スーパービジョンとは?意義やコンサルテーションとの違い、留意点について解説

2022-06-16

心理臨床の現場ではクライエントと個室で対話をすることも多く、その部屋で起こることは基本的にその2人の間で秘密保持がなされます。

しかし、カウンセラーも万能ではなく、より良い支援を行うために抱えているケースへの指導・助言をもらうことも重要なのです。

今回はそうした指導であるスーパービジョンを取り上げて解説します。スーパービジョンにはどのような意義があるのでしょうか。注意点やコンサルテーションとの違いなども解説していきます。

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スーパービジョンとは

スーパービジョンとは、心理臨床や福祉サービスの現場に携わるカウンセラーの専門性や資質向上のために行われる指導のことを指します。

スーパービジョンは次のように定義されています。

【スーパービジョンの定義】

スーパーバイザーが、良好な人間関係のコンテキストにおいてスーパーバイジーと関わり、管理的、教育的、そして指示的機能を果たすことである。スーパーバイザーの究極の目標は、機関の方針と手順に従って、クライエントに対し量及び質ともに可能な限り最善のサービスを提供することである。

スーパーバイザーとスーパーバイジー

通常、スーパービジョンはより経験のある心理士の指導を受ける形なり、次のような立場に分かれます。

【スーパービジョンの立場】

  • スーパーバイザー:より経験があり、指導を行う立場
  • スーパーバイジー:スーパーバイザーの指導を受ける立場

スーパービジョンはカウンセリングスキルや認知スキル、自己への気づき(内省力)、専門家としての行動の4つを学ぶことのできる場です。臨床現場に出たばかりの初心者だけでなく、経験豊富なカウンセラーにとっても不可欠な学びの場であるとされています。

スーパービジョンの意義

それではスーパービジョンにはどのような意義があるのでしょうか。

様々な領域で行われているスーパービジョンですが、それらにはスーパーバイジーの養成と育成及び、クライエントへの質の高い支援を提供することに役立つという意義があります。

スーパービジョンの機能

上記の意義を達成するために、スーパービジョンには次のような機能があります。

【スーパービジョンの機能】

  • 管理的機能
  • 教育的機能
  • 支持的機能

スーパービジョンの意義としてまず挙げられるのがスーパーバイジーの養成であり、これはスーパービジョンの短期的な目標でもあります。

そのため、まずはスーパーバイジーへの教育という機能がこの短期的な目標達成に役立ちます

こうしてスキルや知識を身につけつつあるスーパーバイジーに対し、クライエントがその知識を活用できるよう管理し、困難に直面したときに受容的な態度で接し、スーパーバイジーが安心できる空間を作り出す支持することによって、スーパーバイジーはクライエントへ質の高い支援を行うことができるのです。

そのため、管理的機能や支持的機能は教育的機能をより効果的に発現させ、スーパービジョンの長期的な意義であるクライエントへの質の高い支援の提供を支える役割があるのです。

スーパービジョンを行ううえでの留意点

スーパービジョン制度はクライエントへ支援を行う場合に欠かせないものですが、それを効果的なものとするためには気を付けなければならないポイントがあります。

スーパーバイザーの模倣

スーパービジョンを受ける際に最も問題となるのが初学者です。

知識や技術が不十分な初学者はカウンセリング場面で抱える課題が多く、その解決法に関しての知識が不足しています。

このような状態で、スーパーバイザーの指導助言を受ける教育的な関わりは重要ですが、この時に初学者であるスーパーバイジーが腑に落ちた理解を持つことができるかどうかには注意を払わなければなりません。

対話によるカウンセリングでは、伝える内容だけでなく、その伝え方やタイミングも非常に重要です。

単にスーパーバイザーに言われたからその内容を真似したというだけではスーパーバイジーの資質向上にはつながらないため、スーパーバイジーがしっかりと理解できているのかを把握することが大切なのです。

率直な意見を交換し合える関係性

より経験のあるスーパーバイザーはスーパーバイジーにとって大先輩や先生という立ち位置になります。そのため、スーパーバイザーは権威的な姿に映り、そのことが率直な意見交換を妨害してしまうかもしれません。

特に、初学者のスーパーバイジーはケースがうまく進まない課題を相談しにスーパービジョンへやってきます。

そのような場面で、技量や年齢、立場の異なるスーパーバイザーからの意見を実行できる自信がないとしても、その意見に「できそうにありません」となかなか言いづらく、言ったとしても自分の実力不足に直面する辛い時間となってしまいます。

そのため、スーパーバイジーが置かれている現実的な条件において、クライエントの利益が最大となるためにどうするべきなのかを考え、初学者であるスーパーバイジーを支える私事的な態度と率直な意見を言い合える関係づくりを行うべきなのです。

スーパーバイザーの自己愛

人に認められたい、肯定されたいという自己愛的願望は誰であれ持っているものです。

しかし、初学者への教育とサポートによりクライエントへ最大の利益をもたらすことを目的としたスーパービジョンの場では適切に作用しない可能性もあるため注意が必要です。

スーパーバイザーの自己愛が強いと、「初学者には無理な介入を助言し、自らの知識や技術を自慢する」、「スーパーバイジーの依存的態度を助長し、結果的に自主的に動けない状態を作ってしまう」などの否定的な影響が想定されます。

そのため、スーパーバイザーは自らの態度が自己愛的なものになっていないかを常に振り返り、クライエントの支援に役立つ助言を行うよう気を付けなければなりません。

スーパービジョンとコンサルテーションの違い

スーパービジョンとよく似ている介入としてコンサルテーションが挙げられます。

コンサルテーションとは

コンサルテーションとは、臨床心理的地域援助の業務の1つであり、「異なった専門性や役割を持つもの同士がクライエントの問題状況について検討し、今後の援助の在り方を話し合う」ことを指します。

コンサルテーションでは、援助を行う者をコンサルタント、援助を受けるものをコンサルティと呼びます。

スーパービジョンとコンサルテーションの違い

主なスーパービジョンとコンサルテーションの違いは次の通りです。

コンサルテーションスーパービジョン
対象他分野(心理以外)の専門家クライエントに関わっているカウンセラー
目的地域のエンパワメント対象のカウンセラーの資質向上とクライエントへのより良い支援の提供
関係対等上下関係
責任コンサルティのみスーパーバイザーとスーパーバイジー

スーパービジョンとは異なり、多職種の専門家に対して心理学的アドバイスを行うコンサルテーションでは、コンサルタントとコンサルティは対等の関係にあります。

例えば、学校現場で働いているスクールカウンセラーがいる状況を考えましょう。このスクールカウンセラーの元を訪れたこどもを支援するのは何もスクールカウンセラーだけではありません。

保護者はもちろんのこと、クラスの担任の先生、保健室の先生、スクールソーシャルワーカーなど様々な人と連携して子どもの支援にあたるはずです。

そして、スクールカウンセラーは心理士という立場、役割を担っているのです。

例えば、いじめが起こっている教室の担任に対し、心理学的立場からの助言を行うことで間接的にクライエントである子どもの問題解決を図るのです。

つまり、地域の資源をうまく活用し、独力では解決できない問題の解決を援助し、他の専門家に託すという性質を持つことから、地域のエンパワメントを目的としており、教育的な側面を持つスーパービジョンとは大きく異なります。

また、スーパービジョンではクライエントに最大の利益がもたらされることが目的であり、その達成の責任はスーパーバイジー、スーパーバイザーの双方にあります。

一方、コンサルテーションではあくまで専門家同士の話し合いであり、問題を解決する責任はコンサルティにあるのです。

スーパービジョンについて学べる本

スーパービジョンについて学べる本をまとめました。

初学者の方でも手に取りやすい本を紹介していますので、気になる本があればぜひ手に取ってみて下さい。

日常場面で実践する 対人援助スーパービジョン

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スーパービジョンは対人援助職という専門性の高い現場で行われるものです。

しかし、カウンセリングと日常の対人関係に連続性があるように、スーパービジョンもケースを抱えているという特殊な場面でしか経験できないものとは限りません。

日常的な場面でスーパービジョンの実践を提案した本書を読み、より多くの場面でスーパービジョンに関する自己研鑽が出来るよう取り組みましょう。

心理援助職のためのスーパービジョン: 効果的なスーパービジョンの受け方から,良きスーパーバイザーになるまで

スーパービジョンはスーパーバイザーとスーパーバイジーというそれぞれの立場から成り立つものです。

そのため、良きスーパーバイザーにはどうなればよいのかに加え、効果的なスーパービジョンの受け方も重要となるのです。

たとえ熟練のカウンセラーであってもスーパーバイジーとして指導を受ける場面はあるため、どのどちらの立場についても本書を手に取り深く学びましょう。

有効なスーパービジョンでより良い支援を

効果的な心理的援助を行う際にスーパービジョンは欠かせません。

そして、カウンセラーとしての資質を向上させ、クライエントにより良い支援を提供することは心理士としての責任であり、それが一番よく現れるのがスーパービジョンなのです。

ぜひこれからもスーパービジョンについて詳しく学び、より良い支援を行うために何が必要なのかについて考えていきましょう。

【参考文献】

  • 畑亮輔(2022)『スーパービジョンの目的と3機能の関係性に関する仮説モデルの検討―より実質的なスーパービジョンの理解に向けて―』北星学園大学社会福祉学部北星論集 = Hokusei Review, the School of Social Welfare 59 1-16
  • 渡邉誠(2019)『初学者への臨床心理スーパービジョンに関する留意点』北海道大学大学院教育学研究臨床心理発達相談室紀要,第2号,1-5
  • 田所摂寿(2018)『初学者へのカウンセラー教育に関する研究の展望 ―日本における実証的研究に向けて―』カウンセリング研究 51 (1), 51-62

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    臨床心理士指定大学院に在学していました。専攻は臨床心理学で、心理検査やカウンセリング、心理学知識に関する情報発信を行っています。

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