集合的無意識は、人類や動物全体に共通した無意識です。今回は、ユングの提唱した集合的無意識の意味や、それが生み出す元型について学んでいきます。集合的無意識に関する学会や、集合的無意識について学べる本についても、ご紹介していきます。
目次
集合的無意識とは
まずは、集合的無意識とはどのようなものなのかを見ていきましょう。
集合的無意識の意味と定義
集合的無意識は普遍的無意識(collective unconscious)とも呼ばれます。
ユングは、原因がわからない偶然の一致=共時性(シンクロニシティ)の意味を考えました。
例えば、誰かのことを考えていたちょうどその時にその人からメールが来たりというような状況です。
ユングは、このような共時性を始めとして、人の心に生じるイメージや夢を生み出す無意識には、人類全体に共通する集合的無意識が存在するのだと考えました。
個人的無意識と集合的無意識との違い
フロイトは意識と無意識の存在を主張しましたが、ユングはさらに無意識を個人的無意識と集合的無意識に分けました。
個人的無意識は、意識に忘れられたり意識が回避したりしたものです。
これに対し、集合的無意識は個人的ではなく、国や民族を越えて人類全体、さらには動物にも共通するようなものです。
例えば、太陽を崇拝したり、自然に安らぎを感じたりするような事は全人類に共通しています。
ユングは、このような集合的無意識があるからこそ、人と人とが分かり合え、繋がる事ができるのだと考えました。
集合的無意識と元型
集合的無意識の中に見られる、共通した基本的な型を、ユングは元型と呼びました。
代表的な元型2つを見ていきましょう。
ペルソナ
ペルソナは、仮面を意味し、人が人前で演出している姿です。ペルソナとその人自身が固く結びつき過ぎると、柔軟な生き方が難しくなってしまいます。
けれどもしなやかなペルソナは、社会の中でスムースに生き抜くために役立ちます。
影
影は人が認識しがたい闇の部分であると同時に、人間味を与えるものでもあります。
親が自分の影の部分を子供に投げかける事が子供の心身症の原因となるという考え方は、家族療法に大きな影響を及ぼしたと言われています。
この他にも、アニマ、アニムス、太母、老賢者などの元型があります。
ユング心理学の学会・協会
ユング心理学の学会及び協会をご紹介します。
ユング心理学の学会
ユング心理学の学会としては、日本ユング心理学会(JAJP: The Japan Association of Jungian Psychology)があります。
2012年に設立された日本ユング心理学会は、ユング心理学およびそれに基づく心理療法に関する研究、調査、普及活動等を行なっています。
ユング心理学の協会
ユング心理学の協会としては、日本ユング派分析家協会(AJAJ: Association of Jungian Analysis,Japan)があります。
日本ユング派分析家協会は、日本におけるユング派分析家の国際資格を有する方々の協会です。
日本ユング派分析家協会公認の教育訓練機関である日本ユング心理学研究所では、ユング心理学の普及やユング派分析家の養成を目的としたセミナーやスーパーヴィジョン等が行われています。
集合的無意識について学べる本
集合的無意識について学べる本をご紹介します。
解説とイラストの見開き2ページで読みやすい「図解雑学 ユング心理学」
ユング心理学の幅広いテーマを、左ページの文章と右ページのイラストという見開き2ページで解説するという形式の図解雑学シリーズです。
左ページ上に太字で記載された各テーマを見て、興味のある所を読むという使い方が出来るので便利です。
集合的無意識については、第1章「対話のためのユング心理学」及び第3章「病者との対」で取り上げられています。
他のページと合わせて読む事で、ユング心理学における集合的無意識についての理解を深める事が出来ます。
ユング心理学の全体像がつかめる入門書「マンガユング心理学入門 心のタイプ論、夢分析から宗教、錬金術まで」
集合的無意識を理解するためには、ユングの分析心理学全体の理解が役立ちます。
本書は、マンガを豊富に挿入しながら、ユング心理学の各テーマをわかりやすく説明しています。
集合的無意識については、まえがきで簡単に触れられている他、「元型とは何か?」という章で、集合的無意識と元型との関連が解説されています。
自分らしさを取り戻す
集合的無意識は普遍的なものであるが故に、自覚し辛い場合があります。あまりにもピッタリとしたペルソナを持ち続けていたり、影から逃げていたり。
集合的無意識を学ぶ事で、自分の無意識との対話が進みます。夢のメッセージも受け取る事が上手になるかもしれません。
自分の生き方がしっくりこないと感じる時、自分が気づいていない部分を認める事ができるようになると、より自分らしくしなやかに生きて行く事ができるでしょう。
参考文献
福島哲夫(2002) ユング心理学 ナツメ社
河合隼雄(1994) 河合隼雄著作集第1巻 ユング心理学入門 岩波書店
河合隼雄(1995) 昔話の深層ーユング心理学とグリム童話 講談社
マギー・ハイド 文、マイケル・マクギネス 絵(2010) マンガ ユング心理学入門 心のタイプ論、夢分析から宗教、錬金術まで 講談社
長尾剛(2017) 心のトリセツ「ユング心理学」がよくわかる本 PHP研究所