シゾイドパーソナリティ障害とは?原因・特徴・症状と診断基準、治療法を解説

2022-02-07

パーソナリティ障害という精神障害の分類は非常に多彩な症状を示すものが含まれており、それぞれの持つ特徴はバラバラなため、一つづつしっかりと理解することが重要です。

今回はその中でも奇妙な思考や言動を特徴とするA群パーソナリティ障害群の1つであるシゾイドパーソナリティ障害をご紹介します。シゾイドパーソナリティ障害とはいったいどのような精神障害なのでしょうか。その原因や特徴、症状と診断基準、治療法と接し方などについてご紹介します。

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シゾイドパーソナリティ障害とは

シゾイドパーソナリティ障害は、統合失調質パーソナリティ障害やスキゾイドパーソナリティ障害とも呼ばれる精神障害です。

シゾイドパーソナリティ障害の特徴

シゾイドパーソナリティ障害は、次のような特徴を持っています。

【シゾイドパーソナリティ障害の特徴】

  • 社会的関係から距離を取ること
  • 全般的な無関心
  • 感情表現の少なさ

自閉スペクトラム症(アスペルガー障害)との類似

このような特徴は、自閉スペクトラム症(アスペルガー障害)の特徴と似ていることが古くから指摘されていました。

【自閉スペクトラム症の特徴】

  • コミュニケーションの障害
  • 対人相互作用の障害(非言語的コミュニケーションの障害)
  • 想像性の障害

自閉スペクトラム症は、物事の関心の幅が狭く、多くの場合対人交流場面に興味を示しません。

そして、会話など言語的コミュニケーションおよび目を合わせる・微笑むなどの非言語的なコミュニケーションが苦手という特徴を示すことから、シゾイドパーソナリティ障害と自閉スペクトラム症の鑑別が困難となるケースも少なくありません。

シゾイドパーソナリティ障害と自閉スペクトラム症の違い

確かに表面上に出てくる特徴が似ていますが、自閉スペクトラム症は脳機能の障害に由来する発達障害であり、パーソナリティの偏りが原因ではありません。

そのため、知能検査を取った際に自閉スペクトラム症にみられるような、知的能力の偏りはシゾイドパーソナリティ障害でみられるとは考えにくく、外に現れる症状だけでなく心理検査なども駆使して多角的な見立てを行う必要があるでしょう。

シゾイドパーソナリティ障害の原因

パーソナリティは生まれ持った傾向(気質)に加え、成育環境から受ける影響によって形成されるものです。

シゾイドパーソナリティ障害の明確な原因に関しては現在も特定されていませんが、遺伝学研究によれば、統合失調症や失調型パーソナリティ障害の患者が親族に多いということから何らかの遺伝的要因があることが指摘されています。

また、古くから精神分析では、乳幼児期の自我発達において問題があることが原因だと考えられていました。初期における養育者との関係性が後の人間関係のひな型になることは愛着理論でも指摘されています(これを内的作業モデルと言います)。

人と親密な関係を築こうとすると対象も自分も失われてしまうのではないかという根源的な不安が生じるために、シゾイドパーソナリティ障害に特有な社会関係から距離を取ったり、感情表現をせず親密な関係を築かない無関心さなどの特徴が形作られると考えられています。

シゾイドパーソナリティ障害の治療法と接し方

シゾイドパーソナリティ障害は、人とのかかわりを求めないという特徴がありますが、それはその個人の価値観にもなっています。

シゾイドパーソナリティ障害は統合失調症の病前性格である可能性があるとされており、人とのかかわりを持つよう無理強いをし、ストレスの多い環境にしてしまうことで統合失調症へと発展する恐れもあります。

そのため、接するときは当人の価値観を受容し、無理に社交性を求めないようにすることが必要です。

信頼関係を築くことができれば、精神療法も有効だとする報告もあります。

シゾイドパーソナリティ障害患者は近づくことにより対象も自分も失われるのではないかという無意識的な葛藤を抱えており、それは治療場面において、治療者にも「変化させたい」と「そっとしておきたい」という矛盾した感情(逆転移)が現れるケースも多いようです。

そのため、そのような苦しい矛盾した気持ちを抱えながら接する治療者の姿勢こそが、自分の苦しさを理解してくれる信頼できる人物であるとして、しっかりとした信頼関係を築く一助となるでしょう。

シゾイドパーソナリティ障害の由来と歴史

シゾイドパーソナリティ障害のシゾイドとはもともと、分裂病質という概念に由来します。

この概念はクレッチマーという学者が、当時の三大精神病である、精神分裂病(統合失調症)・躁うつ病(双極性障害)・てんかんは人間の精神的な素因、つまり生まれながらに持った特徴のひな型であるという気質類型論を提唱したことから始まりました。

この理論では、このような生まれながらの性格傾向と体型に関連があると考え、次のような気質と体型の結びつきを主張しました。

【クレッチマーの類型論】

  • 分裂気質:細長体型で静か・控えめ・真面目
  • 躁鬱気質:肥満体型で社交的・親切・温厚
  • 粘着気質:闘士型(筋肉質)で几帳面・熱中しやすい

この分裂気質と言われる傾向は統合失調症に関わりのある生まれながらの性格傾向のことを指します。

※ただし、この気質を持っているから直ちに統合失調症になるというものではなく、三大精神病のうち発病するならどの素因を持っていそうかという分類に過ぎないため、分裂気質は何も病的なものではありません

統合失調症は幻覚や妄想などの陽性症状が有名ですが、その後症状が進行すると、反応性の低下、感情の平板化などを特徴とする陰性症状へと移行します。

そして、その陰性症状が統合失調症の中核であると考えられており、分裂気質の物静かで控えめという性格傾向は統合失調症に通ずるものがあると考えられたのです。

さらにクレッチマーはこの気質と精神病の間は連続体であり、分裂気質と統合失調症の間には分裂病質と呼ばれる段階があると考えました。

この分裂病質がシゾイドであり、「社会的に孤立していて対人接触を好まず、感情の表出が乏しく、何事にも関心が無いように見える」状態であるとしました。

精神分析とシゾイドパーソナリティ

シゾイドは精神分析的観点からも古くから注目されていました。

シゾイドに対する精神分析的見解を初めて示したのはフェアバーンという精神分析家であり、彼はシゾイドパーソナリティの特徴を次の3つだとしました。

  1. 万能的態度(自分の欲求を満たすために人を扱ったりすること)
  2. 孤立的で感情と距離をおいた態度(感情を他人に示すことが無く関わり合いを避けること)
  3. 内的現実へのとらわれ(外的現実への興味が薄く、現実に何かを生み出すという行為が苦手)

これらの特徴は何もシゾイドパーソナリティ障害患者のみならず、統合失調症患者や神経症患者、特に症状のない健常者まで広範に認められるものだとされます。

その後、ウィニコットは、偽りの自己の肥大と本当の自己の疎隔という独自の視点でシゾイド状態を捉える見解を示しました。

DSMにおけるシゾイドパーソナリティ障害の扱い

フェアバーンやウィニコットらは精神分析家であり、それまでシゾイドは無意識における自我の機能から捉えられることが多かったのですが、外側から観察が可能な症状に焦点を当てた診断マニュアルであるDSMの登場によって大きく変化します。

1980年にDSAM-Ⅲが刊行された際に、人格(パーソナリティ)の偏りによる社会不適応を引き起こす精神障害を人格障害としてまとめ、その1つとして分裂病質人格障害が含まれていました。

これが現在のシゾイドパーソナリティ障害にあたります。

しかし、精神が分裂するという用語が与える印象や人格者など道徳的な良し悪しを意味に含む「人格」に障害があるという診断名が偏見を招きかねないとし、DSM-Ⅳ-TRへの改訂の際にシゾイドパーソナリティ障害(統合失調質パーソナリティ障害)と呼称が変更され現在に至ります。

シゾイドパーソナリティ障害について学べる本

シゾイドパーソナリティ障害について学べる本をまとめました。初学者でもわかりやすい入門書をご紹介していますので、気になるものがあればぜひ手に取ってみてください。

シゾイド人間 内なる母子関係をさぐる (講談社文庫)

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シゾイドパーソナリティ障害は一見奇異な症状を示しているように見えますが、私たちにはその傾向は全くないのでしょうか。

友達や恋人に本当の自分をさらけ出せないということは珍しくなく、それはスキゾイドの傾向なのかもしれません。

現代人に多いスキゾイド傾向を改めて解釈する本ですので、これからシゾイドパーソナリティ障害について学びたい方にぜひ手に取って頂きたい一冊です。

パーソナリティ障害とは何か (講談社現代新書)

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パーソナリティの偏りによって、社会不適応が生じるならば、自分の性格を変えればいいだけの話だと思っていませんか。

しかし、私たちがすぐに別人になることができないように、これまでの人生で培ってきたパーソナリティをすぐに変容させるということは容易ではありません。

そのため、パーソナリティ障害がどのような構造によって生じ、どのように接するべきなのかについて本書を手に取って学びましょう。

パーソナリティ障害の定義の広さ

パーソナリティ障害が精神病質という性格の異常による診断がなされていたころは非道徳的で反社会的な人たちと捉えられていました。

しかし、シゾイドパーソナリティ障害は、他者への関心が薄いということが主症状であり、その特性によって周囲の人が迷惑を被るという場面は多くないため、障害と認識されないケースもあるようです。

しかし、現代社会では誰かと繋がって生きていくことは必須であり、自身の特性によって生きづらさを抱えているパーソナリティ障害の典型がシゾイドパーソナリティ障害だと言えるでしょう。

一口にパーソナリティ障害とまとめても、その中には様々な病態を示すものが含まれているため、ぜひ他のパーソナリティ障害についても詳しく学びましょう。

【参考文献】

  • 吉沢伸一・上田勝久(2013)『青年期・成人期の困難事例における行き詰まりと治療機序 : 精神分析的臨床におけるパーソナリティ障害の対応と一般臨床への応用』研究助成論文集 (49), 9-18
  • 山川裕樹(2002)『Schizoid心性について--質問紙作成の試み』京都大学大学院教育学研究科紀要 (48), 211-223
  • 藤山直樹(2011)『臨床的複眼視に向けて』精神神經學雜誌109(1), 31-35
  • American Psychiatric Association(高橋三郎・大野裕監訳)(2014)『DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル』医学書院

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    • この記事を書いた人

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    臨床心理士指定大学院に在学していました。専攻は臨床心理学で、心理検査やカウンセリング、心理学知識に関する情報発信を行っています。

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