統合失調型パーソナリティ障害とは?原因や特徴、統合失調症との違いを解説

2022-02-10

古典的な精神医学の領域で最も注目されていた精神疾患の1つに統合失調症という疾患があります。そして、その統合失調症と深い関わりを持っているパーソナリティ障害が統合失調型パーソナリティ障害です。

それでは、統合失調型パーソナリティ障害とはいったいどのような精神障害なのでしょうか。その原因や特徴、統合失調症との違い、症状や診断基準についてご紹介していきます。

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統合失調型パーソナリティ障害とは

統合失調型パーソナリティ障害は、奇異な思考や行動を特徴とするA群パーソナリティ障害の1つであり、統合失調症に近い症状を示し、社会適応に困難がみられるパーソナリティ障害です。

統合失調型パーソナリティ障害の特徴

統合失調型パーソナリティ障害は、居心地の悪さを感じるために親密な関係を築くことができず、思考や知覚の歪みから奇妙な行動を示すという特徴を示します。

例えば、自分が思った通りに他者を行動させる魔術的な思考、他者のこころを読む超能力があると考えることなどです。

また、服装や話からなども奇妙で、他者に対する不信感や疑い深さが強いため、家族以外にこころを開けるような友達がいないなどの対人関係においても支障をきたすことが多いようです。

統合失調症と統合失調型パーソナリティ障害の違い

統合失調型パーソナリティ障害は、その概念成立の過程において、統合失調症とは言えなないが、統合失調症に類似している精神障害としてスタートしています。

そのため、統合失調型パーソナリティ障害の示す症状は、統合失調症においてもみられるものです。

しかし、統合失調型パーソナリティ障害は、パーソナリティ障害であり、統合失調症の示す症状のうち性格傾向に係る異常を示すものであると言えます。

統合失調症では、それ以外にも、幻聴や被害妄想など様々な症状を示すという点で異なると言えるでしょう。

統合失調型パーソナリティ障害の原因

統合失調症は、遺伝的なリスクに対しストレスがかかることで発症すると考えられているように、統合失調型パーソナリティ障害も同様のメカニズムで生じると考えられています。

しかし、現在の科学においても統合失調型パーソナリティ障害の発症に関わる遺伝子の特定はなされておらず、今後の研究の発展が望まれています。

統合失調型パーソナリティ障害の歴史

精神医学の領域では、特に病理の深い精神病のというものをどのように扱うべきなのかということが大きな問題とされていました。

統合失調症の発見

その中で、精神医学の父と呼ばれるクレペリン,Eは精神病には、一度発症すると妄想が拡大し、最終的には人格が崩壊してしまうなど、どんどん悪化していくものと良くなったり悪くなったりを繰り返すものの2つに分けられることに気付きます。

そして、前者を現在の認知症が若くして現れたものだと考え早発性痴呆、後者を良い-悪いを繰り返す循環病と名付けました。

この早発性痴呆が現在の統合失調症です。

統合失調スペクトラム概念の提唱

この後、統合失調症に対する研究は数多く行われましたが、その原因は特定されていませんが、統合失調症には何らかの遺伝的なリスクに対し、環境からのストレスが加わることで発症するというモデルからその発生機序が説明されるようになりました。

このように精神病という概念の領域が明確に示されたことで、健常者と精神病者の違いに関する、所謂「正常-異常」の境界はどこなのかということに注目が集まり、議論がなされるようになります。

実際に、精神障害と呼ばれる領域と健常者の分類に用いられる視点は、「社会生活に重大な問題が生じているか」と「その問題を解決するために治療が必要かどうか」というものに過ぎず、正常と異常の間には必ずしも質的な差があるとは限りません。

このようなは池ににより、統合失調症においても、どうやら統合失調症に似ているようだが、統合失調症の診断基準に満たない類似疾患の存在があることも指摘されるようになりました。

こうして、健常者から統合失調症に至るまでは連続体を成しているという統合失調スペクトラム概念が提唱されます。

統合失調型パーソナリティ障害の提唱

1953年に、このような統合失調症と連続した特性を示すものをSchizotypeという用語ではじめて表現したのがラドーです。

ラドーは統合失調症の表現型schizophrenic phenotype )を短縮し、Schizotypeという用語を提唱したのですが、この概念を理論化したのがミールという学者です。

ミールは健常者でも持ち合わせうる統合失調症的な遺伝要因を「Schizotaxia」と名付け、この遺伝要因を持った人が統合失調型パーソナリティ症を発症する可能性を備えていると考えたのです。

統合失調症の表現型とは

この表現型という考え方は、遺伝的要因に対応し、個々に観察できるものを指します。

例えば、血液型におけるA型は外から観察ができる表現型であり、AA型もしくはAO型という遺伝構造を成しています。

つまり、ミールの理論によれば、統合失調症の発症に関わる遺伝子には様々な種類があり、それらが全てそろった状態で環境からストレスがかかることで統合失調症を発症することになります。

そして、そのような発症に関わる様々な遺伝子のうち、パーソナリティ特性に係るものが表現されたのが統合失調型パーソナリティ障害であると考えられているのです。

DSMによる統合失調型パーソナリティ障害の確立

このような流れを経て、1980年に米国精神医学会が発行したDSM-Ⅲによって、統合失調症の診断基準には満たないものの、統合失調症に類似した疾患の一つであると考えられる障害のことを統合失調型人格障害として概念化しました。

その後、DSMの改訂がなされることで、統合失調型パーソナリティ障害は「親密な関係で急に不快になること、認知的または知覚的歪曲、および行動の奇妙さの様式」を示すパーソナリティ障害としてその疾患概念が確立され現在に至ります。

統合失調型パーソナリティ障害について学べる本

統合失調型パーソナリティ障害について学べる本をまとめました。初学者でも読みやすい入門書を選んでみましたので、気になる本があればぜひ手に取ってみてください。

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統合失調型パーソナリティ障害は統合失調症の性格面という一部の症状を示すパーソナリティ障害です。

そのため、統合失調症に対する知識を深めることは必須でしょう。

身近な人が統合失調症であればどのように接すればよいのか、漫画でわかりやすく紹介している本書から触れてみるのはいかがでしょうか。

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統合失調スペクトラムにおいて、健常者と統合失調症の間に位置するのが統合失調型パーソナリティ障害です。

そのため、統合失調スペクトラムについて理解することは統合失調型パーソナリティ障害を学ぶ上で避けて通れないでしょう。

ぜひ本書で統合失調スペクトラムについて詳しく学びましょう。

統合失調パーソナリティ障害概念成立による効果

統合失調症は古くから重篤な精神疾患として注目されていましたが、なかなかその詳しい原因や有効な治療法については分からずにいました。

その理由は、統合失調症患者の示す思考や行動の異常さ、現実との接触を失っている度合いの激しさによって調査研究が困難なためです。

そのため、統合失調症のような症状を示すが、統合失調症ほど重篤ではない統合失調型パーソナリティの存在によって研究が進み、統合失調症に関する新たな知見がもたらされる可能性があるのです。

ぜひこれからも最新の研究報告に目を通し、統合失調スペクトラムに関する知見を深めましょう。

【参考文献】

  • 飯島雄大・佐々木淳・坂東奈緒子・浅井智久・毛利伊吹・丹野義彦(2010)『日本語版Schizotypal Personality Questionnaireの作成と統合失調型パーソナリティにおける因子構造の検討(資料)』行動療法研究 36(1), 29-41
  • 浅井智久・山内貴史・杉森絵里子・坂東奈緒子・丹野義彦(2010)『統合失調型パーソナリティと統合失調症の連続性』心理学評論 53(2), 240-261
  • American Psychiatric Association(高橋三郎・大野裕監訳)(2014)『DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル』医学書院

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    臨床心理士指定大学院に在学していました。専攻は臨床心理学で、心理検査やカウンセリング、心理学知識に関する情報発信を行っています。

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