プライミング効果とは、最初に受けた情報によって後の行動が無意識的に影響されることです。今回は、このプライミング効果とは何かやそれに関する心理学実験、実生活における応用例、プライミング効果を学べる本をご紹介します。
目次
プライミング効果とは?
まずはプライミング効果の意味や定義について解説します。
実はプライミング効果を利用している、皆さんも小学生のころ経験したであろう遊びを具体例としてご紹介します。また、直接プライミングと間接プライミングの違いについても触れていきます。
プライミング効果の意味と定義
プライミング効果とは、事前に見たり聞いたりしたことが後の行動に影響される効果のことです。
プライミング効果は、後ほど詳しく紹介しますが、様々な企業が掲載する広告に用いられています。
例えば、テレビやYou Tubeを見ているとよく番組CMの合間にCMが流れることを目にした経験があると思います。番組内でとあるゲームを紹介していてその直後にCMが流れると買いたくなってしまうのが人間の心理です。
その心理を利用したマーケティング術が、プライミング効果なのです。
ここまでプライミング効果がどういったものなのか意味や定義について紹介してきましたが、もっと分かりやすく紹介するために具体例を挙げてプライミング効果について考えてみます。
プライミング効果の具体例
プライミング効果を用いた遊びをご紹介します。
その名も「10回ゲーム」です。皆さんも一度は、やったことがある人が多いと思います。
例えば
- Aさん「ピザって10回言ってみて!」
- Bさん「ピザピザピザピザピザ…」
- Aさん「じゃあこれは?」と言い、ひじを指します
- Bさん「ひざ」
- Aさん「正解は、ひじです。」
という遊びです。10回同じ言葉を連続して相手に言わせることによって普段間違えるはずもない言葉を間違えてしまうことから「これは、面白い!」と一時期子供たちの間で大流行していました。
このゲームでは、事前にとある情報を与えておいたことが後の発言に影響されています。
直接プライミングと間接プライミング
プライミング効果には、直接プライミングと間接プライミングの2種類があります。
- 直接プライミング…先行刺激と同じ刺激が後の後続刺激にも呈示されること
- 間接プライミング…先行刺激と同じ刺激ではなく、関連性が高い刺激が後に後続刺激として呈示されること
例えば、直接プライミングの場合は、「10回ゲーム」で最初にいちごと10回言わせたら最後にも影響されてイチゴと間違ってしまいます。
一方、間接プライミングの場合は、「赤いもの食べ物と言えば?」と質問された時にイチゴやトマトと関連するものを出してしまいます。
プライミング効果に関する心理学実験・論文
プライミング効果に関する心理学実験は、今までいくつも行われてきました。その中でも興味深く、日常生活にも役立つような心理学実験・論文を紹介していきます。
異なる性質でプライミングの影響はあるのか?
まず最初の実験として、ペットボトル飲料に対する異なるプライミングの影響の違いについてご紹介します。
この研究では、ペットボトル飲料を対象にして「生理的欲求」と「デザイン性」の異なる性質にプライミングを行った場合、商品の魅力度にどのような変化があるのかを検討しています。
実験では誰もが飲んだことあるだろうジュースのカラー画像を7枚用意して、プライミングの操作を行っています。実験参加者は、画像の魅力度を生理的欲求(5問)、デザイン性(9問)について5段階で評価しました。
実験の結果、デザイン性に関する項目のほうが、生理的欲求より全体的な平均評価が高くなりました。
この実験から、生理的欲求のプライミングを行うことよりもパッケージつまりは、デザイン性に関するプライミングを行ったほうが魅力度が上がるのではないかということが分かりました。
連想と評価の影響はあるのか?
次にご紹介する実験では、連想が評価にどのような影響を及ぼすのかを明らかにしています。
この実験は、メディエイテッドプライミング効果(連続的な連想の関係を持つ単語の提示が後の処理に影響されること)と評価の関連性を測定するために行われました。
まず、実験参加者には、画面に提示された単語に対する好意度を示してもらいます。そして、連想関係にある単語を連続的に提示した場合と、全く関係ない単語を連続的に提示した場合とでは、評価値の工程に差があるのかを調べました。
実験の結果、連想関係があるものを連続的にみることによって、その対象への好意度が上昇することが分かりました。
しかしこの結果は、繰り返し接触することでその物事に対する好意度が上昇する「単純接触効果」が影響しているのではないかとも考えられます。
またこの研究では、連想関係にない単語を評価するよりも、連想関係にある単語を評価するほうが簡単です。人はより簡単に処理できるものを好むということが過去の研究からわかっているので、このことが好意度につながったのではないかとも考えられます。
実生活におけるプライミング効果の応用例
先ほども少し紹介しましたが、ここではさらに、実生活におけるプライミング効果の応用例を3種類ご紹介します。
1つ目は、皆さんがよく目にするであろうメディア広告や企業のマーケティングに、プライミング効果がどのように応用されているのかということです。
2つ目はプライミング効果を活用した勉強方法、3つ目はプライミング効果を用いて恋愛成就させる方法を紹介します。
メディア広告・マーケティング
プライミング効果には、メディア広告やマーケティングにも活用されています。メディア広告については先ほど触れましたが、メディア広告以外のマーケティング術にも活用されているのです。
皆さんは人生で何回かアンケート調査に協力した経験があると思いますが、アンケート調査もマーケティングの一つです。
例えば、〇〇を購入する予定はありますか?といった質問項目に回答することで、その商品の購入の促進に結び付けることができるのです。
CMなど直接商品を宣伝するマーケティング術に嫌悪感を感じる消費者に対しても、あまり抵抗を感じさせず商品のPRをすることができます。
勉強
ここまでプライミング効果について読んできたあなたは、「プライミング効果が勉強に生かせるの?」と疑問に思うかもしれません。
実は、プライミング効果を用いて集中力を挙げることができます。その方法は、過去に勉強した場所の中で最も集中できた場所や時間帯を紙に書きだす、というものです。
同じ条件の場所・時間帯で勉強に取り組むことによって、「この条件では自分は集中できる」というプライミング効果の自己暗示にかかり、より集中をした質の良い勉強を行えます。
ぜひ、このプライミング効果を生かした勉強方法を試してみてください。
恋愛
皆さんは、気になる異性の方とデートをする時はどこに行きますか?
カラオケ・ショッピング・カフェ巡りや水族館など、色々デートスポットとして挙げられるのはたくさんありますよね。その中でも、デートしているときにあえて恋愛に関する映画を見に行くカップルも多いのではないでしょうか?
実は、この行動はプライミング効果を用いた恋愛術といえます。
恋愛映画を気になる異性と一緒に見ることで、相手に「恋愛ってこんなにいいものなんだ」ということを知ってもらい(先行刺激)、そのデート終わりにあえて告白することによって成功の確率が上がります。
プライミング効果について学べる本
プライミング効果について学べる本を3冊ほどご紹介します。
ファスト&スロー あなたの意志はどのように決まるか?
著者は行動経済学の父のような存在として知られているダニエル・カーネマンです。この本を読めば、プライミング効果を含む行動経済学について幅広く理解できます。
上巻と下巻があるのですが、下巻はやや内容が難しくなるためプライミング効果や行動経済学についてあまり詳しくない人は上巻のみ読み進めましょう。
プライミング効果を手がかりとした知識検索に関連する研究
プライミング効果に関する研究を書籍にまとめたものです。この見出しで紹介している他の書籍は2冊とも行動経済学にまつわる書籍ですので、プライミング効果のみを中心的に学びたいのであればこの本が一番オススメです。
論文よりもより読みやすいように工夫されているので、ぜひ読んでみてください。
行動経済まんが ヘンテコノミクス
この本は、行動経済学やプライミング効果について初めて知った人にオススメです。文字だらけのいかにも難しそうな本では全然理解できず読む気が失せるという人にオススメです。
この漫画を読むだけで行動経済学やプライミング効果の基礎に関する部分は学べるので、少しでも興味を持った人はぜひ、読んでみてください。
日常でも生かすことができるプライミング効果
プライミング効果を学ぶ前までは、難しい心理学用語の一つだと感じていた方もいたかもしれませんが、プライミング効果を学ぶとより日常生活が豊かになることを理解していただけましたか?
「この商品を買おうとしているのも、もしかしたらプライミング効果にかかっているのかもしれない…」と考えて日常生活を送ると疑心暗鬼になってしまうかもしれませんが、面白い発見が多いことでしょう。
例えば、恋愛に関して用いることができる心理学をすべて活かすことができたら、学校一美人である女子と付き合えるかもしれません。また、勉強に関して用いる心理学をすべて活かすことができたら、ワンランク上の大学に合格することも可能かもしれません。
心理学の可能性は無限大なので、これからも心理学について学んでいっていただけたら幸いです。
参考文献
太田信夫(1991)直接プライミング,心理学研究,62,2,119-135
上篠 涼平・広田 すみれ (2014) ペットボトル飲料に対する異なるプライミングの影響の違い 東京都市大学横浜キャンパス情報メディアジャーナル,15,37-43
金井慎太郎・井出野尚・中山真理子・林幹也・竹村和久(2011) 連想が評価に及ぼす影響の検討 -心理実験を用いて- 第33回あいまいと日本感性工学会「あいまいと感性,感性脳機能」ジョイントワークショップ講演論文集