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発達心理学とは?詳しい特徴や、関連のある資格・学会、大学について紹介

発達心理学とは、年齢に伴う心身の発達過程を研究する心理学の一分野です。発達と聞くと成人を迎えるまでのわずかな期間を想像する方が多いでしょう。しかし発達心理学の対象は、母体にいる間の胎児期から高齢期以降と非常に長く、人生そのものを取り扱う学問なのです。今回は発達心理学のより分かりやすい解説から、関連のある資格や学会について詳しくご紹介します。発達心理学が学べる大学リストも掲載したので、進路選びに役立てていただけたら幸いです。

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発達心理学とは

まずは発達心理学の基礎知識から見ていきましょう。

発達心理学の特徴

人間の発達過程に着目し、心、体、社会性、認知などがどのような変化を辿るのか、心理学的に研究する学問のことを発達心理学と言います。

「発達」と聞くと、子供の成長を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、発達心理学の対象は胎児期から高齢期に至るまで、非常に幅広いのが特徴です。

人間の身体的成長や記憶力は20代でピークを迎え、その後緩やかに下降していきます。そのため、かつての発達といえば、子供から大人へと成長する過程を示すものでした。

しかし1980年代に入ると、「生涯発達」という新しい概念が登場します。この発達観を提唱したドイツの心理学者、ポール・バルテスは「発達は全生涯を通じて常に獲得(成長)と喪失(衰退)とが結びついて起こる過程である」と定義しました。

簡単に言い換えると、「成長に伴う進歩も、加齢に伴う衰退も発達である」ということになります。この生涯発達の考えを基盤とし、各区分における特徴を理解しようという学問が今日の発達心理学なのです。

発達心理学の8つの区分

発達心理学では、生涯を以下の8つの区分に分けて論じています。
※エリクソンの「心理社会的発達理論」では、これとは違う区分で8段階理論を提唱しています

年齢区分
受精~胎児期
誕生~新生児期
~1歳乳児期
1~6歳幼児期
6~12歳児童期
12~25歳青年期
25~65歳成人期
65~高齢期

こうした年齢区分は大体の目安で、時代により変化していきます。近年では児童の身体的発達が早いため、青年期が前倒しでやってきているのです。逆に、パラサイトシングルの増加や晩婚化により、青年期を終える年齢は徐々に遅くなってきています。

発達心理学を学ぶ意義

発達心理学は、保育、教育、福祉など、人の発達に携わる職業に就くために必要不可欠な学問です。しかし、将来そのような職業に就かなくとも学ぶ意義は十分にあります。

生きていれば誰しも、多くの疑問や葛藤に直面します。発達心理学を学ぶと、そのような問題を解決するヒントを得ることができるのです。

子育ての最中であれば、「周囲と比べて言葉が遅いような気がする」「癇癪が激しい」というような、子供の発達に関する悩みが尽きません。そんなときは幼児期の発達心理学を参考にすると良いでしょう。子供の発達過程を理解することで、育児に対するさまざまな不安が緩和できます。

また、自分自身をより深く理解するために用いることも可能です。自身の発達段階や、その年代における特徴を知れば、今抱えている問題を客観的に捉えることができるでしょう。

他にも職場の対人関係に活かしたり、家族や恋人に対する悩みの解決策に繋げるなど、その用途は多岐に渡ります。

発達心理学は特別難しい専門分野ではありません。「人はどのように年を重ね、どのような変化を遂げるのか」といった、私たちの身近な疑問を解消するために非常に役立つ学問なのです。

発達心理学の歴史

「発達心理学」という名称が広まったのは、第二次世界大戦後の1950年代だと言われています。それ以前の発達に関する心理学の呼び名は「児童心理学」を用いることが一般的でした。

かつては人の平均寿命も50歳程度と若く、おおよそ20歳頃までの成長過程を明らかにすれば、発達についての十分な理解が得られたのです。しかし戦争が終わると世界情勢も安定しだし、人の寿命は徐々に延びていきました。

人の寿命が延びたことをきっかけに、心理学者や研究者の関心は「人の一生を明らかにすること」へと移り変わります。乳児から高齢者に至るまでの人の一生を段階別に区分し、各年代における特徴を明らかにする研究が広まっていったのです。

こうした流れを受けて、アメリカの心理学会は「児童心理学」の名を「発達心理学」へと改めました。

発達心理学の研究手法

次に、発達心理学で用いられる主な研究手法についてご紹介します。以下の表は、心理学における基本的な研究法をまとめたものです。

観察法対象者の行動を注意深く観察し、内面の理解を深める方法
実験法ある条件だけを操作することで、対象者の行動がどのように変化するかを調べる方法
調査法(面接法・質問紙法)面接法では対象者と面接を行い、質問紙法ではアンケートを用いてデータを取る
検査法(テスト法)対象者に課題を行わせ、発達状況などを理解する方法

発達心理学では上記の他にも、縦断的研究や横断的研究、コーホート分析といった研究手法もよく利用されます。

横断的研究

横断的研究とは、さまざまな年齢群を同時に比較検討する方法です。具体的には次のような手順を踏みます。

①年齢ごとに複数の対象者を無作為に選び出す(例:3歳軍・5歳軍・7歳軍)
②各年齢軍で発達の中央値や平均値を求める(前項で紹介した基本的な心理学研究法を用いる)
③他年齢軍の中央値と比較検討する

メリットは、比較的短時間で多くの年齢別サンプルを得ることができ、「平均的な発達」というものを知ることができる点です。

しかし、発達には必ず個人差というものがあります。中央値や平均値を年齢間で比較するだけでは本人の特性を見つけ出すことは難しいと言えるでしょう。また、発達の因果関係などが分かりにくいという短所もあります。

縦断的研究

縦断的研究とは、一人の対象者の成長を追い続ける方法を指します。

横断的研究では難しかった時間経過による発達変化や、個人の特性を把握することが可能です。

しかし、多くの対象者を同時に追跡するには膨大な時間、費用、労力が掛かります。また対象者が参加を辞退すれば、追跡を途中で断念しなくてはならないというリスクも存在します。

コーホート分析

「一定の時期に、人生における同一の重大な出来事を体験した人々」これをコーホートと言います。コーホート分析とは、同一のコーホートに属する人のデータを収集し、統計学的に分析する方法です。

コーホート分析を行うことにより、「人生における重大な出来事」という共通因子が、人々にどのような影響を与えているのかを調べることができます。

コーホートの具体例としては、生まれた時期、社会的変動の経験(例:団塊世代)、共通の経験(例:ミレニアム)などが挙げられます。

発達心理学の代表的な学会

各心理学分野にはいくつかの学会が存在し、その学問の普及や地位向上を目的としながら活動しています。ここでは発達心理学の代表的な学会をご紹介します。

一般社団法人 日本発達心理学会

日本発達心理学会は1989年に創立された学術団体です。主に発達心理学の発展と拡大を目指して活動しています。学歴も業績も加入の必要条件には定めていないため、学者、研究者に限らず、発達分野に携わる社会人や学生も入会することができます。

【主な活動内容】

  • 学術雑誌『発達心理学研究』の発行(年4回)
  • ニューズレターの発送(年3回)
  • インターネットによる研究情報の配信(月2回)
  • 臨床発達心理士資格の創設、運営
  • 国際ワークショップの開催

発達心理学を学べる大学

発達心理学を学べる大学を一部リストアップしました。

【北海道】

  • 北翔大学(私)教育文化学部 心理カウンセリング学科
  • 北海道教育大学(国)学校教育専攻 教育心理学分野

【東北】

  • 東北福祉大学(私)総合福祉学部 福祉心理学科
  • 盛岡大学(私)文学部 児童教育学科
  • 青森県立保健大学(公)健康科学部 社会福祉学科

【関東】

  • 玉川大学(私)教育学部 乳幼児発達学科
  • 淑徳大学(私)総合福祉学部 実践心理学科
  • 文教大学(私)人間科学部 人間科学科
  • 茨城大学(国)人文社会科学部 人間文化学科

【中国】

  • 名古屋学芸大学(私)ヒューマンケア学部 子どもケア学科
  • 皇學館大学(私)文学部 コミュニケーション学科心理コース
  • 新潟青陵大学(私)福祉心理学部 社会福祉学科

【近畿】

  • 大阪人間科学大学(私)心理学部 心理学科
  • 兵庫大学(私)生涯福祉学部 社会福祉学科
  • 京都文教大学(私)臨床心理学部 子ども青年心理コース
  • 滋賀大学(国)教育学部

【中国・四国】

  • 高松大学(私)発達科学部 子ども発達学科
  • 福山大学(私)人間文化学部 心理学科

【九州・沖縄】

  • 鹿児島国際大学(私)福祉社会学部 福祉社会学科
  • 沖縄国際大学(私)総合文化学部 人間福祉学科(心理カウンセリング専攻)

 

先に述べた通り、発達心理学では「人の生涯」について学びます。そのため大学でも、幼児教育、学校教育、心理学、社会福祉と、さまざまな学部学科で勉強することが可能です。字数の都合上記載を省略していますが、同大学の他学科でも発達心理学を学べる場合があります。

ご自身の就きたい職業などと照らし合わせ、じっくりと進路先を考えてみてください。

発達心理学に関連する資格

発達心理学に関連する資格にはどのようなものがあるのかご紹介します。

臨床発達心理士

臨床発達心理士とは、発達心理学の知識をベースに、子供から大人まで幅広い層のサポートを行う資格者(資格)のことを指します。発達の現場に携わる専門家のため開かれた民間資格です。

発達に関するさまざまな支援を行い、子育てや障害、社会適応などの問題に対応します。具体的な諸問題は以下の通りです。

  • 育児不安、虐待、不登校、引きこもりなどの現代的問題
  • 「気になる子」のような健常と障害との境界の問題
  • 自閉症、知的障害、LD(学習障害)AD/HD(注意欠陥多動性障害)などの発達障害
  • 社会適応や成人期・老年期などの問題
  • 子育て支援、次世代健全育成

引用:臨床発達心理士 JOCDP HP

資格を取得するには、受験資格を満たしたうえで資格試験(年1回)に合格しなくてはなりません。受験資格には「大学院修了」や「大学卒業後、実務経験を積んだもの」といった厳しい規定が存在します。

現役の研究者や、国家資格である公認心理師の資格保持者であれば一次審査の筆記試験が免除されます。申請者のタイプによって審査内容が変わるため、事前に主催団体に確認を取りましょう。

発達心理学の知識が活かせる職種・進路

臨床発達心理士の資格を持つ人々は、支援対象者のライフステージに応じ、次のような場で仕事をしています。

乳幼児期保健所、保育所、幼稚園、子育て支援センター、児童相談所など
学齢期特別支援学校、教育相談施設、学童保育など
成人・老年期障害者施設、作業所、老人ホームなど
生涯発達母子生活支援施設、発達クリニック、障害者職業センターなど

上記の進路先は、臨床発達心理士の資格を取得していなくても進むことが可能です(その他の資格が必須の場合もあるので注意しましょう)

他にも教員、カウンセラー、教育関連企業、ヘルパーなど発達心理学の知識を活かせる職種は沢山あります。「生涯発達」を学んだからこそ、活躍できる場もより広がると言えるでしょう。

発達心理学について学べる本・雑誌

発達心理学をより深く理解するのに役立つ書籍をご紹介します。

問いからはじめる発達心理学

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本書のタイトル通り、各章の頭に問いが設定されています。この問いのお陰で発達心理学がより身近なものに感じられ、具体的な理解を得ることができるでしょう。また、実験内容の記載も豊富です。図や絵を用いた解説は非常に分かりやすくなっています。

初学者でも理解できるやさしい言葉で綴られているので、これから発達心理学を学びたい学生や子育て中の保護者など、多くの方に手に取ってほしい一冊です。

新 乳幼児発達心理学ーもっと子どもがわかる 好きになる

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生涯発達といえど、乳幼児の発達においてはより多くの悩みや疑問が生まれます。本書では、育児書とはまた違った視点から子供の成長過程を理解できるため、これから子育てをする予定の方や、子育てに行き詰った保護者の方にぜひお勧めしたいと思います。

理論的な解説は幼児保育に携わる職種の方々にも必ず役立つので、ぜひご一読ください。

発達心理学を学ぶ醍醐味

発達心理学者であるエリクソンは、自我の発達に焦点をあてた「心理社会的発達理論」を提唱しました。この理論は生涯を8つの領域に分け、それぞれの特徴・重要な対人関係・心理的危機(発達課題)を明らかにしたものです。

各段階で設定された発達課題を達成できずに次の段階へ進んでしまうと、健康な自己を発達させることができないとエリクソンは述べています。

青年期以降も、こうした発達課題が設定されているのは非常に興味深いことです。大人といえど、人としてはまだまだ未完成な状態なのかもしれません。

生涯を通して発達できる喜びを感じられるのも、発達心理学を学ぶ醍醐味の一つと言えるでしょう。この知識が、あなたのより豊かな生活に繋がることを願います。

参考文献

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    • この記事を書いた人

    kinu

    臨床心理学科卒。主に発達心理学、学校心理学について学んでいました。

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