心理学を学ぶ

教育心理学とは?具体的な学習内容や研究方法について詳しく解説

教育を受ける児童も教授する教師も、その過程でさまざまな困難に直面します。教育心理学とは、そうした教育にまつわる諸問題を心理学的な側面から解明していこうという学問です。今回は教育心理学で何を学び、どんな役に立つのかを紹介します。また、その研究方法や関連する職業、学会、学べる大学などをご紹介していきます。

このサイトは心理学の知識をより多くの人に伝え、
日常に役立てていただくことを目指して運営しています。

Twitterでは更新情報などをお伝えしていますので、ぜひフォローしてご覧ください。
→Twitterのフォローはこちら 

教育心理学とは

まず初めに、教育心理学とは一体どんな学問なのかご紹介します。

教育心理学では何を学ぶのか

書籍では教育心理学を以下のように説明しています。

教育心理学は、教育のさまざまな場面で起こる出来事を心理学的なアプローチで解明しようとする学問である

引用:ヒューマンサービスに関わる人のための教育心理学

もう少し簡単な言葉にすると「教育心理学とは、心理学を用いて教育をより良いものにするための学問である」と言い換えることが出来ます。

教育心理学における「教育」とは、一般的な学校教育のことだけではありません。例えば家庭や社会など、学校を取り巻くあらゆる環境で行われる訓練や学習のことを指しています。こうした教育に伴う諸問題を、心理学を用いて明らかにしていくことが教育心理学の目的です。

また「教育」と「児童生徒の発達」の関係性も、非常に重要な研究対象となっています。私たち人間は教育の影響を強く受けながら成長するため、発達と教育には深い関わりがあると考えられているのです。

では、もう少し具体的に学習内容について見ていきましょう。以下に教育心理学の主要な研究分野を4つに分けて解説していきます。

発達

心理学を用いて子供たちの発達過程のサポートを行う分野です。この「発達」には、身体的な発達、知能の発達、社会性の発達、人格の形成など、その他多くの意味合いが含まれています。

教育心理学の対象は、主に乳幼児期から青年期に至るまでとされおり、この間の問題点を解明するためにさまざまな研究が行われています。

学習

学習とは、児童生徒が効率的かつ意欲的に学習が行えるよう問題解決に取り組む分野です。例えば、知識獲得の仕組み、理解・推論の過程などの研究が行われています。教師が適切な指導法を学ぶことも、教育の質を上げる大切なポイントです。

ここでの「学習」は、先述した広義の「教育」と大差ありません。非常に広い範囲が研究対象となっています。

臨床

環境になかなか馴染めなかったり、人間関係や自身の性格などに悩みを持つ児童のサポートを行います。発達について学び、カウンセリングの知識も深めていきます。

測定・評価

教育上の問題を解き明かし改善に導くためには、充分な根拠が必要です。そのため教育心理学では、あらゆる研究方法を用いてデータを取り、分析をすることが重要となります。

また教育においては、個々の評価も慎重に行わなくてはなりません。適切な評価方法や評価の意義を学んでいきましょう。

教育心理学の歴史

教育心理学には長い歴史があり、その発展に貢献した心理学者は大勢います。ここでは代表的な教育心理学者がどのような思想を持ちながら教育研究を行っていたのかを時系列で解説していきます。

時代学者思想・活動内容
17世紀初頭 J.A.コメニウス

(チェコ)

 児童教育学の先駆者。「人を人らしくするのは教育である」と考える。著書『大教授学』では「あらゆる人に、あらゆることを教授する普遍的な技法」が示されている。
18世紀末葉J.H.ペスタロッチ

(スイス)

教育実践家。現代における「学校」を創設した人物。これまでの教育方法に異論を唱え、自らの理念を基に教育を実践した。彼は「生活が陶冶(とうや)する」という有名な言葉を残している。陶冶とは教育とほぼ同義で、生活が人間の形成に大きな影響を与えることを意味している。
19世紀初頭J.F.ヘルバルト

(ドイツ)

ペスタロッチの教育思想に影響を受けたヘルバルト。「教育の目的は倫理学が、その方法は心理学が担う」とし、教育学を構想した。さらに教育方法の基礎となる四段階教授法を設定する。その内容は「明瞭・連合・系統・方法」からなり、その後も多くの学者がこれを基に教授理論を発展させている。
20世紀初頭E.L.ソーンダイク

(アメリカ)

教師の教授法、生徒の教育評価を推進するなど、現代の教育心理学の中心的役割を担う多くの実績を残す。また初めて「学習」に心理学を用いた心理学者でもある。「アメリカの教育心理学の祖」とも呼ばれる。

 

教育心理学の研究手法

教育心理学では、実験を用いて論理的に教育を解き明かしていく作業が行われます。では具体的にどのような研究方法があるのかを見てみましょう。

観察法

観察法とは対象者を観察しながらデータを取る方法です。研究の中でも最も基本的な手法だとされています。

①自然観察法

自然観察法とは観察者の意図や介入を加えずに、対象者(児童生徒)の発言や行動をありのままに記録する方法を指します。メリットは、条件の統一が出来ないときに使用が可能であること。一方デメリットは、多くの観察時間を要することが挙げられます。

②実験観察法

実験観察法とは、ある程度条件を整えて観察する方法です。上記のような自然な状態だと条件のバラつきが大きく、良い観察が出来ない場合に用います。効率的だというメリットはありますが、与える条件は限りなく日常的で自然なものにする注意が必要です。

実験法

実験法とは、さまざまな条件を統一させておき、ある条件だけを変化させたときにどのような反応が起きるのかを調べる方法です。

①統制群法

統制群法とは、ある条件を加えた際、その条件がどのような影響を及ぼすのかを調べる方法です。

例えば、年齢や性別など質的に等しいグループを2つ作ります。グループAには調べたい条件を与え(実験群)、グループBには与えません(統制群)。そうして表れたグループの相違を比較すると、条件がどのような影響を与えているのかが分かります。

②相殺法(そうさいほう)

調べたい条件が複数ある際、条件提示の順序が結果に影響してしまうことがあります(順序効果)。この順序効果を生まないようにする方法が相殺法です。相殺には「帳消しする」という意味があります。

例えば条件が2つある場合、実験群も2つ作りましょう。実験群1にはA→B、実験群2にはB→Aの順に条件を与え、2グループの平均を取ることで順序効果が相殺出来ます。

③反復法

たまたま短時間で問題が解けた、というような偶然の結果を避けるために行われるのが反復法です。同じ実験を何度か繰り返し、その平均時間を取るなどして偶然の誤差を解消します。

調査法

調査法は、児童や教師の意識について知りたいときに用いられます。

①質問紙法

いわゆるアンケート調査です。短期間に多くのデータを得られるメリットがあります。

この方法でもっとも重要なことは標本抽出(サンプリング)だとされています。標本抽出とは調査対象者を選び出す作業のことです。偏りが出ないように無作為な抽出を行いましょう。

②面接法

面接法は、直接対象者と面接を行い調査する方法です。質問紙法よりも対象者の詳細な情報が得られ、会話の中で臨機応変に質問内容を変えられるメリットがあります。

反対にデータ収集に多くの時間が掛かってしまったり、面接者にはそれなりの技術が必要といった問題点も存在します。

検査法(テスト法)

検査法はテスト法とも呼ばれ、対象者に課題を行わせてその人を理解する方法です。知能検査、学力検査、職業適性検査、言語発達検査を始め、多様な検査方法が考案されています。

対象者の特性や適性を正しく判断しなくてはならないため、検査には充分な時間と労力をかけて信頼性の検討を行うよう心掛けましょう。

教育心理学の代表的な学会

各心理学分野にはいくつかの学会が存在し、その学問の進歩や普及を目的としながら活動しています。ここでは教育心理学の代表的な学会をご紹介します。

一般社団法人 日本教育心理学会

日本教育心理学会は1959年(昭和34年)に創立された学術団体です。教育心理学の発展と拡大を目的とした活動が行われており、機関誌を通して最前線の研究を内外に広く発信しています。

【主な活動内容】

  • 教育心理学に関する研究成果の発表
  • 機関誌『教育心理学研究』(年4回)『教育心理学年報』(年1回)の発行
  • 会員の研究発表のための総会
  • 公開シンポジウムの開催

教職経験のある者、教育心理学に関わる実務経験のある者、大学や大学院で教育心理学や関連領域を専攻した者であれば誰でも入会が可能です。

教育心理学を学べる大学・大学院

教育心理学を学べる大学と大学院を一部リストアップしました。

【北海道】

  • 北海道情報大学通信教育学部 (通信) 経営情報学部 教職課程
  • 北星学園大学大学院 (私) 社会福祉学研究科 臨床心理学専攻

【東北】

  • 石巻専修大学 (私) 人間学部 人間教育学科
  • 盛岡大学 (私) 文学部 児童教育学科
  • 東北大学大学院 (国) 教育学部 教育科学科 教育心理学コース

【関東】

  • 埼玉学園大学 (私) 人間学部 子ども発達学科
  • 立教大学 (私) 文学部 教育学科
  • 田園調布学園大学 (私) 子ども未来学部 子ども未来学科
  • 群馬大学 (国) 共同教育学部

【中部】

  • 名古屋学芸大学 (私) ヒューマンケア学部 子どもケア学科 児童発達教育先行
  • 金沢星稜大学 (私) 人間科学部 子ども学科
  • 富山大学 (国) 人間発達科学部 教育心理コース

【近畿】

  • びわこ学院大学 (私) 教育福祉学部 子ども学科 子供教育コース
  • 大阪人間科学大学 (私) 人間科学部 子ども教育学科
  • 畿央大学 (私) 教育学部 現代教育学科
  • 滋賀大学 (国) 教育学部

【中国・四国】

  • 広島都市学園大学 (私) 子ども教育学部 子供教育学科
  • 環太平洋大学 (私) 次世代教育学部 こども発達学科

【九州・沖縄】

  • 南九州大学 (私) 人間発達学部 子ども教育学科
  • 西南学院大学 (私) 人間科学部 児童教育学科

教育心理学の知識が役立つ職種・進路

教育心理学では児童の諸問題の解決方法や発達のサポート法、教師の教授法などを学びます。よって、知識を役立てるなら児童に関わる職種に就くことがお勧めです。具体的には以下のような職種や進路先が存在します。

  • 小学校・中学校・高校教諭
  • 保育士・幼稚園教諭
  • 学童保育士
  • 特別支援学校教諭
  • スクールカウンセラー
  • 図書館司書
  • 児童相談員(児童福祉司)
  • 教育関連企業
  • 教育センター

教育心理学に関連する資格

教育心理学に関連する資格にはどんなものがあるでしょうか。今回は2つの資格についてご紹介します。

学校心理士

学校心理士認定運営機構・日本学校心理士会では、学校心理士を

学校等をフィールドとした心理教育的援助の専門家

と説明しています。

現在学校では、多くの児童生徒が何らかの問題を抱えながら生活しています。生徒数は減っているのに不登校児童は増加傾向にある状態です。その多くはいじめ、発達障害、内向的な性格などがきっかけとなっています。

学校心理士の援助範囲は幅広く、児童生徒からその保護者、さらには教員、学校全体にまで至ります。それぞれの抱える悩みや問題と向き合い、専門知識を用いて支援をしていくことが目的です。

学校心理士の専門知識は主に学校心理学を基にしていますが、教育心理学も関連性が深い学問となっています。資格取得者は教育機関、教育委員会や教育相談所など児童教育に関わるさまざまな場所で働いています。

児童福祉司

児童福祉司とは、児童相談所に必ず配置することが義務付けられている資格者のことです。児童が置かれている環境を調査し、保護や援助などの業務を行います。

児童福祉司になるには、まず大学で、心理学、教育学、社会学のいずれかを学ばなくてはなりません。その後1年の実務経験を積み、公務員試験に合格後、児童相談所に配属されます。

援助対象となる子供たちは家庭にさまざまな問題を抱え、充分な教育が受けられていない場合が多いです。すると知能や社会性が備わらず、成人後も苦しむことになります。

こうした児童の発達サポートにおいても、教育心理学で得た知識は非常に役に立つでしょう。

教育心理学について学べる本

教育心理学の知識がより深まる書籍をご紹介します。

教職課程コアカリキュラムに対応した教育心理学

created by Rinker
¥1,320 (2021/09/27 17:15:08時点 Amazon調べ-詳細)

教育心理学では「主体的な学び」の有用性が認められています。本書でも「主体的学びはなぜ面白いのか」ということに重点を置き、教育心理学の基礎から応用に至るまでの知識を分かりやすく解説しています。

教育に携わる人、これから目指す人、一般読者、どなたが読んでも為になる、教育心理学の入門書的な一冊です。教職課程コアカリキュラムに対応しているので、教員を目指す方には特にお勧めします。

私たちは子どもに何ができるのかー非認知能力を育み、格差に挑む

非認知能力とは、やり抜く力、好奇心、自制心といった点数や指標で認知出来ない能力のことです。近年、貧困などにより教育格差が生まれやすいことが問題となっていますが、貧しい子供たちは非認知能力を養う機会が充分に与えられないまま大人になり、結果的に貧困の連鎖を生んでしまいます。

本書は「どうしたら子供の非認知能力を伸ばせるのか」という疑問に答えるべく、研究や取材を重ねてようやく結実した意欲作となっています。

子供にとって、本当に大切なこととは何なのか。本書を通して教育の本質を理解していきましょう。

この先の教育心理学

少子化や教職員の激務等が影響し、教育者を志望する数は減少傾向にあります。しかし教育の価値や需要はどうでしょう。下がるどころか増しているようにも感じます。

どの時代においても、未来を担うのは子供たちです。適切な教育を充分に受けた子供たちが、より良い未来を生み出すと言っても過言ではありません。

教育心理学はそうした未来のためにも必要不可欠な学問だと言えます。今後も時代に応じて発展し、教育の可能性を広げていくことでしょう。

参考文献

  • 徳田克己・髙見令英(2003). 『ヒューマンサービスに関わる人のための教育心理学』文化書房博文社 7-12
  • 一般社団法人 日本教育心理学会
  • 市川伸一『教育心理学への誘い

関連記事

    • この記事を書いた人

    kinu

    臨床心理学科卒。主に発達心理学、学校心理学について学んでいました。

    -心理学を学ぶ

    © 2020-2021 Psycho Psycho