生物・心理・社会モデルとは?具体例でわかりやすく解説

今回はエンゲルが提唱した「生物・心理・社会モデル」について紹介します。

生物・心理・社会モデルとは、クライエントの問題に対して生物的・心理的・社会的観点から多面的にアセスメントや介入を行おうとする枠組みのことを指します。

生物的側面では医師や看護師、心理的側面では臨床心理士や公認心理師、社会的側面では社会福祉士など、各側面の専門家が協力しながら問題を解決していこうとする多職種連携のモデルとされており、近年でも重要視されています。

ここでは、生物・心理・社会モデルとは何か、関連概念や事例を挙げながら整理していきます。

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生物・心理・社会(Bio-Psycho-Social:BPS)モデルとは

生物・心理・社会(Bio-Psycho-Social:BPS)モデルは、精神科医のエンゲルによって提唱された理念です。

人間は生物的側面・心理的側面・社会的側面が相互に影響して成り立っているとの考えに基づき、疾病や不適応などの問題においても、これら3つの側面の相互作用として現れていると捉えます。

そのため、クライエントの問題をアセスメント・介入するに当たっては、ひとつの側面だけでなく、生物・心理・社会それぞれの側面から総合的に判断することが求められます。

生物・心理・社会モデルは以下の3つの側面から構成されています。

生物的側面

細胞や遺伝、神経、細菌などが問題の要因となります。

医師や看護師、薬剤師などが、手術や薬物治療、リハビリなどのアプローチを行います。

心理的側面

認知や信念、感情、ストレスなどが問題の要因となります。

臨床心理士や公認心理師などによって、心理療法や心理教育などのアプローチを行います。

社会的側面

社会的ネットワーク(家族、地域)や経済状況、人種や文化などが要因となります。

社会福祉士や児童福祉司などが、家族のサポートや福祉サービスの提供など社会福祉的なアプローチを行います。

ICF(国際生活機能分類)

生物・心理・社会モデルに共通する考え方を持つものとして、2001年にWHOに採択された人間の生活機能と障害に関する分類法である「ICF(国際生活機能分類)」が挙げられます。

ICFは、障害を個人の問題と捉える考え方(医学モデル)と、社会の問題と捉える考え方(社会モデル)を統合したものであり、それぞれの側面から統合的に捉えていく点においては、生物・心理・社会モデルと共通しています。

なお、ICFは、「健康状態」、3つの「生活機能(①心身機能・身体構造、②活動、③参加)」、2つの「背景因子(①環境因子、②個人因子)」で構成されており、それぞれの相互作用を重視しています。

そして、障害=生活機能に支障が生じた状態との考えに基づき、生活全体を捉えた広い視点から評価・アプローチしようとするなど生物・心理・社会モデルの考え方を含んでいます。

生物医学モデルから生物・心理・社会モデルへの変遷

生物・心理・社会モデルが提唱される以前は、「生物医学モデル」と呼ばれる、疾病に対して生物学的要因のみ考慮し、疾病を診断し、身体を治療するといった考え方でした。

しかし、痛み(疼痛)に対するケア、ストレスによる病気、生活習慣病など問題が多様化する中で、生物医学モデル(生物学的要因のみ)では十分に説明ができない現象も生じてきたことを背景に、生物・心理・社会モデルが提唱されたと言われています。

現在では、心理的・社会的ストレスも健康や病気に関与すると考えられており、生物・心理・社会モデルが、生物医学モデルに替わって広く受け入れられるようになっています。

生物・心理・社会モデルの事例

生物・心理・社会モデルに基づくアセスメント及び介入について、具体例を挙げて整理していきます。

うつ病

うつ病のアセスメントや介入を例に挙げます。まず、生物的側面からは、神経伝達物質がうまく機能していないと考えられ、抗うつ薬などの薬物療法が検討されます。

一方、心理的側面からは、うつ病の引き金になりやすいとされる否定的な認知や信念が影響している可能性も考えられます。そのため、治療において認知行動療法などの心理療法を行うことも検討します。

また、社会的側面としては、家族や職場など対人関係におけるストレスが高いことや、周囲にサポートとなる存在が乏しいことなどが考えられます。そうした点においては、環境整備などによる社会的アプローチが有効になります。

非行

非行や反社会行為に至る過程は様々ですが、生物・心理・社会モデルに置き換えて考えると以下のような要因や改善更生に向けてのサポートが考えられます。

まず、生物的側面としては、アルコールや薬物などの物質乱用による影響が挙げられます。その場合は、専門機関で治療を受けることが優先されます。

心理的側面を見ると、養育者などに大切にされた経験の乏しさ、否定的感情体験などが考えられます。アプローチとしては、心理教育やカウンセリングなど心理的サポートを行うことも検討します。

社会的側面としては、家庭的要因(貧困や虐待、家族の機能不全)や地域社会の要因(不良分化が根付いている)が挙げられます。そうした点においては、生活指導や家族など対象者を支える人への支援なども有効となります。

コラボレーションの重要性

このように、生物・心理・社会モデルのフレームで問題を整理していくと、様々な要因が絡み合って生じる場合も多いことが分かります。

そのため、実際にクライエントの問題解決を1人の専門家で行うことは簡単なことではありません。また、始めは1つの側面だけでも、次第に他の側面に影響が出てくることも十分に考えられます。

そして、医師や看護師、心理士、社会福祉士・精神保健福祉士など様々な専門家が役割分担をしながら、お互いの専門性を尊重しながらチームとして、コラボレーションしていく事が重要となります。

コラボレーション

立場や職種が異なる人や機関が、共通の目的を達成するために対等な立場で協力する体制のことを指します。

複数の専門家がそれぞれの専門性を活かし、協働しながら問題解決にあたることで、相乗効果が生まれ、クライエントにより利益をもたらすことが期待されます。

生物・心理・社会モデルについて学べる本

最後に、生物・心理・社会モデルについて学ぶ上で参考になる書籍を紹介します。

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生物・心理・社会モデルについて詳しく学ぶことができます。理論編・技法編・応用編で構成されており、1冊通して読むことで生物・心理・社会モデルの理解が深まります。

生物・心理・社会モデルなど他職種連携におけるアセスメントについて学ぶことができます。アセスメントのためのフォーマットをはじめ、実務において参考になることが多い内容となっています。

生物・心理・社会モデルは他職種連携を実践する基盤

近年、国家資格となった公認心理師においても、他の専門家と協働が求められる旨が公認心理師法に定められているなど、多職種連携の実践は重要とされています。

多職種連携を実践するに当たっては、生物・心理・社会モデルに基づいた考え方が非常に役立ちます。

そして、自らの専門性を発揮することに加えて、医学についての知識を得たり、福祉サービスを調べたりするなど、お互いの役割や専門性の違いを理解し、より有効なサポートにつなげることが肝要です。

参考文献

  • 下山晴彦 監修(2012)『面白いほどよくわかる!臨床心理学』西東社
  • 近藤直司 著(2015)『医療・保健・福祉・心理専門職のためのアセスメント技術を高めるハンドブック』明石書店
  • 飯島慶郎 著(2015)『全人的医療とは何か: 対人援助のための「生物・心理・社会モデル」』Kindle版

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    • この記事を書いた人

    blue_horizon

    民間企業在職中に心理カウンセラーを志し、心理学を学び始める。臨床心理士指定大学院卒業後は、司法及び産業領域の心理職として稼働。公認心理師・臨床心理士。

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