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セルフモニタリングとは?具体例・効果と共に自分の心を見つめなおす方法を解説

何か生産的な思考をしようとしたり、悩み事があるときに誰か話相手がいると考えがまとまりやすかったりするのではないでしょうか。誰かに話すことができない状況でも、自分のこころを見える化することで問題は軽減させることができます。今回は、自分のこころを客観的に見つめなおすセルフモニタリングをご紹介します。

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セルフモニタリングとは

セルフモニタリングとはいったいどのようなものなのでしょうか。まずは、セルフモニタリングの意や定義、具体例を解説します。

セルフモニタリングの意味と定義

セルフモニタリングを提唱した心理学者スナイダー,M.は、それぞれの状況における手がかりを察知する感受性には個人差があるとして、セルフモニタリングを次のように定義しました。

セルフモニタリングとは、周囲の状況や他者の行動に基づいて自身の行動や自己呈示(こう見られたいという意図に合うよう振舞うこと)が社会的に適切であるかを観察し、自身の行動をコントロールすること

つまり、周囲の情報を敏感に察知しながら、自己の行動を振り返り、望ましい行動をとれるよう修正することです。

セルフモニタリングの具体例

例えば、アルバイトの面接をうけるという場面があるとします。

中には面接が苦手で緊張してしまう人もいるかと思いますが、やはり採用してもらうためには一緒に働くうえで明るさや礼儀正しさなどが重視されることが多いでしょう。

もし、面接の最初の挨拶が緊張して小さな声になってしまったとします。そのような行動は明るく、礼儀正しい人物だという印象を与えません。

そこで、小さな声であいさつをしてしまい、その後の会話が弾まないことを察知することで、自分がいま緊張していることに気付き、明るい人物として見られるために「大きな声でハキハキとしゃべるように気を付けよう」と自分の行動をより望ましい方向へ修正するのです。

セルフモニタリング能力の高い人と低い人の違い

セルフモニタリングは、感受性という能力であり、個人差があります。

そこで岩淵ら(1982)は個人のセルフモニタリングにおける個人差を測定するために「セルフ・モニタリング尺度」の分析を行い、セルフモニタリングにはそのような要素が含まれているのかを検討しています。

因子分析の結果、セルフ・モニタリング尺度は次の3因子の構造であると結論付けています。

外向性外的・社会的な事柄への関心が強く、社交的
他者志向性他者や状況にあわせて適切な自分の気持ちを抑え、配慮する
演技性演技して他者を喜ばせたり、人前で流ちょうに話せる

このことを踏まえるとセルフモニタリング能力の高い人というのは、「状況にあわせて適切な言動を行う器用な人」であり、逆にセルフモニタリング能力の低い人というのは「自分に対して正直で、不器用な人」ということができるでしょう。

認知行動療法におけるセルフモニタリング

セルフモニタリングは認知行動療法(CBT)にも取り入れられています。

認知行動療法とは、モノの見方・捉え方である認知に焦点を当て、歪んだ認知の変容から、感情・行動の変容を目指す心理療法の1つです。

宮下(1986)は「修正したい自身の行動に目を向け、観察し適切な修正を行う」セルフコントロールを行うためには自己観察(セルフモニタリング)が重要となることを指摘しています。

セルフモニタリングの方法

セルフモニタリングを行うためには次の5つの視点が重要となります。

無理のない範囲で皆さんも、日常生活上であったことを思い浮かべ、5つの視点から整理してみましょう。

  1. その時の状況
  2. その時の思考
  3. その時の気分
  4. その時の身体的反応
  5. その時の行動(とれなかった行動含む)

このとき、この5つの視点にできるだけ具体的かつ網羅的に書くようにしましょう。

また、心的な反応である思考と気分を混同しがちですので気を付けて整理しましょう。

1つ例を挙げます。

例:Aさん(男性24歳会社員)

新卒で就社した会社に2年勤めていたAさん。任される業務量も増え、忙しい日々を送っていました。しかし、最近些細なミスで上司から注意をされることが増え、「自分はこの仕事に向いていない、この会社には居場所がない」という考えが頭に浮かぶようになりました。上司と顔を合わせるのが怖くなり、ミスを起こさないためにどうすればよいか相談することもできません。次第に、会社に行こうとすると憂鬱な気分、頭痛と吐き気がするようになりました。

【その時の状況】

〇〇年○○月○○日、上司の××さんに提出書類の不備を指摘され、同じミスを繰り返し起こしていることを厳しく叱責された。

【その時の思考】

自分はなんてダメなんだろう。自分はこの会社で一番仕事ができないダメ社員だ。

仕事は任せっきりの癖に上から目線で怒ってきて腹が立つ。

早く一人前になるためにも自分の力でミスせず仕事のクオリティを上げて、上司を見返したい。

【その時の気分】

苛立たしい・ゆううつ・悲しい

【その時の身体反応】

動悸・発汗・疲労感

【その時の行動】

すみませんと謝った。

改善点をきかず、同期にも相談しなかった。

このようなストレス状況では、上司にミスを指摘される【状況】で、上から目線で指摘されることに腹が立つと【考える】と、苛立たしい【気分】になり、動悸や発汗などの【身体症状】が出ますが、周囲に相談をするという【行動】をとらないため、同じミスを繰り返し「自分はなんてダメなんだろう」という考えが頭に浮かんできて…という悪循環に陥っていることに気付くことができます。

この中で、自分は変えられるものはないのかを探すことができれば悪循環から抜け出すことができるでしょう。

セルフモニタリングの効果

セルフモニタリングは適切なセルフコントロールの鍵となります。

そのため、セルフモニタリングを行うことは認知の歪みに気付き、適切な対処行動を導くことで生活習慣の改善を行うことができるとされています。

セルフモニタリングに関する心理学的研究

セルフモニタリングに関する心理学研究を2つご紹介します。

男子大学生のセルフモニタリングと被服行動の関連

高岡ら(2013)はセルフモニタリングが非言語的なコミュニケーション法である被服行動(ファッション)の自己表現と関連するかどうかを検討しています。

その結果、セルフモニタリング能力の高い人は流行や好感度を意識した被服行動をとることが示されています。

セルフモニタリングは状況にあわせ、自身を客観的に見つめなおすことなので、男子大学生が周囲から好印象を持たれるため自分に似合う服装に気を遣うという結果はセルフモニタリングの構成概念にマッチしているといえます。

チックに対するセルフモニタリング法による介入

セルフモニタリングは治療的介入として多くの症例に用いられています。有効性が見出されているものとしては、喫煙や爪噛み、接触障害、トゥレット症候群などです。

宮下(1986)はセルフモニタリングをチック様の不適応行動を示す男児に適用しました。

道路のマンホールのふたを強迫的に踏もうとする、臭いをかぐように手で何度も鼻を触るという行動により、学校への遅刻など不適応に陥っていたクライエントですが、セルフモニタリングを開始して1か月以内強迫行為やチック様行動が消失したとされています。

また、1か月ほどで標的の不適応行動が消失した後のフォローアップ期間(2ヵ月)でも異常行動は完全に消失したとされています。

セルフモニタリングが臨床場面でも有効な技法であること、再発防止が期待できることがこの症例報告から読み取れます。

日常場面でのセルフモニタリングの活用

セルフモニタリングは日常場面でも実施できます。具体的な活用例をまとめました。

勉強

受験勉強や資格のための勉強は一夜漬けで何とかなるというものではありません。そのため、きちんとした習慣づけと自己管理(セルフコントロール)が必要になります。

先にもご説明したようにセルフコントロールの鍵となるのがセルフモニタリングです。

例えば、勉強が3日坊主になってしまうという状況で、どのような考え、気分が表れ、身体反応や行動が起こるのかを書き出してみることで悪循環を断ち切るためのポイントが見えてくるかもしれません。

ダイエット

きちんとした生活習慣の行動変容の獲得・定着に有効とされるセルフモニタリングは肥満への介入法としても用いられています。

野崎ら(2014)は肥満への介入として、食事の記録をつけることで過剰な摂取カロリーをあぶり出し、不適切な食生活をしていたことへの自覚を促す方法を採用しています。

【食事記録】

  1. 食事ごとに線を引き、区切りを入れることで一日の食事回数を明確化する
  2. 野菜を緑、菓子類をピンクなど色分けをして記録する
  3. 食事ごとに摂取カロリーを記録する
  4. 一日の総カロリー、野菜・菓子類の摂取量を計算し、週ごとに平均を算出する

【身体活動の記録】

  1. 新たに運動を始めるのではなく、日常場面での身体活動を高める
  2. 万歩計などを利用し日々の運動を記録する
  3. 体重の記録は週に1度にしグラフ化する(体重測定の頻度が高いと効果を実感できず、長続きしないことがある)

このように、日々の食生活、運動を可視化することによって、モチベーションを維持すると共に改善点をあぶり出し、無理のないダイエットを継続できるよう促す効果があるとされます。

セルフモニタリングについて学べる本

セルフモニタリングについて学ぶことのできる書籍をまとめました。

カメレオン人間の性格 セルフモニタリングの心理学

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セルフモニタリングにフォーカスをあてたこの書籍は、セルフモニタリングの理論的背景から、応用方法までを幅広く取り上げている良書です。心理学を先駆されていない方でも手に取りやすいというのもメリットでしょう。

今日から使える認知行動療法

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セルフモニタリングは認知行動療法に応用されていることもあり、認知行動療法を優しく解説している書籍に触れることは有益です。ワークブックもついているため、自分の考え癖を見つめなおすこともできるでしょう。

自分のこころを見つめなおしてより良い生活を

セルフモニタリングは認知行動療法に応用されているような専門領域だけではなく、日常生活における生活習慣の改善などにも応用ができる技法です。

今回ご紹介したポイントを参考にしつつ、セルフモニタリングについて書かれた書籍で学びを深めることで生活の悩みや生活習慣が改善するでしょう。

参考文献

  • 岩淵千明・田中国夫・中里浩明(1982)『セルフ・モニタリング尺度に関する研究』心理学研究 53(1), 54-57
  • 高岡明子・高橋美登梨・蒲池香津代・赤根由利子(2013)『男子学生の被服行動と生活意識および自己呈示との関連』日本家政学会誌 64(5), 253-262
  • 宮下昭子(1986)『チックに対するセルフモニタリング法の利用』行動療法研究 11(2), 127-134
  • 木村穣(2011)『肥満,糖尿病を有する患者のための認知行動療法』総合病院精神医学23(4), 348-354
  • 野崎剛弘・澤本良子・須藤信行(2014)『肥満の認知行動療法 : ライフスタイル改善のための心身医学的アプローチ』福岡医学雑誌105(7), 139-147

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    臨床心理士指定大学院に在学していました。専攻は臨床心理学で、心理検査やカウンセリング、心理学知識に関する情報発信を行っています。

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