アルバート・バンデューラとは?自己効力感などの功績と経歴について解説

2022-04-08

ここでは、カナダの心理学者アルバート・バンデューラについて解説していきます。はじめに、彼の経歴を簡単にまとめます。次に、自己効力感や社会的学習理論など、彼の功績を紹介します。そして最後に、バンデューラや彼の生み出した概念をより詳しく学べる本を紹介します。

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アルバート・バンデューラとはどのような人物か

バンデューラは、後述する自己効力感などの概念を提唱した、20世紀を代表する心理学者の1人です。

ここでは、そんな彼の経歴などを見ていきましょう。

バンデューラの経歴

アルバート・バンデューラ(Albert Bandura)は、1925年にカナダのアルバータ州で生まれました。1949年に大学を卒業し、1951年にアメリカのアイオワ大学にて修士号を、1952年に同大学で臨床心理学の博士号を取得しました。

その後はカンザス州にあるウィチタ・ガイダンス・センターなどで経験を積み、1953年からはスタンフォード大学で勤務。1954年には同大学の教授になります。

バンデューラは児童の攻撃性に関心を持ち、大人が大きな人形を乱暴に扱う様子を子どもに見せると、子どもがその行動を模倣することを実験で示し、観察学習の存在を明らかにしました(この実験は、”ボボ人形実験”と呼ばれています)。

このように、バンデューラは社会的学習理論や社会的認知理論の発展に大きく貢献しました(観察学習については後述)。

バンデューラは、著作や論文も多く執筆しています。

例えば観察学習については、1971年に”モデリングの心理学”という著書を発表しており、これは彼の代表的な著作となっていますし、自己効力感についても、”自己効力感-行動変容の統一的理論にむけて”という論文を1977年に発表しています。

バンデューラの功績①自己効力感

ここからは、バンデューラの功績を詳しく見ていきましょう。ここでは、代表的な概念・理論として、自己効力感と社会的学習理論、観察学習を取り上げます。

まず、自己効力感についてご紹介します。自己効力感はセルフ・エフィカシーとも呼ばれ、”自分が行為の主体であり、外部からの要請に対応できる確信の程度”と言う意味です。

少し分かりにくいので、具体例をあげて見ていきましょう。

例えば、毎日30分間筋トレをすると、1年後には自分が憧れる肉体を手に入れることが出来るとしましょう。この、”ある行動をすることで、ある結果が期待できること”を、結果期待と言います。

しかしながら、その行動を行うには、そもそもその行動が実際に可能かどうかが問われるでしょう。これは効力期待と呼ばれるもので、要するに、”毎日30分、1年間筋トレを続けられるかどうか”が問われるのです。

そして、結果期待がどれほど高かったとしても、効力期待が低い場合は実行には移せない、と言うことになります。ここで行動に移す気持ちになるためには、効力期待に応えられる自信が大切で、この自信こそが自己効力感のことを指しています。

自己効力感は私たちの勉強や仕事のパフォーマンスにも影響を与える重要な概念です。そして、この自己効力感は育むことが可能です。

ただし、そのためには目標を近いところに設定することが肝要であり、遠い目標だと育ちにくいとされています。先の例だと、筋トレを毎日5分にする、2日に1回にするなど、小さな目標から始めると良い、ということですね。

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補足:自己効力感と自己肯定感の違い

次の社会的学習理論の説明に入る前に、補足として、自己効力感と自己肯定感の違いをまとめておきます。というのも、両者はよく似ていて混同しやすいからです。ここでしっかり区別しておきましょう。

両者の違いは、一言で言えば"効力”か”肯定”かの違いです。

自己効力感は自分に効力を感じている、自分なら出来ると感じているというものです。それに対して自己肯定感は、自分を肯定している、出来るかどうかは分からないけれど、結果がどうなろうと自分は大丈夫と感じていることを意味します。

自己効力感は能力に関する概念、自己肯定感は存在に関する概念というわけですね。これが両者の違いです。

とはいえ、この2つは当然のことながら、どちらも重要です。

例えば、目標を達成する能力はあっても自分で自分を認められなければ、やがて生きづらくなるでしょう。一方で、自分を認めることが出来てもやり遂げる自信がないならば、自分が望む成果を出すことは非常に困難となるでしょう。

ですから、この2つはどちらも高めていくことが大切なのです。

バンデューラの功績②社会的学習理論

次に社会的学習理論について見ていきます。そもそも、学習理論とはどのようなものなのでしょうか。

ここでの学習はいわゆる勉強だけではなく、”経験によって生ずる比較的永続的な行動の変化”を指す概念です。そして、その学習の仕組みを説明する理論が学習理論になります。代表的なものに、レスポンデント条件づけや、オペラント条件づけがあります。

それでは、社会的学習理論はこれらとどのように異なるのでしょうか。どの辺りが”社会的”なのでしょうか。

レスポンデント条件づけやオペラント条件づけにおいては、あくまで本人が直接経験することが前提となっていました。

それに対して社会的学習理論では、モデルとなる他者の行動を観察し、模倣することで学習が成立すると考えます。これがバンデューラの提唱した社会的学習理論であり、人間や類人猿など、限られた高等動物にのみ可能な学習と考えられています。

少し難しい言い方をすれば、学習理論に対人間の認知的な過程を大幅に取り入れたものが、社会的学習理論なのです。そして、この社会的学習理論の中心にあるのが、次項で説明する観察学習(モデリング)になります。

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バンデューラの功績③観察学習(モデリング)

先に述べたように、観察学習(モデリング)とは、直接経験せずとも、モデルとなる他者の観察と模倣によって成立する学習です。言うなれば、”見て真似る”というわけですね。

例えば、モデルとなる他者がある行動を取り、その行動が周囲から褒められたとします。すると、モデル自身がその行動を取る頻度が増える(強化と言う)のはもちろん、それを見ていた周りも、その行動を取る頻度が増えるのです。

このような、モデルに対する強化であっても、観察者の強化としても機能する強化を、”モデルが自分の代理で強化を受けてくれた”という意味から、代理強化と呼びます。

観察学習においては、観察者が直接強化を受けるのではなく、モデルへの代理強化によって学習が成立するという点が、大きな特徴です。そして、私たち人間は幼いうちこそ直接強化が中心ですが、成長するにつれて代理強化が中心になっていくと言われています。

例えば、授業中に挙手・発言をして先生から直接強化を受ける生徒は、小学校高学年くらいから減っていきますね。

この観察学習の考え方は、心理療法にも取り入れられています。例えばバンデューラは、犬を怖がる幼児に対し、同じくらいの年齢の幼児が居ぬと関わり仲良くなっていく姿を観察させ、その行動を模倣させることで治療効果を上げたと報告しています。

他にも、ソーシャルスキルの訓練・獲得や、アサーション教育においても観察学習の考え方が取り入れられています。

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バンデューラについて学べる本

最後に、バンデューラや、あるいはここで紹介した諸概念(自己効力感など)について、より詳しく学べる本を2冊ほどご紹介します。

ゼロからわかる ビジュアル図解 心理学

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本書はバンデューラだけを取り扱うものではありませんが、社会的学習理論や自己効力感について具体的にイメージ(ビジュアル)をしながら学ぶことが出来ます。

また、本書ではレスポンデント条件付けやオペラント条件付けにも触れられているので、社会的学習理論については、これらと比較しながらより理解を深めることが可能でしょう。

子どもの自己効力感を育む本

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WAVE出版
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本文中で、「自己効力感は育むことが可能である」と述べました。本書はそれを子育てのなかで実践していく1冊となっています。子どもに対する具体的な声掛けや、反対に掛けてはいけないNGワードもまとめられており、読んだその日からすぐ使える内容となっています。

以上2冊ほどご紹介しました。他にも、本文中でも触れたバンデューラ自身の著作である”モデリングの心理学”も、大いに読む価値があります。ただしやはり専門性が高い内容となっているので、いわば挑戦校的な位置づけになるでしょう。

バンデューラの功績

本記事では、アルバート・バンデューラについて、彼の経歴や功績を紹介してきました。

バンデューラの観察学習の考え方は、心理療法やソーシャルスキルの獲得にも取り入れられています。ですから、現在心理職として働いている人、あるいは今後心理職を志す人にとって、バンデューラを学ぶことは必要不可欠と言えるでしょう。

また、例えば自己効力感が子育てに活用できることは既に示した通りです。他にも、慢性心不全の高齢男性に対し、自己効力感を高める働きかけをした結果行動変容に繋がったとする研究もあります(松本ら,2019)。

こうしてみていくと、バンデューラを学ぶことは心理に携わる人だけでなく、多くの人にとって意義深いことだと言えるでしょう。

本記事をきっかけにバンデューラやバンデューラの概念について学びを深め、日々の生活や実践に取り入れていって下されば幸いです。

参考文献

  • 子安増生,丹野義彦他(2021).『現代心理学辞典』有斐閣
  • サトウタツヤ・高砂美樹著(2003)『流れを読む心理学史-世界と日本の心理学』有斐閣
  • 松本光寛・高橋さつき・岡美智代(2019)『慢性心不全患者の自己効力感を中心とした行動変容を促す看護』群馬保健学研究,40,42-46.

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    • この記事を書いた人

    もってぃ

     もってぃと申します。公認心理師と臨床心理士の資格を所持しており、心理職として働いています。これまでは、学校や教育センター、児童相談所などで勤務してまいりました。 趣味は読書や将棋、ゲームに音楽鑑賞です。将棋は妙に長続きしていて、勢いでアマチュア四段の免状を取得しました。

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