今回は、リラクセーション法のひとつである「漸進的筋弛緩法(PMR:Progressive muscle relaxation)」について紹介します。リラクセーションとは、緩和や弛緩という意味を持ち、心身の緊張を緩めることを表します。
人はストレスを抱えているとき、(無意識に)身体に力が入り、筋肉が緊張した状態となっています。この筋肉の緊張を緩めることで、リラックスした状態を作り出す方法が漸進的筋弛緩法です。
ここでは、漸進的筋弛緩法とは何か、読み方や意味、方法や効果について解説していきます。
(なお、「こちらの記事」では、リラクセーション法全般について紹介しております。併せてご参照ください。) >リラクセーション法とは?主な種類と方法、効果や注意点について解説
漸進的筋弛緩法(PMR)とは
漸進的筋弛緩法(PMR:Progressive muscle relaxation)とは、アメリカの医師であるジェイコブソンにより開発されたリラクセーション法です。
ストレスを抱えると筋肉が緊張し、リラックスすると筋肉を緩みます。漸進的筋弛緩法は、この筋肉の緩みを体感することを狙いとしています。ポイントは、一旦筋肉を緊張させてから筋肉を緩めることにあり、これによって筋緊張の違い(筋肉の緩み)が体感しやすくなると考えられています。
同じく代表的なリラクセーション法である自律訓練法が自己暗示によって身体の緩みを体感する心理的アプローチであることに対して、漸進的筋弛緩法は、現実の身体の緊張と弛緩から身体の緩みを体感する身体的アプローチであると言えます。
漸進的筋弛緩法の読み方と意味
漸進的筋弛緩法は「ぜんしんてききんしかんほう」と読みます。漸進(ぜんしん)とは、手順を追って、徐々に目的を実現しようとする意味合いを持っています。
漸進的筋弛緩法とは、基本動作を身体の各部位ごとに順次(漸進的に)行い、系統的に全身の筋肉を弛緩させる方法を表しています。
漸進的筋弛緩法のやり方・方法
漸進的筋弛緩法は、以下に示す基本動作を身体の各部位(両手、両腕、肩、首、顔、背中、腹部、脚など)に順次行っていき(できる部位だけの実施でも可能)、力を入れたとき、力を抜いたときの感覚を味わいます。
力を抜いたときに、その部位がじんわり緩んでいく感覚が得られるとリラックスした状態と言えます。この緊張と弛緩を繰り返しながら、身体全体をリラックスした状態に導きます。
基本動作
各部位の筋肉に力を入れて(10秒程度)緊張させた状態を保った後、力を抜いて(15~20秒程度)緩めていきます。力を入れるときは、全力ではなく60~70%くらいの力で行うこと、力を抜くときは、ストンと一気に脱力することがポイントです。
例えば、手であれば拳を握って力を入れた後、掌を広げて脱力する。肩であれば、肩をすぼめて力を入れた後、ストンと落として脱力する。といった要領で筋肉の緊張と弛緩を繰り返します。
なお、取り組む際は空腹時は避け、トイレも事前に済ませ、ベルトや時計など身体を締め付けるものを外すなど、集中しやすい状態を整えることが良いとされています。
姿勢としては、椅子に深く腰を掛けるなど、力が抜けて楽な姿勢を取ることが大切です。実施前に腹式呼吸を繰り返し、気持ちを落ち着けることも一法です。
怪我や不調がある部位においては、緊張を高めることで痛みや不快感を引き起こす場合があるため、力を入れることを控えるなど注意が必要です。
漸進的筋弛緩法の効果
漸進的筋弛緩法はリラクセーション法であり、リラックスした(副交感神経が優位な)状態を作り出すことで、緊張や不安、抑うつなどの心理面、不眠など身体面におけるストレス反応を緩和する効果が期待されます。
不安症状やうつ症状、不眠症へのケアに役立てられているほか、日常生活においても心身の健康の維持・増進、パフォーマンス向上など幅広く活用されています。
さらに、リラクセーションが得られることに加え、漸進的筋弛緩法を続けるうちに、身体感覚が敏感になり、緊張状態に気が付きやすくなるといった効果も挙げられます。
これによって、身体の緊張に早く気が付き、意識的に力を抜くといったセルフコントロールが行いやすくなり、心身のバランスを保つことにつながります。
漸進的筋弛緩法について学べる本
最後に、漸進的筋弛緩法について詳しく学ぶ上で参考になる書籍を紹介します。
漸進性弛緩法をはじめとした主なリラクセーション法に関する理論が押さえられており、リラクセーション法とは何かということを学ぶ上で参考になる書籍です。
漸進的筋弛緩法や自律訓練法など主要なリラクセーション法の解説がまとめられているほか、活用例についても紹介されています。タイトルにあるように、学校場面での活用を想定した構成となっていますが、声掛けの方法などは他領域においても参考となる内容です。
理解を深めるために、CDなどを用いて実際に体験してみることも一つです。教示のテンポやトーンなど、実践的なイメージが膨らむことと考えられます。
日々、こまめに緊張を緩めておくことが大切です
漸進的筋弛緩法は、いつでもどこでも、そして短時間で行える、比較的取り組みやすいリラクセーション法です。
仕事や学校、家事など忙しく過ごす中、心身をゆっくりと休める時間が持てないと感じる方も多いと思いますが、作業の合間や入眠前など日々のちょっとした時間に取り組めるので、無理なく続けることができます。
疲れやストレスはこまめに消化しておくことが肝要ですので、皆様の日々の生活にも取り入れてみてはいかがでしょうか。
参考文献
- 藤原忠雄 著(2006)『学校で使える5つのリラクセーション技法』ほんの森出版
- 島悟・佐藤恵美 著(2007)『ストレスマネジメント入門』日経文庫
- 文部科学省ホームページ『在外教育施設安全対策資料【心のケア編】第2章心のケア 各論 Ⅱストレスへの対処』(2021年7月29日参照)