認知再構成法とは、主にカウンセラーがクライアントに対して治療を行う際に用いられる治療法の一つで、ネガティブな思考をポジティブな思考に置き換える治療法です。今回は、この認知再構成法の特徴や事例、この治療法を学びたい人向けにオススメの本をご紹介します。
目次
認知再構成法(コラム法)とは
認知再構成法とは、物事を不安に感じるなどネガティブな感情に関連する認知(自動思考)の内容をより現実に沿った方向へと修正する治療法です。
例えば、あなたが何か物事に取り組んでいたけど結果が思うように出ない際に「失敗してしまうなんて私はダメな奴だ」と心の中で思っているとします。
しかし、あなたは本当にダメな奴なのか、何かいいことを見落としたりしていないか、もっと他の考え方ができないのかと現実のことに内容も近づけることを目標にしている治療法なのです。
ちなみに、「コラム法」と呼ばれることもあります。簡単にいえば、「悪い考えを良い考え方にして気持ち的に楽になる治療法」なので覚えておきましょう。
認知再構成法と認知行動療法との違い
認知再構成法とよく似ている治療法として挙げられるのが、認知行動療法です。なぜなら、認知行動療法も自動思考を現実的なものに変化させて行動を変えていく治療法だからです。
認知再構成が働きかけるのは認知の変容のみですが、認知行動療法は認知と行動の変容をターゲットにしています。
認知再構成法の特徴
認知再構成法の特徴としては、後に紹介する認知再構成法の手続きにも繋がりますが、非機能的思考記録表と呼ばれる用紙の項目に記入してその情報を元にカウンセリングを行うことが挙げられます。
ちなみに、カウンセラーとクライアントが共同で考えながら記入する場合もあるので、どうするかはクライアント次第です。
認知再構成法の手続き
- 強くストレスを感じた状況や場所などを記入する
- その時の自動思考を書き出して、過信度の評価を行う
- その時の感情はどうであったか、不安や怒りなどのネガティブな感情度はどれぐらいかの評価を行う
- どのような思考にすれば良いかを検討して過信度を評価する
- 別の考え方をした場合の感情を評価する
認知再構成法の事例と効果
それでは、ここからは架空の事例に基づいて認知再構成法の効果についてご紹介します。
架空の事例 前編
Aさんは、今年出版会社に入社した新入社員です。そんな職場にも慣れてきたであろう入社から1ヶ月後の時、Aさんの頭を悩ます出来事が訪れたのです。
それは、「業務報告書にミスがあり、上司から指摘を受けたこと」ですが、ミスは誰にもあります。
ですが、Aさんはこの出来事から上司に嫌われたのではないか、自分は何をやってもうまくいかないと悩んでしまっているのです。
架空の事例 中編
その場合は、本当に何をやってもうまくいかないか考えてみることが大切だと思います。
今までの人生を振り返ったときに、あなたが本当に何をやってもうまくいかない事実ばかりならば、何をやってもうまくいかないことは合理的でしょう。
あなたはどんな些細なことでも生まれてからこれまで何かうまくいったことは一つもないのか、他の人の視点に立ってみても何をやってもダメなのかをもう一度改めて考え直してみることをオススメします。
架空の事例 後編
今までの人生で少し達成感を感じたことはありませんか?誰かに褒められた経験はありませんか。
そんなことをAさんに問いかけてみたら、ミスをするのが毎回ではないし、これからはミスしないようにしようとポジティブに捉えることができました。
そのことにより、仕事に対する不安や落ち込み、恐怖が少なくなり、彼は前向きに仕事に取り組めるようになったそうです。
このことから、認知再構成法において考えがポジティブになったことで何事にも前向きに取り組めるようになったりストレスが軽減されたと言えるでしょう。
認知再構成法について学べる本
認知再構成法について更に深く理解したいという方に向けて、おすすめの本をご紹介します。
いやな気分よ さようなら コンパクト版〜自分で学ぶ抑うつ方法〜
この本は、認知再構成法のみならず多種多様な技法が具体的に紹介されています。
特に認知行動療法や認知再構成法に関連する技法を中心的に紹介しているので、更に学びを深めたいという方におすすめです。
認知再構成法で前向きに
認知再構成法は、人生を前向きに生きていくために必要な治療法です。
最近、失敗ばかりでうまくいかなかったとしても今までの人生という長い目で見れば、少しうまくいった経験もあると思います。
そのため、自分に自信がなかったりする人は、認知再構成法を自身で行い、まずは過去を振り返ってみましょう。
例えば、小学校の時テストで良い成績を取って親や先生に褒められたという些細なことでもいいです。
そのような成功体験が一つでもあるならば、あなたは決してダメな奴ではありません。このように、少しでも自分に自信を持つことができれば人生がもっと豊かに感じると思います。
参考文献
末永好葉・山本眞子(2014)ストレングスの認知再構成方が自動思考と抑うつに及ぼす影響,久留米大学心理学論文,No.13,29-37
大野裕(2008)認知再構成法,慶應義塾大学保健管理センター精神経誌,110巻6号495-496