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トークンエコノミー法とは?具体例やオペラント条件づけに基づく行動療法を紹介

トークンエコノミー法という用語を耳にしたことはあるでしょうか。もともとは心理学における学習理論を応用したものですが、心理臨床の場面だけでなく、日常生活の様々な場面にも応用が可能な技法です。今回はトークンエコノミー法に着目し、その技法の特徴や実践例などをご紹介します。

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トークンエコノミー法とは

トークンエコノミー法とは、望ましい特定の行動の生起頻度を上げるために行う行動主義的な心理療法です。

オペラント条件づけによる行動療法の一種

トークンエコノミー法は、オペラント条件づけと呼ばれる学習理論に基づいています。

この理論では、生体(動物にも適用可能な理論です)が望ましい行動をした直後に報酬(ご褒美)をあげることで、その行動の生起頻度を上げるというものです。

トークンエコノミー法では、社会的に望ましい行動を教えるために、トークン(代理貨幣)と呼ばれるご褒美を与えます。そして、トークンが一定量たまったらより具体的な報酬を与えます。

複雑な言葉を介さなくても実施ができるため、幼児や障害児童に対して用いられることも多いという特徴があります。

オペラント条件づけによるその他の行動療法

トークンエコノミー法以外に、オペラント条件づけが応用された心理療法をご紹介します。

シェイピング法望ましい行動を獲得するまでに、細かく目標を分け、段階的に獲得へ導く技法
タイムアウト法望ましくない行動が起こった後、それを強化する刺激から遠ざける技法
セルフモニタリング自分の行動を記録し振り返ることで、目的の行動を強化したり動機づけを高める技法

トークンエコノミー法の具体例と実施方法

トークンエコノミー法は皆さんの身の回りでも適用されています。

その最たる例が「ポイントカード」です。

ポイントカードでは、商品を購入したり、来店した際にスタンプなどを押してもらい、それがたまるとクーポンとして使えたりしますよね。

これは、お店にとって望ましい「商品の購入」や「来店」といった行動を、スタンプというトークンとクーポンという具体的な報酬によって強化する試みとみなすことができます。

トークンエコノミー法のメリット・デメリット

トークンエコノミー法のメリットとデメリットをまとめました。

【メリット】

  • 言語理解の能力による制限を受けにくく、子どもや障害のある人にも適用可能。
  • 副次的な効果として、人間関係の向上がある可能性が指摘されている。
  • 相互依存型随伴性と組み合わせて用いることで、集団に対しても適用可能。(集団としての行動が一定の基準に達した場合、報酬を与える手続き)※相互依存型随伴性とは、集団としての行動が一定の基準に達した際に報酬を与える手続きのこと。

【デメリット】

  • 対象となるのはあくまで行動であり、個人の内的な悩みや人格変容は対象外となる。
  • 望ましい行動が定着した後に継続し続けてしまうと、アンダーマイニング効果が起こる可能性がある。

トークンエコノミー法に関する心理学的研究

そもそも、トークンエコノミー法の土台となるオペラント条件づけはスキナー,B.F.が行った動物実験から提唱された学習理論です。

スキナーはスキナーボックスと呼ばれる、レバーのついた箱の中に空腹のネズミを入れました。

スキナーボックスでは、レバーが押されるとエサが落ちてくる仕組みになっており、何度か箱の中で偶然エサを手に入れる経験をしたネズミはレバーを押すとエサが出てくることを学習し、その行動を繰り返すようになることが示されました。

この研究により、報酬を適切に用いることで特定の行動の生起頻度を増やすことが示され、応用行動分析や行動療法などへ発展していきました。

トークンエコノミー法の活用事例

トークンエコノミー法の活用事例をご紹介します。

精神科病棟での実施例

トークンエコノミー法は精神科病棟でも適用されています。

南ら(2019)では、悪質ないたずら行動を繰り返すアスペルガー障害の男性に対し、トークンエコノミー法を実施しました。

その結果、ストレスに対する不適切な対処行動であるいたずらが低減するという効果が得られたと報告しています。

歯科医院での実施例

トークンエコノミー法は幼児が利用すること多い歯科医院でも導入されています。

かわさき小児矯正歯科医院では、治療することで子どもにご褒美を与え、歯並びを良くしたいという気持ちを高める取り組みを行っています。

トークンエコノミー法について学べる本

トークンエコノミー法について学ぶことのできる書籍をまとめました。

行動変容法入門

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レスポンデント条件づけやオペラント条件づけから、行動療法まで多岐にわたって紹介されている一冊です。これから行動主義について学びたい方の第一歩としておすすめです。

行動分析(心理療法プリマーズ)

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行動分析を行ううえでの原理だけでなく、第2部の事例として、トークンエコノミー法の実践事例が紹介されています。

どのように目標設定をしたり、トークンを与えていけばいいのか事例を読めばイメージが湧くでしょう。

トークンエコノミー法は共に行っていきましょう

トークンエコノミー法は子どもや障害のある方にも適用が可能ですが、実施する前にしっかりとした信頼関係を築き、目標の共通理解や仕組みをしっかりと説明する必要があります。

そして、なかなか望ましい行動が出てこなくても、叱ることなく目標に向けて一緒に歩んでいく態度が求められます。

この記事でご紹介した本なども参考に、理解を深めてみてください。

参考文献

  • 小島恵(2000)『発達障害児・者における集団随伴性による仲間同士の相互交渉促進に関する研究の動向』特殊教育学研究 38(1), 79-84
  • 杉本任士(2014)『日本の学校教育におけるトークンエコノミーシステムの導入状況』日本大学大学院総合社会情報研究科紀要,15,67-74
  • 南庄一郎・高岡崇・杉山大佑(2019)『アスペルガー症候群事例の悪質ないたずら行為に対する作業療法:─医療観察法病棟での実践─』作業療法 38(4), 490-496
  • かわさき小児矯正歯科医院『小児・子ども矯正歯科の口コミ

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    臨床心理士指定大学院に在学していました。専攻は臨床心理学で、心理検査やカウンセリング、心理学知識に関する情報発信を行っています。

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