ポジティブ心理学という言葉を聞いた事があるでしょうか?ポジティブ思考という言葉があるように、常に前向きでいられるための方法を科学的に探求する心理学の分野です。今回は、ウェルビーイング、レジリエンスなどとも関係の深いポジティブ心理学を学びたい方におすすめの本をご紹介していきます。
ポジティブ心理学とは
まずは、ポジティブ心理学とは何なのかをご説明します。
ポジティブ心理学の誕生
ポジティブ心理学の命名者が、元は学習性無力感や抑うつを専門とする教授であったと聞くと、意外ではないでしょうか。
マーティン・セリグマンは5歳の娘とのある体験をきっかけに、これまでの心理学が人間の不健康な部分にばかり目をむけてきた事に気づきます。そして1998年に、不健康な人を健康にするだけでなく、健康な人がさらに幸せで充実した人生を送るための心理学を提唱しました。
幸せのための5つの条件
ポジティブ心理学は、心の病とはされない人が、どうしたらより幸福になれるのかを科学的に実証する心理学です。決してネガティブな心理を否定するものではありません。
ポジティブ心理学の中心的な考え方は、幸せのための5つの条件(PERMA)です。
・Positive Emotion(ポジティブ感情);100%である必要はありませんが、多くのポジティブ感情を持つ事で、人生をよりよくする事ができます。
・Engagement(エンゲージメント);他の事を忘れて、目の前の活動に没頭する事です。フローも同じ概念です。フローをより多く体験する事が幸せに繋がります。
・Relationships(関係性);自分だけで孤立せず、周囲の人達と繋がりを持つ事が幸せに生きるために必要です。
・Meaning(意味・意義);自分が何のために生きているのかという生きる目的を持っている人ほど、逆境に強くより幸せを感じる事ができます。
・Achievement(達成);何かを成し遂げた、成功したという感覚を持てる事が幸せに繋がります。
ポジティブ心理学を学びたい人におすすめの本
ポジティブ心理学を学びたい方におすすめの本をご紹介していきましょう。
ウェルビーイングがテーマ「ポジティブ心理学の挑戦 “幸福“から“持続的幸福“へ」
ポジティブ心理学の名付け親であるマーティン・セリグマンの10年ぶりの新刊です。ポジティブ心理学の本当の意味や価値を伝えようとする著者の意気込みが伝わってくる本です。ポジティブ心理学は、個人的・一時的なポジティブな感情だけに捉われない、もっと広く深い概念です。
ポジティブ心理学のテーマであるウェルビーイングとは何かに始まり、学校でのウェルビーイング、トラウマを成長に変える、ポジティブヘルス・ウェルビーイングの政治学・経済学と多岐に渡ります。
巻末には強みテストも載っています。
「この本は、読者の皆さんがずっと続く豊かな幸せを手に入れるために役立つ1冊だ。」(本書序文より)
ポジティブ心理学の創始者による入門書「ポジティブ心理学入門ー「よい生き方」を科学的に考える方法」
マーティン・セリグマンらと共にポジティブ心理学運営委員会のメンバーである著者によるポジティブ心理学の入門書です。
ポジティブ心理学を本当に理解するためには、実際に自分で試してみる事が必要だと言います。そして本書には、そのためのエクササイズが各章の終わりに載っています。
例やエクササイズを交えながら、ポジティブ心理学を伝えようとする本書は、講義を受けているように読む事ができます。ポジティブ心理学についての誤解を解き、実践的・体験的にポジティブ心理学を学べる1冊です。
ポジティブ心理学をウェルビーイングの実現に活かす「実践 ポジティブ心理学 幸せのサイエンス」
ポジティブ心理学はアメリカで生まれた心理学であるため、日本人にはしっくりこない面もあるかもしれません。本書は、不安を抱きやすいという日本人の特性の長所も認めつつ、不安になりやすい日本人にこそポジティブ心理学が必要だと主張します。
著者は、ウェルビーイング(心身共に充実したより良い状態)こそがポジティブ心理学の目ざすべき姿だといいます。また、ウェルビーイングの実現には良いストレスも大切だとしています。
第4章「日本人のためのポジティブ心理学」では、幸せの4つの因子として、「やってみよう!」因子(自己実現と成長の因子)、「ありがとう!」因子(つながりと感謝の因子)、「何とかなる!」因子(前向きと楽観の因子)、「ありのままに!」因子(独立とあなたらしさの因子)を挙げています。
手に取りやすい新書である事、日本人による分かりやすい文章で書かれている事などから、初心者もポジティブ心理学に親しみやすい1冊です。
全世界で4000万部のベストセラー「13歳から分かる!7つの習慣 自分を変えるレッスン」
原書である「7つの習慣」は、スティーブン・R・コヴィーによる著作で40カ国語に翻訳され、4000万部を記録したビジネス書です。本当の成功や幸せを手に入れ、充実した人生を生きるために身につけるべき7つの習慣について記載された本です。
著者は心理学者ではなくビジネス思想家であり、従ってポジティブ心理学を謳う本ではありません。
けれども第1の習慣である「主体的である」は、ポジティブ心理学の「エンゲージメント」と似ています。
また、第2の習慣である「終わりを思い描くことから始める」は、ポジティブ心理学である「達成感」を得たり「意味・意義」を理解する事にも通じると考えられます。
さらに、第5の習慣である「まず理解に徹し、そして理解される」は、ポジティブ心理学の「関係性」にも繋がりそうです。
本書はカラフルなイラストとストーリー形式で、自分が主人公になったように、主体的で幸せな人生を歩んで行く方法を学んで行く事ができます。ポジティブ心理学とビジネスを繋げる1冊です。
ハッピーな子育て「ストレングス・スイッチ 子どもの『強み』を伸ばすポジティブ心理学」
従来の心理学が、人のネガティブな側面の治療に着目しやすかったのと同じく、子育ても子どもの弱点の克服に着目しやすいものです。
国際ポジティブ心理学会会長でもあり母親でもある著者は、子育てにおいてポジティブ心理学を実践し、その効果を実証しています。
子どもの強みを見つけ、それを伸ばす子育てを通して、親も子も成長しハッピーになる事ができるでしょう。
鬼滅の刃的ウェルビーイングの作り方「『鬼滅の刃に学ぶ』絶望から立ち上がるための27の言葉」
ポジティブ心理学の主要概念の1つにレジリエンスがあります。レジリエンスは回復力で、健康な状態が損なわれた時に、健康な状態に戻ろうとする力です。
レジリエンスを高めるには、ネガティブ感情の悪循環から脱出する、「やればできる」と信じる自己効力感を身につけるなどの方法がありますが、どれもポジティブ心理学のテーマです。
本書は、「鬼滅の刃」の登場人物の高いレジリエンスに着目し、彼らの言葉からレジリエンスを高めるヒントを得ようとするものです。
「幸せかどうかは自分で決める。大切なのは“今“なんだよ」<by 禰豆子>
レジリエンスの意味と鍛え方|「鬼滅の刃」を例にビジネスや教育での重要性を解説
レジリエンスという言葉を聞いたことがあるでしょうか? 私達が強く生きていくために必要な回復力を意味するレジリエンスについて、その内容を学んでいきましょう。また、レジリエンスを高めるためのトレーニングか ...
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幸せな生き方について学びたい人におすすめの本
次に、幸せな生き方について学びたい方におすすめの本をご紹介します。
ハーバード大学で人気NO.1の授業「ハーバードの人生を変える授業」
著者が2002年からハーバード大学で始めたポジティブ心理学の講義は、その後ハーバード大学で人気NO1の授業となりました。本書では、その講義の要点が52講にまとめられています。
「感謝する」から始まる本書は、著者の講義同様、理論を実際の行動に移すことによって身につけていく事ができます。文章は分かりやすく書かれていますので、読むだけならば簡単でしょう。
しかし、本当にポジティブ心理学を身につけ、幸せに近づく変化を起こしたいと思う方は、紙とペンを用意して本書を開かれる事をおすすめします。
Googleなど世界的企業で採用された手法「幸福優位7つの法則 仕事も人生も充実させるハーバード式最新成功理論」
幸せを手に入れるためには、努力や犠牲が必要だという考え方を覆す本です。幸せそうな人を見て、「あの人は成功しているから幸せなのだ」と思うかもしれませんが、「幸せだから成功するのだ」と著者は言います。
手の届かない遠い幸せをいきなり追い求めるのではなく、今自分の手に届く幸せを積み重ねていくための方法が書かれています。
心理学✖️幸福学で幸せを作る「99.9%は幸せの素人」
日々を忙しく過ごしていると、幸せになるために頑張っているはずなのに、なぜか幸せから遠のいてしまう事もあるのではないでしょうか。本書は、最先端の心理学、脳科学、幸福学に基づいて読みやすく実践しやすい内容となっています。
心理学の知識などがなくても、幸せに近づく行動を気軽に実践していける1冊です。
変化そのものを楽しむ「ポジティブ・チェンジ」
幸せになるために辛い努力をするのではなく、変化のプロセス自体をハッピーに体感する事を目的とした本です。5週間という短期間で人生を変えるために、時間・言葉・友人・モノ・環境・外見・食事という7つのスイッチを使います。
試練の時こそ幸福に目を向ける
今回は、ポジティブ心理学の本を紹介してきました。手に取ってみたいと思う本に出会えましたか?
コロナウィルスにより、私達はこれまでの「当たり前」を大きく変えなければなりませんでした。人と繋がる場、学ぶ場、働く場という大切な居場所を奪われ、試練を乗り越えなければ、という強い想いで闘っている方々も多いでしょう。
こういう時にこそ、ポジティブ心理学は私達を救ってくれるものとなるのではないでしょうか。失ったものや変えられないものに目を向けるのではなく、人間の持つ強みや健康、よりよく生きようとする面に目を向ける時です。
ポジティブ心理学の素晴らしい所は、それを実践した人の周りの人にも良い影響が伝播していく事です。あなたからあなたの周りの人達へ、ウェルビーイングの波が伝わっていったら素敵ですね。