自己一致とは何か?ロジャーズのカウンセリング理論について解説

2022-06-17

自己一致とは、自分自身のありのままの感情を受容している状態を表します。ロジャーズが創始したクライエント中心療法(来談者中心療法)において重要視されている概念です。

自分の中で思い描いている考えと経験が一致していない「自己不一致」の状態が不適応を生じさせると考えられているほか、カウンセラーの基本態度としてカウンセラー自身が自己一致していることが重要であると示されています。

今回は自己一致とは何か、ロジャーズのカウンセリング理論の説明を交えながら意味や具体例、自己一致のやり方などについてわかりやすく解説します。

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自己一致とは

自己一致とは、自分自身のありのままの感情を体験し、受容している状態のことを指します。

クライエント中心療法を創始したカール・ロジャーズ(Carl Rogers)によって提唱され、カウンセラーの基本態度の一つとして挙げているほか、不適応発生と治療過程においても用いられる考え方です。

※ロジャーズについての詳細はこちらの記事を参照してください。

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〇クライエント中心療法(来談者中心療法) 

ロジャーズによって創始された心理療法であり、クライエントは自らの問題を解決出来る力を持っていると考え、クライエントに指示を与えない非指示的なアプローチが特徴です。

クライエント自身の成長する力を尊重し、カウンセラーの仕事は指示や助言を与えるよりも、クライエントが安心して自らの問題に取り組める場の提供であるとして、カウンセラーの態度を重要視しています。

※クライエント中心療法(来談者中心療法)の詳細はこちらの記事を参照してください。

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カウンセラーの基本態度としての自己一致

ロジャーズはクライエントが心理的成長を遂げるために必要な条件として、「自己一致(純粋性)」「無条件の肯定的関心」「共感的理解」のカウンセラーの基本態度を挙げています。

自己一致の意味

自己一致とはクライエントに対して、カウンセラーの実感とその言葉や態度が一致していることを指します。「純粋性」とも呼ばれます。

カウンセラーの治療的な在り方を示しており、カウンセリング場面で生起する様々な感情に気付いており、自らそれを否定せず十分に受け入れている状態と自己一致と呼びます。

自己一致の意義

カウンセラーが自己一致している状態・純粋な状態であろうとすることで、クライエントもありのまま自分となって心が開かれると考えられ、自己一致は重要な基本態度として挙げられています。

例えば、カウンセラーが「クライエントの話はおかしい、受け入れられない」と内心では感じながらも、「私もそう思います」と反応するような状態は自己一致しているとは言えない状態となります。

なお、自己一致は自分の気持ちを欺かないという意味合いであり、自己の感情をすべて話す必要はないとされています。

しかし、他の2つの条件(無条件の肯定的関心や共感的理解)が妨げられるような場合においては、その感情をクライエントに打ち明けたり、スーパーヴァイザーと相談したりして解決することが必要となってきます。

その他のカウンセラーの基本態度についても整理します。

〇無条件の肯定的関心

(客観的に見れば矛盾していたとしても)クライエントの示す話の内容や感情のあり方、人生に対する価値観の全てを批判や評価など価値判断をせず、肯定的に受け入れて尊重することを指します。

〇共感的理解

クライエントが感じていることをクライエントが感じているように感じようとし、感じられたことをクライエントに丁寧に伝えること(感情の反射、理解の確認)を指します。
聞き手が相手は自分と違うという前提に立ち、その上で自分の持つ価値観や規範意識を棚上げして、相手を理解しようとすることが重要とされています。
同情(聞き手の経験則に沿って理解しようとすること)や同一視(聞き手の感情と相手の感情が同じだと思い込み、聞き手の立場から理解しようとすること)とは区別されます。

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不適応状態と治療過程における自己一致

クライエント中心療法では、クライエントが不適応状態に陥る原因を「自己概念」「経験(経験的自己)」の不一致にあると考え、治療過程において自己概念と経験を一致させることを目的としています。

自己概念とは自分の中で思い描いている考えや認知のことを指し、経験とは体験したことを判断や推論を交えずに捉えたものを指します。

適応状態と不適応状態(自己一致と自己不一致)

人間のパーソナリティを「自己概念」と「経験」が重なり合う2つの輪と捉え、適応状態とは自己概念と経験が一致している(重なっている領域が多い)状態、つまり自己一致している状態を表します。

一方で不適応状態とは、経験が否認・歪曲されるなどして自己概念の中にうまく取り込めない状態、つまり自己不一致の状態を表します。両者の重なりが少なくなるほど日常生活・社会生活に問題が生じやすいとされます。

例えば、自己概念に「Aさんが憎い」、経験として「Aさんが好ましいと思う体験」があるとき、適応的な状態だと「Aさんは憎らしいところもあるが好ましい点もある」と、どちらも受け入れている自己一致した状態となります。

しかし、Aさんが憎いという自己概念が強く、好ましいと思う体験が認められずに(自己概念と経験が重ならない)いる状態は自己不一致と言え、不適応状態に陥る要因として考えられます。

治療過程(自己一致のやり方)

クライエント中心療法の目的は、症状の消去ではなく、自己概念と経験の自己一致にあります。

自己概念と経験の不一致が大きい状態では、自分への固定観念や信念にとらわれ、たとえ有意義な経験をしても自己概念を良い方向へ変化させることが難しいと考えます。

そのため、カウンセリングなどによって自己理解を促進し、否認・歪曲されている経験への気付きを促し、そうした経験を受容することができる自己概念へと変質させることで、ありのままの自分と自己概念が一致する状態を目指します。

自己一致について学べる本

最後に自己一致について詳しく学ぶ上で参考になる書籍を紹介します。自己一致について詳しく学んでいくのであれば、ロジャーズに関する書籍を参照されることがおすすめです。

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ボリュームが多く、自己一致や受容、共感などロジャーズのカウンセリング・心理療法の理論を正しく詳細に学ぶことができます。また、理論だけでなくロジャーズの生き方や考え方に触れることで、ロジャーズの理論・思想への理解を深めることができる1冊です。

クライエント中心療法の理論がまとめられているほか、ロジャーズの生涯やクライエント中心療法の成り立ちやその後の展開についても紹介されており、全体的な流れを理解することができます。

ありのままの自分を受け入れていくこと

自己一致に向かうにためは、自分にとって良い面だけでなく、弱みや短所、受け入れ難い経験などにも目を向けることも必要となりますが、これも自分であると受け入れることで自己一致が進み、適応的な状態に向かうと考えられます。

全生活のあらゆる場面において自己一致を求めるのは難しいことであるとされていますが、ありのままの自分とあるべき姿が一致する部分が多くなるほど安定した状態でいられるとされ、自己一致を目指すことはより良く生きていくために役立つ考え方となります。

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参考文献

  • 佐治守夫 飯長喜一郎 編集(2011)『ロジャーズ クライエント中心療法 新版 --カウンセリングの核心を学ぶ』‎有斐閣
  • 諸富祥彦 著(1997)『カール・ロジャーズ入門―自分が“自分”になるということ』コスモスライブラリー
  • 下山晴彦 監修(2012)『面白いほどよくわかる!臨床心理学』西東社

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    • この記事を書いた人

    blue_horizon

    民間企業在職中に心理カウンセラーを志し、心理学を学び始める。臨床心理士指定大学院卒業後は、司法及び産業領域の心理職として稼働。公認心理師・臨床心理士。

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