コンサルテーションとは?その意味やカウンセリング・スーパービジョンとの違いを解説

2021-03-12

心理臨床における心理士の支援の形にはいくつかの種類があります。代表的なものであるカウンセリング以外にもコンサルテーションと呼ばれる介入法があることをご存じでしょうか。今回はコンサルテーションとはどのような意味を持っているのか、カウンセリングやスーパービジョンとの違いについても解説します。

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コンサルテーションとは

臨床心理士はこころの問題に取り組む4大業務に沿って活動しています。

【臨床心理士の4大業務】

  • 臨床心理査定
  • 臨床心理面接
  • 臨床心理的地域援助
  • 調査・研究活動

そして、この3つ目の臨床心理的地域援助活動の1つとしてコンサルテーションと呼ばれる業務が挙げられます。

なお、臨床心理的地域援助とは、クライエントの周囲の環境に働きかけることによってクライエントの過ごしやすい環境づくりを行うことです。

これは、社会再適応や重症化防止、不適応の予防などの効果を目的として行われます。

コンサルテーションの意味

コンサルテーションとは、援助を必要としている人に対し、直接的に介入している他の領域の専門家を心理臨床家が支援する活動のことを指します。

例えば、学校現場などで活躍しているスクールカウンセラーが、問題を抱えている児童に直接対応している担任の教師に対し、励ましやアドバイスなどをした場合はコンサルテーションに該当するでしょう。

そのため、心理臨床家は悩みを抱えた人に対し、間接的な支援を行うことが大きな特徴であると言えるでしょう。

なお、コンサルテーションを行う人のことをコンサルタント、コンサルテーションを受ける人のことをコンサルティと呼びます。(上記の例だと、スクールカウンセラーがコンサルタント、担任教師がコンサルティに該当します)

間接的な支援を行う目的

コンサルテーションはコミュニティを構成する人々の問題解決能力を高めること、つまりエンパワメントを大きな目的としています。

もちろんケースの深刻度によってカウンセリングやリファー(他の適切な専門機関を紹介し、つなぐこと)などの支援を行わなければいけない場合もありますが、心理士の人数は限られており、対応できるケースの数には限界があります。

そのため、こころの問題を早期に発見し、重篤化する前に介入できる人材と協力し、自分たちで支え合い、問題を解決していけるコミュニティの構築がより望ましいと言えるでしょう。

そこで、心理士が過度に介入するのではなく、普段から困難を抱えている人により近い立場の人に対し、間接的な支援を行うのです。

カウンセリング・スーパービジョンとの違い

よく混同されがちな支援としてカウンセリングとスーパービジョンの2つが挙げられます。

これらとコンサルテーションとはいったいどのような違いがあるのでしょうか。

カウンセリングとの違い

カウンセリングは、来談したクライエントに対して、通常面接室において、1対1の対話を通じてクライエントの抱えている悩みに耳を傾け、社会不適応を改善しようと行われるものを指します。

そのため、カウンセリングは臨床心理士の業務のうち、臨床心理的地域援助ではなく、臨床心理面接に該当します。

コンサルテーションとの決定的な違いは直接的であるということです。

また、カウンセリングは具体的な問題解決を行うためのアドバイスをするのではなく、クライエントの語りに耳を傾けることで苦悩を軽減すると共に、クライエントの成長や歪んだ性格の変容を促すものです。

そのため、問題解決に焦点をあて、具体的な解決法をアドバイスするコンサルテーションよりも長期化することが前提となっている場合が多いようです。

スーパービジョンとの違い

スーパービジョンとは、心理臨床家がより経験のある心理臨床家に指導を受けることで、クライエントに対する援助の質を向上させるものを指します。

なお、指導を行う側はスーパーバイザー、指導を受ける側はスーパーバイジーと呼ばれます。

スーパービジョンでは指導により、スーパーバイジーの知識・能力の向上によりカウンセリングの質を良くし、間接的にクライエントを援助するという点でコンサルテーションと似ていますが、援助(指導)を受ける側は心理臨床家であり、他の領域の専門家ではないという違いがあります。

そのため、より経験のあるスーパーバイザーはスーパーバイジーの先輩にあたり、上下関係にあるともいえますが、コンサルテーションではコンサルタントとコンサルティの関係は対等であるという点も大きな違いだと言えるでしょう。

コンサルテーションの事例

コンサルテーションが重視されている代表的な現場の一つとして学校教育現場が挙げられます。

学校において問題視されている現象の一つとして、クラスの子ども達の多くが教師に対して反抗的な態度をとり、授業など円滑な学級運営が出来なくなってしまう「学級崩壊」が挙げられます。

一時期、学級崩壊の原因としては「キレやすい子ども」や教師の指導力不足、家庭での教育不足などが指摘されたこともありましたが、このような問題を訴えたところで学級崩壊の減少を解決することは難しいでしょう。

学級崩壊への介入方法

浦野(2010) は、子どもと教師の関係性の中で起こるコミュニケーションのずれや食い違いにより、学級崩壊が生じる場合があるということに注目しました。

例えば、教師が厳しく指導をすることに対し、「怒ってばかりの嫌な人で腹が立つ」という評価をする場合もあれば、「自分たちを思って厳しく指導してくれている」と思うこともあります。前者は教師に対して反抗的な態度をもたらしますが、後者であれば教師に対して信頼を寄せるようになるでしょう。

人間関係はお互いが影響を与え合うものであるため、子どもに対する教師の評価・捉え方は、子どもからの評価に影響を受ける、そして影響を与えると考えられます。

そのため、両者の思い・認知を浮き彫りにし、解決策を見出すためにコンサルテーションを実施しました。

実際の介入事例

事例の概要は次の通りです。

6年C組児童数31名。

5年生の1学期から担任の教師(当時は30代女性)との関係が悪化し、教師への反抗や暴言・暴力が激しくなり授業の実施が困難に。

校長・教頭による介入はあったものの、関係を立て直すことが出来ず、6年次には新たな教師が担任になったものの、新任の図工の教師(20代後半女性)に対する反抗は収まらず、授業中に私語・エスケープする、暴言や暴力がみられるなど荒れた状態だった。

反抗的な態度をとる中心メンバーは5~6名の男子で、その子たちに多くの男子が同調する状態。

このクラスに対し、まずは子どもと教師それぞれがお互いをどのようにとらえているのかについて調査を行いました。

その結果、子ども達は、教師は要求的な態度が強く、受容的な態度が弱いとバランスの悪い認知をしていたことが明らかになりました。(ここで重要なのはあくまでバランスであり、要求的な態度をとってはいけないということではありません)

一方、教師は子ども達を受け持った初期から、「自分(教師)と子どもとの関係が良いか・悪いか」という視点を重視して子ども達を見ていたことがわかりました。関係が良くない子ども達に対しては否定的な評価をし、要求的な態度をとって従わせようとしたため、さらに関係が悪化するという悪循環に陥っていたことが推察されます。

そこで、教師に対して「図工の教科が持つ良さを子ども達に伝えていくという視点で、子ども達を見ていくこと」を指導し、また、学校心理士は子ども達が受講の良さに気付けるよう補助に入るチームティーチングの体制で支援を行うことにしました。

チームティーチングは、子どもをほめることなどによってやる気を引き出し授業に専念させると共に、教師の負担を減らすことで教師と子どもの関係性の悪化を食い止める効果が見込めます。

8月に介入を開始してから翌年1月までの間に、授業内での暴言などの荒れは見られないようになり、教師と子どもの関係性は改善されていきました。

コンサルテーションについて学べる本

コンサルテーションについて学べる本をまとめました。

心理職による地域コンサルテーションとアウトリーチの実践: コミュニティと共に生きる

心理士は何も面接室の中でカウンセリングや心理検査を行うだけが業務内容ではありません。

時には問題が起こっている現場に赴き、自身の専門性を発揮して、地域コミュニティの持つニーズに合わせた支援を展開する必要があります。

そのような地域の心理ニーズや心理職に期待されている役割を紹介し、そこで必要とされる基本的な知識を得られる本書はぜひ初学者に手に取って頂きたい一冊です。

学校が求めるスクールカウンセラー──アセスメントとコンサルテーションを中心に

コンサルテーションは特に他の職種に囲まれる場面で効果を発揮し、学校現場でも重宝されています。

スクールカウンセラーに求められるアセスメントとコンサルテーションについて詳しく学べる本書からは、スクールカウンセラーとして働く心理士のイメージが湧くことでしょう。

支援者支援の重要性

心理士が他の専門家と協働してクライエントを支えることで地域コミュニティの問題解決能力が向上し、予防も含めた高い効果が見込めます。

しかし、他の専門家に対し、心理職の専門用語を多用するなど、お互いを尊重し合えなければ円滑な協働は難しいでしょう。

そのため、立場や持っている知識・技術がそれぞれ異なることをしっかりと念頭に置きながら、共通の目的を達成できるよう協力関係を築くよう心掛ける必要があります。

参考文献

  • 浦野裕司(2001)『学級の荒れへの支援の在り方に関する事例研究--TTによる指導体制とコンサルテーションによる教師と子どものこじれた関係の改善』教育心理学研究 49(1), 112-122

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    • この記事を書いた人

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    臨床心理士指定大学院に在学していました。専攻は臨床心理学で、心理検査やカウンセリング、心理学知識に関する情報発信を行っています。

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