ロジャーズの業績とは?クライエント中心療法やカウンセリングの三原則について解説

2022-05-12

心理療法やカウンセリングには様々な学派、技法が存在します。しかし、現在の心理臨床において流派を超えて支持されているカウンセリングの基本原則を提唱したのがカール・ロジャーズです。

それでは、クライエント中心療法やカウンセリングの三原則といったロジャーズの業績について詳しく見ていきましょう。

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カール・ロジャーズとは

カール・ランサム・ロジャーズとはアメリカ合衆国の臨床心理学者です。1902年にアメリカ合衆国イリノイ州で生まれ、1987年に心臓発作で亡くなりました。

クライエント中心療法の創始や、人間性心理学(人間の主体性や創造性を重視した心理学派)の立ち上げといった業績を残し、臨床心理学を学ぶ際には必ず出てくる重要人物です。

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ロジャーズの経歴

1902年にアメリカのイリノイ州に生まれたロジャーズ。

父親は工学博士号を取得している実業家であり、6人兄弟の4番目の子どもとして愛情を注がれ育ちます。

幼少期

ロジャーズの家庭は非常に厳格なキリスト教のプロテスタントという宗派であり、飲酒やギャンブルの禁止はもちろんのこと、炭酸飲料や興味や娯楽のための読書すら罪深いとされていました。

小学生になってからは、勉強が得意だったロジャーズは入学2日目から2年生に飛び級するほど成績が優秀でしたが、学業を重視していなかった両親に褒められることはなく、友達と遊ぶための自由な時間は持てなかったため、学校や地域で孤立していたと言われています。

12歳の時には父親がシカゴに農園を購入したため、都市部から郊外へと引っ越し、農園で手伝いをする中で、農業へ強い興味を持つようになります。

このこともあり、ロジャーズは高校を卒業した後、ウィスコンシン大学の農学部へと進学します。

大学時代

大学1年次の終わりごろには、将来牧師になることを志し、牧師になるための歴史の勉強に励みますが、それと同時に体調を崩してしまい、休学中の通信教育で心理学入門を受講しました。

これまで、神学や農学を学んできたロジャーズがはじめて心理学に触れた瞬間であり、当時のアメリカを代表する心理学者であったウィリアム・ジェームズについて学んだとされます。

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しかし、その時のロジャーズにはそれほど関心がなかったようで、大学を卒業後ユニオン神学校の大学院でキリスト教プロテスタントの神学を専攻していました。

その中で、心理学も受講していたロジャーズは、教員から他者を心理学的に援助することが職業として成立しうることを教わり、牧師としてのキャリアを積むのではなく心理学者として困っている人を支えることを夢見るようになりました。

心理学の道へ

こうして、ユニオン神学校を中退し、コロンビア大学で行動主義心理学を学ぶことで、心理学への道を進んでいきます。

コロンビア大学の学生時代にソーンダイクやアドラーなど名だたる心理学者から学んだロジャーズは児童虐待防止協会の児童研究部で働く中で、既存のカウンセリング理論で非行を繰り返す少年たちに接することの限界を感じ始めます。

この経験から、ロジャーズは独自の人間性心理学やクライエント中心療法などを開発していったのです。

ロジャーズが提唱したカウンセリングの三原則とは

ロジャーズは自身の理論を構築するうえで、カウンセリングにおいて治療者が行うべき事柄として3つの基本原則を提唱しています。

この原則は学派を超えて現在もカウンセリングを行ううえでの基本として重視されているのです。

その3つは「共感的理解」、「無条件の肯定的配慮」、「純粋性(自己一致)」です。

それではそれぞれを詳しく見ていきましょう。

共感的理解

共感的理解とは、クライエントの語りの内容から、クライエントが感じているであろう感情や思考といった内的世界をあたかも自分も感じているかのように共有し、理解することを指します。

共感的に理解したクライエントの気持ちを共有することでクライエントは安心し、自分に寄り添ってくれる治療者との信頼関係を築くことができます。

共感とよく似ている用語に同情がありますが、両者の違いについて明確に理解しておきましょう。

共感はあたかもクライエントが感じている内容を追体験するかのように理解することですが、同情は他者の不幸や苦しみに対して心配や哀れみを感じることです。

同情では相手が体験していることが理解されることはありません。あくまで自分の立場から、相手に対して心苦しく感じるものなのです。

同情し、慰めるのではなく、共感的に接してもらうことで安心感を得られることで心理療法は進められるのです。

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無条件の肯定的配慮

無条件の肯定的配慮は、クライエントが治療場面で示す様々な感情に対してもカウンセラーが真摯に受け止め、受け入れることを指します。

カウンセリングでは、常にクライエントが治療者に好意的であったり、協力的であるとは限りません。

例えば、虐待を受けたクライエントが、恐怖から怒りを見せられなかったけれど、安心できるカウンセリング場面においてカウンセラーに対し怒りを吐き出すこともあるでしょう。

また、不安の強さからなかなか治療が進まないために、いら立ちを感じることもあるかもしれません。

このように、カウンセリングではクライエントがネガティブな感情を示すことも少なくありませんが、その感情に巻き込まれてしまっては治療を行うことはできないのです。

そのため、クライエントが示す様々な感情も治療において必要なものだと受け入れ無条件の肯定的配慮が求められるのです。

純粋性(自己一致)

純粋性または自己一致とは、クライエントに対し、嘘偽りのない誠実な態度で接することを指します。

日常生活でのコミュニケーションでは、私たちは常に純粋性を保っていられるとは限りません。

例えば、職場の上司が理不尽なことを言ってきたとしても、言い返したりできず、ぐっと我慢することもあるでしょう。

しかし、ロジャーズはクライエントが社会的に望ましい仮面を脱ぎ、建設的な姿勢を示せるよう変化するためには、セラピストが意識上で気づいていることとこころの奥底で感じていることが一致したことが必要であるとしたのです。

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ロジャーズのクライエント中心療法とは

ロジャーズが心理臨床の現場で行っていた治療技法のことをクライエント中心療法と呼びます。

ロジャーズがこの理論を提唱するまでは精神分析や行動療法が心理療法の現場における主な介入法でしたが、クライエントの中にある自己実現傾向を重視したクライエント中心療法は第3学派と呼ばれ、大きな注目を集めるようになりました。

不適応に陥る原因

クライエント中心療法では、クライエントが不適応に陥る原因を自己概念と経験の不一致にあると考えています。

  • 自己概念:「自分とはどのような人間であるか」を捉えている認知であり、所謂自分の思っている自己像
  • 経験日々の日常で体験していること

自己概念と経験が一致していることは自己一致の状態とされ、適応的なのですが、両者が重なる部分が少なくなるほど社会生活に問題をきたし、悩みを抱えます。

例えば、「自分は仕事をバリバリこなすエリート」だという自己概念を持っているにもかかわらず、「単調なルーティーンの仕事ばかり」という経験をするようであれば、仕事に対しつまらない、自分の能力を無駄にしてしまっているなどの苦悩が生まれてくるでしょう。

そのため、クライエント中心療法はカウンセラーとのやり取りの中で自己理解を促進し、認められない自己を受容できるようサポートしていくことで自己一致の状態を目指していくのです。

クライエント中心療法の進め方

クライエント中心療法は非指示的心理療法と呼ばれることもあるように、クライエント主体となって行われます。どのように進めていくかというガイドラインを示していくことが、カウンセラーに求められているのです。

そこで重要となるのが場面構成です。

場面構成とは面接がどのようなものであるか、どのように進めていけばよいのかをクライエントが理解し、受け入れられるよう説明していくことです。

【場面構成】

  • 面接の主導権はクライエントにあり自由に振舞ってよいが、「暴力」を面接室内で振るってはいけない
  • カウンセラーと力を合わせて取り組めば必ず解決が発見される
  • カウンセラーと対話する時間は「許された時間」に限られる
  • クライエントを元気づけて自由に振る舞える雰囲気づくり

一番下のクライエントを元気づけるような雰囲気づくりでは、雑談からラポールを高める「中立的応答」や黙っているクライエントの様子から気持ちを推測し、代わりに言語化する「反射」、初期は消極的なクライエントに対し、カウンセラーが主導権を握り、徐々にクライエントへ主導権を移していくことなどが挙げられます。

このような基礎の元クライエントとの対話を行うのですが、ロジャーズは自身の面接記録を分析し、クライエントとの有効な関わり方として次の事項を挙げています。

【クライエントとの接し方】

  • 受容:「なるほど」、「はい」など相手の発言を受け入れることで許容的な雰囲気づくりをする
  • 繰り返し:相手の言葉をそのまま繰り返すことで、話の続きを促したり、自問自答を促進する
  • 沈黙:相手が話し出すまで待つことで、相手のペースを尊重する(拒否的、防衛的な沈黙の場合は「もう話すことが無くなりましたか」など推測した相手の気持ちを言葉にする)
  • 要約:「要するに~」などと相手の話をまとめなおし、返すことで自己理解を促進する
  • 明確化:「○○のような気持だったのですね」のように、相手が言葉にはしていないものの気づいているような感情を言語化して返す
  • 質問:「もう少し詳しく教えて下さい」のように、質問により相手の話を引き出す
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ロジャーズについて学べる本

ロジャーズについて本をまとめました。

初学者の方でも手に取りやすい入門書をまとめてみましたので、気になる本があればぜひ手に取ってみて下さい。

ロジャーズ クライエント中心療法 新版 --カウンセリングの核心を学ぶ

クライエント中心療法を学びたい方にまず手に取ってほしい1冊です。

ロジャーズの死後30年以上が経過していますが、今になって分かったロジャーズの人間像やクライエント中心療法の最新の動向がまとめられている入門書です。

ロジャーズのカウンセリング(個人セラピー)の実際

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クライエント中心療法に関しての要点をまとめた本は多いですが、それだけでは実際のセラピーがどのように行われるのかを理解することは難しいでしょう。

ロジャーズの面接のビデオ記録を文字起こしした本書であれば、実際のクライエント中心療法の面接がどのように行われるものなのかイメージを掴むことが出来るでしょう。

クライエント主導の心理療法

ロジャーズが人間性心理学を提唱するまで、心理臨床の現場では精神分析や行動療法が主流でした。

このどちらも、治療者がクライエント抱える問題を分析したり、矯正したりするカウンセラー主導の治療スタイルでした。

そのため、クライエントの主体性を尊重したクライエント中心療法の提唱は画期的なものであり、現在ではカウンセリングの基本原則としてその多くが学派を超えて取り入れられているのです。

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【参考文献】

  •  金原俊輔(2013)『カール・ロジャーズの生涯』長崎ウエスレヤン大学地域総合研究所紀要,11(1),20-52
  • 小林孝雄(2018)『ロジャーズ理論の変遷と共感的理解の展開』生活科学研究40 43-53
  • 小林孝雄(2013)『ロジャーズによる「共感的理解」の記述の検討 : 「知覚」から「感じる」,「内的照合枠」から「私的な世界」へ』臨床相談研究所紀要18 29-37,

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    臨床心理士指定大学院に在学していました。専攻は臨床心理学で、心理検査やカウンセリング、心理学知識に関する情報発信を行っています。

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