を「強化」と言います。

一方で、犬が「音が聞こえたら餌が貰える」と条件づけた後に、音を聞かせて餌を与えないということを繰り返します。

すると、段々と犬は「あれ?この音を聞いても餌が貰えないんじゃないかな?」と気づきはじめ、最後には「この音が聞こえたところで、餌とは関係ないんだ」と音によって反応が生まれることはなくなります。この学習の過程を「消去」と言います。

古典的条件づけに関する心理学的研究

このような理論を思いつくために学者たちはどのような実験を行ったのでしょう。意外と教科書や専門書では書いていない実験デザインについてもご説明します。

パブロフによる実験(パブロフの犬)

ロシアの生理学者イワン・パヴロフは1927年に犬を使って消化作用の研究を行いました。実験ではまず犬に特別な機械を装着し、常に唾液の分泌量を計測できるようにします。

その後、メトロノームのカチカチという音を聞かせた後に、餌を与えるということを繰り返します。実験開始から2、3日で犬はメトロノームの音を聞いただけで唾液を分泌するようになったそうです。

ワトソンの恐怖条件づけ(アルバート坊やの実験)

1920年、心理学者のジョン・B・ワトソンと助手のロザリー・レイナーは、生後9ヵ月の子ども(アルバート坊や)を用いて、条件づけが人間にも起こるのかを実験しました。

まず、ワトソンらは、白いラットをアルバートに与えます。アルバートは最初、興味津々でラットに触れました。しかしアルバートがラットに触れた瞬間、ワトソンらはアルバートのすぐ後ろでハンマーを振りかざし、鉄の棒を叩いて大きな音を立てます。

この音にビックリしてアルバートは飛び跳ねました。そして再度アルバートがラットに触れると、また後ろでワトソンらは大きな音を立てます。

するとアルバートは音にビックリして、しくしく泣き出しました。これを5回繰り返すと、遂にアルバートはラットを見ただけで泣き出すようになりました。

こうして「ラット」と「恐怖」が条件づけられたのです。因みに、この1か月後もアルバートはラットを怖がっていたそうです。

古典的条件づけのメカニズム

「古典的条件づけってなぜ起こるのだろう?」この疑問を説明する為に、神経心理学者が脳の神経細胞から考察を行いました。少し難しい内容ですが、出来るだけ噛み砕いて説明してみようと思います。

シナプス可逆性(ヘッブの法則)による説明

カナダの神経心理学者、ドナルド・ヘッブ(Donald Olding Hebb)は1949年の著書の中で、神経細胞と神経細胞が連絡を取り合うシナプスの構造的、機能的変化が学習・記憶の神経機構であるという仮説を提唱しました。これは後にヘッブの法則(Hebb's rule)と呼ばれます。

古典的条件づけも、このヘッブの法則から説明が可能です。

犬の例をとって考えてみると、犬の音を記憶している神経細胞と餌を記憶している神経細胞が、音と餌の対提示を繰り返すことで次第に強く結びつくようになる(厳密には、シナプス間の情報伝達が増強します)ため、古典的条件づけが成り立つと考えられます。

古典的条件づけを利用した行動療法

行動療法とは、人間の行動はすべて学習の結果であるという考えに基づいています。犬が餌と音を繰り返し提示されたことで、餌と音の関係性を学習しましたが、人間のあらゆる行動がこの学習によって形成されていると考えます。

よって、行動療法では、不適応行動も、この学習を消去したり、新しく適応的な行動を学習することで解決していけるのではないかと考えます。

夜尿症

夜尿症とは、ICCS(International Children's Continence Society )によると、夜間睡眠中の尿漏れと昼間の尿漏れを言います。さらに日本夜尿症学会『夜尿症診療ガイドライン』では、「5歳以降で1ヵ月に1回以上の尿漏れが3ヵ月以上続く場合」と定義しています。

この夜尿症の治療において、行動療法ではまず、寝る前には余りジュースや水などを飲まないようにすること。さらに寝る前にトイレに行く習慣をつけさせます。

さらにそれでも夜尿が続くようでしたら、下着にセンサーを取りづけ、尿漏れを感知したら音と振動で知らせる方法を取ります。この方法はアラームシーツ法と呼ばれるものです。

不登校

不登校は、その背景として登校に対する何らかの不安や恐怖がある場合が多いです。そういった場合、行動療法では、まず不安や恐怖を感じる程度を段階的に把握します。「朝、学校に向かっている途中で不安が強くなる」「教室に入る直前はさらに不安が強くなる」などを把握します。

不安や恐怖が感じられる場面を段階的に把握することが出来ると、続いて段階の低い物から順に取り組んでいきます。

「まずは学校の近くの公園まで行ってみよう」「それが出来たら校門をくぐってみよう」この様に、不安や恐怖の低いものから順に達成し「ほらね、怖いものは何もなかったでしょ」と成功体験を積ませていきます。

こうすることで、登校に対する不安・恐怖を消去していく手続きを、階層的暴露療法と呼びます。

依存症

タバコやお酒の依存(嗜癖)は、条件づけによるものが多いです。「灰皿を見るとタバコが吸いたくなる」「ビールのCMを観ると、どうしても飲みたくなってしまう」。

この様に「灰皿」「CM」を刺激(S)として、「タバコが吸いたくなる」「お酒を飲みたくなる」という反応(R)が引き起こされている場合には、まず日常的に刺激を避けることが望まれます。

「灰皿が置いてあるあのコンビニには近づかない様にする」「ビールのCMを観ない様に、テレビを消す」この様な行動の変容を行うことも行動療法の一種です。

古典的条件づけの日常生活への応用

私達の日常生活を見渡してみると、実は「知らず知らずのうちに条件づけられていた」「これをしたら、あの人を条件づけできる」という場面が多数あります。例として、勉強・広告において古典的条件づけはどのように応用されているでしょう。

勉強

私達が勉強(条件刺激CS)を行うとき、何か嬉しいご褒美(無条件刺激US)を同時に得られる機会は非常に少ないですね。ですので、勉強することで何か嬉しい気持ちになる(条件反応CR)を得られないので、私達は勉強が嫌いになってしまいます。

では、勉強と同時に嬉しいご褒美を得られるように工夫すれば、勉強をしただけで嬉しい気持ちになるという条件づけが成り立つのではないでしょうか?

勉強を頑張ったら美味しいケーキを食べる。大人であればお酒を飲む。こうした嬉しいご褒美を勉強と一緒に得られるようにすることで、勉強が次第に好きになっていくと条件づけ理論からは考えられます。

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私達はテレビで美味しそうなご飯を食べるCMを観たり、街を歩いてて美味しそうなご飯が描かれている看板を観ただけで、唾液が分泌され、空腹を感じます。

そしてついつい、「今日の夕飯はCMで観たあれを食べよう」とスーパーに買いに行ったり、「この店は美味しそうだな。丁度お腹も減ったし」と看板のあったお店に入店するという経験もありますね。

この様に、私達の身の回りの広告にも条件づけが起こっているのです。

古典的条件づけについて学べる本

古典的条件づけについて更に深く知りたいという方に向けて、おすすめの本をご紹介します。

心理学検定 基本キーワード 改訂版

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初学者には「まずはこれ」と必読の一冊。古典的条件解けやオペラント条件づけについての説明と、さらに関連概念の説明までしてくれます。

創元ビジュアル科学シリーズ➊ パブロフの犬―実験でたどる心理学の歴史

パブロフの犬の実験や、アルバート坊やの実験など、古典的な研究は他の本や書籍ではサラッと紹介するにとどまり、実際にどんな実験手続きを行っていたのかまで紹介している本は意外と少ないです。

この本は一般向けに書かれたものであり、非常に読みやすい上、実験について詳しく書いてあります。古典的で有名な研究を知りたいという方にオススメ。

学習心理学における古典的条件づけの理論ーパヴロフから連合学習研究の最先端まで

古典的条件づけ理論や学習心理学についてしっかりと学びたい方は、ぜひこの本を読んでおきましょう。現在では学習理論研究はどのようなことが行われているのか知ることが出来ます。

古典的条件づけを理解する方法

いかがだったでしょうか。教科書で読むだけでは、無条件刺激とか条件反応とか、専門用語の繰り返しで難しく感じるかもしれませんが、実験や具体例から見てみると、スムーズに理解できたのではないでしょうか。

この記事では語りませんでしたが、条件刺激提示のタイミングで「逆行条件づけ」や「痕跡条件づけ」等、さらに複雑な概念もあります。

こういった用語も教科書で読むと、やはり複雑に感じるかもしれません。しかし、この記事で見て来た様に、具体例や実験場面をイメージながら読み進めていくと「あ、なるほど、こんな簡単なことか」と理解できるはずです。

この記事で得た知識をベースに、条件づけに興味を持った方は、古典的条件づけについて学べる本でご紹介した本からさらに学びを深めてみることをおススメします。

関連記事
オペラント条件づけとは?具体例や強化子の意味、古典的条件づけとの違いも解説

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参考文献

・心理学検定 基本キーワード 改訂版.  (2009). (編)日本心理学初学会連合会 心理学検定局. 株式会社 実務教育出版.

・創元ビジュアル科学シリーズ➊ パブロフの犬―実験でたどる心理学の歴史. (2016). (著)Adam Hart-Davis. (訳)山崎正浩. 株式会社 創元社.

・臨床心理師・指定大学院合格のための心理学キーワード辞典. (2002). (編集)大学院入試問題分析チーム.

・Pavlov,I.P. "Conditioned Reflexes: an Investigation of the Physiological Anxiety of the Cerebral Cortex," trans. G.V.Anrep(London: Oxford University Press, 1927).

・Watson, John B., and Rosalie Rayner. "Conditioned emotional reactions." Journal of Experimental Psychology 3, no.1.(1920):1.

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    • この記事を書いた人

    こっけ

    臨床心理学学科大学卒業後、臨床心理学研究科の大学院に在学。恋愛をテーマに研究。19歳で上級心理カウンセラー資格習得。20歳で心理学検定10領域全領域を合格し、心理学検定特一級を習得。

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