マインドフルネスとは?意味や瞑想のやり方・実践例・効果を解説

マインドフルネスとは、「今、ここ」という現実を感じられている状態を指し、そうした状態を作り出すトレーニングを意味することもあります。今回はマインドフルネスの効果や具体例、実践方法について見ていきましょう。また、マインドフルネスに関する心理学的研究や学会、研修などについても紹介しています。

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マインドフルネスとは

まずは、マインドフルネスとはどのようなものなのか、その意味を解説します。

マインドフルネスの意味

マインドフルネスとは、過去でも未来でもなく、「今、ここ」という現実を感じられている状態です。いわゆる、「上の空」とは逆の状態です。

また、そのような心の状態を作り出すためのトレーニングの事を指す場合もあります。

マインドフルネスの反対・マインドレスネス

マインドフルネスの反対の状態を、マインドレスネスと言います。人は、なぜマインドレスネスの状態になりやすいのでしょうか。

「今、ここ」だけの世界に生きているのは、赤ちゃんです。つまり、「今、ここ」だけの世界は無防備で、他者とのコミュニケーションも限られます。

つまり、人は、知恵を身につけ、身を守ったり他者とコミュニケーションを図る想像力を身につけるのと引き換えに、マインドフルネスを手放していくのだと考えられます。

マインドフルネスと自己一致

心理カウンセリングや傾聴の勉強をされた事がある方は、「自己一致」という言葉をご存知でしょう。自己一致は、傾聴に必要なカウンセラーの態度の1つで、自分の感じている事や考えている事に気づいている事です。

マインドフルネスも、自己一致も、「今、ここ」に気づいているという意味で共通しています。

マインドフルネスは主に自分自身のために作り出す状態であるのに対し、傾聴における自己一致はクライエントのために自分の中に場所を作るというイメージでしょうか。

マインドフルネスと「十分に機能している人間」

来談者中心療法の創始者であるカール・ロジャーズは、心理学的適応は個人が「十分に機能している」事であると述べています。

この、「十分に機能している個人」についてのロジャーズの言葉が、マインドフルネスの理解に役立つと思うので、引用します。

自分の内面で展開している経験に開かれていて、それを自己概念に取り入れることができることです。

もしも私が憎悪を感じるなら、私が人を憎悪している事実を取り入れることができるわけです。愛していると感じるなら、感じているそのことを認識できるわけです。

私が恐怖しているときも、同じ。だから有機体の内面で進行しているすべてに開かれているときに、その人は十分に機能している人です。

(カール R. ロジャーズ&デイビッド E. ラッセル,2006)

マインドフルネスの効果

マインドフルネスの意味をご紹介しましたが、実際にはどのような効果があるのでしょうか。

吉田(2017)によると、マインドフルネスを行う事によって、次のような効果が得られるとされています。

  1. ストレスが減る
  2. 集中力・想像力・直感力が高まる
  3. 健康になる
  4. 痛みや不安が和らぐ
  5. 睡眠の質が高まる
  6. 幸せを感じやすくなる
  7. 気持ちが前向きになる
  8. 今の自分に自信が持てる
  9. 姿勢がきれいになる
  10. 人間関係が良くなる

カウンセリングを勉強された方は、気付かれたでしょうか?これらは「傾聴」による効果と、かなり近いと思いませんか?

つまり、マインドフルネスは、誰かに傾聴をしてもらうのと似た効果を得る事ができるのです。マインドフルネスは、自分で自分を傾聴するようなもの、と考えられるのではないでしょうか。

※傾聴については以下の記事で詳しく解説しています。

傾聴とは?その意味やロジャーズの傾聴の3条件、傾聴力の高め方などを学ぶ

今回は、傾聴について解説します。傾聴の意味や目的を理解し、ロジャーズによる傾聴の3条件についても学びましょう。また、日常生活における傾聴の実践事例や望ましい態度についても見ていきます。 このサイトは心 ...

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マインドフルネスのやり方

マインドフルネスのやり方を見てみましょう。

マインドフルネスの実践方法

熊野(2012)によれば、マインドフルネスの実践方法は、次の2つから構成されています。

  1.  呼吸に伴う身体感覚、五感と自動思考、感情などに「今、ここ」で注意を向けること
  2.  注意を向ける事象に対して、否定しようとせずに、そのままにしておくこと

マインドフルネス瞑想

マインドフルネス瞑想は、呼吸に意識を向ける事で、注意力を養うトレーニングです(方喰,2017)。

マインドフルネス瞑想は、4つのプロセスからなっています。

マインドフルネス瞑想の流れ

  •  呼吸に注意を向ける
  • → 注意がそれる。雑念が湧く
  • → 注意がそれたことに気づく
  • → 雑念を手放す
  • → ①に戻る

自律訓練法と違い、マインドフルネス瞑想では決まった型がないため、いつでも気軽に実践する事ができます。

呼吸以外を使うマインドフルネス

マインドフルネス瞑想には決まった型がないので、呼吸以外でも、あなたの意識しやすい感覚を使う事ができます。

【視覚を利用した方法】

例えば、視覚。

今、あなたの目は何を見ていますか?そう意識すると、この記事の文字を見ているという感覚を取り戻せるのではないでしょうか。

目の奥の筋肉や、目の渇きや疲れを意識できる方もいらっしゃるかもしれません。

【味覚を利用した方法】

味覚も使う事ができます。忙しくて慌ただしく昼食を取ったり、夜ニュースを見ながら夕飯を食べている方もいらっしゃるかもしれません。

初めの1口でも良いので、味覚だけに意識を向けてみます。ご飯はどんな味がしますか?香りはどうでしょう?ゆっくり噛んでいると、顎や下の動きにも意識が向くかもしれません。

【歩く時の感覚を利用した方法】

マインドフルネスなんかに使う時間はない!という方は、歩く時の感覚を使う事もできます。

足が地面に着く感覚、体全体がバランスを取ろうとしている感覚、荷物を持っている手の感覚など、今の体の感覚に意識を向けるのです。

このように、気づいた時に「今、ここ」に意識を向ける練習をする事で、マインドフルネスが日常的に使えるようになっていきます。

マインドフルネスに関する心理学的研究

マインドフルネスは本当に効果があるのでしょうか?ここからはマインドフルネスに関する心理学的研究を見てみましょう。

マインドフルネストレーニングと抑うつ傾向

勝倉ら(2009)は、マインドフルネストレーニングの中核的技法である座禅が、大うつ病性障害(Major Depressive Disorder:MDD)において、抑うつ傾向を改善する効果があるかどうかを検討しています。

方法

高い抑うつ傾向を頻繁に経験する大学生に、2週間自宅で8回、参加者合同で2回の座禅訓練を行いました。

座禅訓練の気分に及ぼす即時的な効果を調べるために、Depression and Anxiety Mood Scale(DAMS)が用いられました。DMASは、不安な気分、楽しい気分、沈んだ気分を測る指標です。

統制群(マインドフルネストレーニングを行わない群)は、DAMSへの回答が課題とされました。

指標

DAMS以外に、各種の認知的スキル指標及び認知スタイル指標を用いました。

これらの指標は、

  1. 思考や感情への巻き込まれやすさ
  2. 身体感覚への気づきの程度
  3. 自己受容の程度
  4. ストレスフルな状況下での認知スタイル
  5. 抑うつに対する対処スタイル

を測るものです。

結果

①マインドフルネスの技法である座禅訓練により、抑うつ傾向と否定的考え込みが改善されました。また、その効果は6ヶ月後においても維持されていました。

②メタ認知的気づき(思考・感情・身体感覚への気づき)が改善されており、これが抑うつ傾向の低減要因となっている事が示唆されました。

③座禅訓練による即時的な効果は見られませんでした。

考察

研究の結果から、マインドフルネスは認知的スキルの獲得に有効であり、そのスキルの獲得が抑うつの再発予防に効果を発揮する可能性があります。

また、座禅は一時的リラクセーション効果よりも、継続的な練習によって抑うつに関連下認知スタイルの改善に役立つ事が示唆されました。

これらの効果は、呼吸や姿勢への意識→思考・感情・身体感覚への気づき→呼吸や姿勢への意識、という繰り返しに、認知療法的要素が含まれているためだと考えられます。

マインドフルネスの実践例

マインドフルネスへの注目は近年高まっており、ビジネスの場で取り入れられている場合もあります。ここでは企業での実践例を見てみましょう。

マインドフルネスを社員研修に取り入れたGoogle

Google社では、マインドフルネスの能力開発プログラムとして、SIY(Search Inside Yourself)を開発しました。SIYでは、次のようなメリットが得られるとされています。

  1.  ストレスが軽減され、仕事の生産性が上がる。
  2. 感情のコントロールができるようになり、感情的な判断ミスをしなくなる。
  3. 思いやりの気持ちが育ち、チームワークが向上する。
  4. アイデアが湧く脳になり、想像力が高まる。

マインドフルネスの学会・協会、研修など

ここからはマインドフルネスについて更に深く学びたいという方に向けて、学会・協会や研修会などをご紹介します。

マインドフルネスの学会・協会

マインドフルネスに関する学会としては、日本マインドフルネス学会があります。

マインドフルネスに関する協会としては、日本マインドフルネス普及協会があります。

マインドフルネスの研修会等

日本マインドフルネス普及協会では、様々なセミナーや研修会が実施されています。

また、通信でマインドフルネスを学びたい方には、以下のものがあります。

心とカラダを整える!はじめてのマインドフルネス〜リラクゼーションCDつき

産業能率大学総合研究所の通信研修です。

マインドフルネス実践講座

資格のキャリカレで学べる通信講座です。

マインドフルネスについて学べる本

マインドフルネスについて学べる本をご紹介します。

今の自分に合ったマインドフルネス瞑想と出会える「3分間マインドフルネス 自分をアップデートする28の習慣」

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学研プラス
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どんなマインドレスネスの状態からでも、マインドフルネスに切り替えられるためには、マインドフルネス瞑想を自由に使いこなせると便利です。

本書では、様々なマインドフルネス瞑想のパターンが紹介されています。

フランスで30万部以上のベストセラー「はじめてのマインドフルネス 26枚の名画に学ぶ幸せに生きる方法」

マインドフルネスをいざ実践してみようとしても、自分の呼吸や体の感覚に意識を向けるというのがすぐにはできない場合もあるでしょう。文字だけの本の場合、一旦理解してから本を閉じる、自分1人で本の内容をやって見る事になります。

一方、この本では、絵画を使ってマインドフルネスを学べるようになっています。

初心者にとっては、マインドフルネスの説明に合った絵画を眺めることが「今、ここ」の感覚に気づく手助けになります。

8週間の瞑想プログラム「幸せになりたい女性のためのマインドフルネス 自分のらしく輝く8週間のプログラム」

忙しさに追われ、マインドレスになりがちなのは、男女とも変わりません。

けれども男性に比べ、社会での役割が急激に増えてきた女性は、キャリアウーマン、恋人、妻、母、娘、友人、主婦、介護者、調理人、等々と多忙さも複雑になりがちです。

女性特有の体調の変化も、マインドレスを招きがちです。

そのような女性のための、8週間のマインドフルネスプログラムが書かれているのが本書です。8週間のプログラムは以下の通りです。

  • 身体を落ち着かせる
  • 身体を受け入れる
  • 心を静める
  • 自分の心を思いやる
  • 自分の良いところを見つける
  • 他者を愛する
  • 流れつづける・愛しつづける
  • ストレスよさようなら

巻頭にあるQRコードから、音声のダウンロードも可能です。

マインドフルネスがもたらすもの

「あなたは、今を生きていますか?」と聞かれて、多くの人は当たり前だろうと思うのではないでしょうか。私たちは、今ここにいるわけですから、当然今を生きているのだと思っています。

けれども、意識が向いているのは、過去であったり、未来であったりする事がどれほど多い事でしょう。

「あんな事言わなければよかった」「希望の部署に異動できるだろうか」「緊急事態宣言が延長されたらどうしよう」などなど。

マインドフルネスは、心身の不調は心が「今、ここ」を離れてしまう事から生じると考え、心を「今、ここ」に呼び戻そうとするものです。

実践してみた人だけが新しい自分と出会う事ができる。それがマインドフルネスです。

傾聴とは?その意味やロジャーズの傾聴の3条件、傾聴力の高め方などを学ぶ

今回は、傾聴について解説します。傾聴の意味や目的を理解し、ロジャーズによる傾聴の3条件についても学びましょう。また、日常生活における傾聴の実践事例や望ましい態度についても見ていきます。 このサイトは心 ...

続きを見る

参考文献

カール R. ロジャーズ&デイビッド E. ラッセル 畠瀬直子(訳)(2006) カール・ロジャーズ 静かなる革命

クリストフ・アンドレ 坂田雪子(監訳)(2015) はじめてのマインドフルネス 26枚の名画に学ぶ幸せに生きる方法 紀伊國屋書店

方喰正彰(2017) マンガでわかるグーグルのマインドフルネス革命 株式会社サンガ

勝倉りえこ・伊藤善徳・根建金男・金築優(2009) マインドフルネストレーニングが大学生の抑うつ傾向に及ぼす効果ーメタ認知的気づきによる媒介効果の検討ー 行動療法研究,35(1),41-52

熊野宏昭(2012) マインドフルネスはなぜ効果をもつのか(押さえておきたい!心身医学の臨床の知45)心身医学 52(11),1047-1052

吉田昌生(2017) 3分間マインドフルネス 学研プラス

ヴィディヤマラ・バーチ/クレア・アーヴィン 佐藤充洋(監訳)(2019) 幸せになりたい女性のためのマインドフルネス 自分のらしく輝く8週間のプログラム 創元社

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    • この記事を書いた人

    こころ

     臨床心理学・実験心理学等を学んだ後、心理カウンセラーとして勤務。現在はライターとして活動中。

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