リフレーミングとは、物の見方を変えることです。今回は、リフレーミングの意味、種類、効果について、具体例とともに解説していきます。
また、日常生活に活かせるリフレーミングやリフレーミングについて学べる本についてもご紹介しますので、実践的な力を身につけていくきっかけになさってください。
目次
心理学におけるリフレーミングとは
リフレーミングとはどのようなものでしょうか。意味と具体例を見て行きましょう。
リフレーミングの意味
物事の見方を、心理学におけるNLP(神経言語プログラミング)では、フレームと言います。
リフレーミングは、このフレーム、つまり物の見方を捉え直すことを指します。
心理カウンセリングに来られる多くのクライエントの初期のニーズは、自分の物の見方以外の何かを変化させることであったりします。辛い気持ちや症状をなんとかしたい、相手との関係を改善したい、などです。
リフレーミングでは、このような問題そのものを直接的に変化させようとするのではなく、第一に物の見方を変化させることを目標とします。
ただ物の見方を変えるだけのリフレーミングが、なぜ心理療法によく用いられるのでしょうか?本記事を読み進めることで理解ができるようになってくるはずです。
リフレーミングの具体例
リフレーミングについて、有名なイソップ童話「酸っぱい葡萄」と「夏休みの宿題」の2つを例にして考えてみます。
酸っぱい葡萄
「酸っぱい葡萄」という有名なイソップ童話があります。
キツネがお腹を空かせて歩いていると、美味しそうな葡萄が実っているのを見つけます。キツネはなんとか葡萄を手に入れようとしますが届きません。
諦めたキツネは、「どうせあの葡萄は酸っぱくてまずいだろう。」と思い込みます。「葡萄を手に入れられなかった」という事実はそのままに、キツネは葡萄に対する見方を変えています。
このとき、キツネはリフレーミングを行うことで、悔しい思いから解放されたと想像できます。
夏休みの宿題
他の例でも考えてみましょう。夏休みが残り1週間となった時、宿題が残っていたとします。
残り1週間もあると考える人はまだ遊び続けるでしょうし、残り1週間しかないと考える人は宿題に取り掛かると思います。
このように、ものの見方の違いは、感情や行動に影響を及ぼすことがわかります。
リフレーミングの種類
リフレーミングには、状況のリフレーミングと内容のリフレーミングという2種類があります。
状況のリフレーミング
状況のリフレーミングは、ある現実はそのままにしておきながら、それが役に立つ状況を見つけるリフレーミングです。
クライエントへの問いかけとしては、
- 「それが役に立つ状況は、どのようなものでしょう?」
- 「どのような場面なら、それが役に立つと思いますか?」
などが考えられます。
具体例
有名なクリスマスソングである「赤鼻のトナカイ」で、自分の鼻が赤すぎてみんなに笑われると泣いていたトナカイに対して、サンタのおじさんが次のように言ったことが、まさに状況のリフレーミングです。
「暗い夜道は、ピカピカのお前の鼻が役に立つのさ!」
サンタのおじさんは、トナカイの悩みに対して「気にすることはないよ」と慰めたわけでもなければ、魔法で赤鼻を治した訳でもありません。
トナカイの真っ赤な鼻に対する見方を、「みんなに笑われる恥ずかしいもの」から、「夜道を照らす役に立つもの」と変えたのです。
ワーク
次のような悩みに対して、状況のリフレーミングをしてみましょう。
- 「私は細かい事が気になって、仕事がなかなか捗らないんです。」
- 「私は自分が悪くもないのに、つい人に謝りすぎてしまうんです。」
内容のリフレーミング
内容のリフレーミングは、物事に対して違う意味を持たせるリフレーミングです。
クラエイントへの問いかけとしては、
- 「それは、他にどんな意味があるでしょうか?」
などが考えられます。
具体例
アニメ「ドラえもん」に出てくるのび太の性格を、どのように表現しますか?
のび太本人が落ち込んでいる時は、自分のことを「ドジで怠け者で気が弱くて」と思っているようです。
けれどもドラえもん始め、のび太の周りの人達は、のび太のことを「明るくて夢を持っていて人の幸せを願える人」だと信じています。
これがまさに内容のリフレーミングです。
どんなにネガティブに見える物事も、それはただ1面からしか光を当てていないだけであって、他の面から見れば全く違う意味を持っていることが分かります。
ワーク
次のような悩みに対して、内容のリフレーミングをしてみましょう。
- 「私は飽きっぽくて、1つの趣味が長続きしないんです。」
- 「上司が同僚ではなく、私にばかり仕事を頼んできます。」
リフレーミングの効果
これまで見てきたように、リフレーミングは直接問題を解決する方法ではありません。それでは、リフレーミングにはどのような効果があるのでしょうか。
ボルスタッド(2009)は、リフレーミングには次の3つの効果があると述べています。
- 避けたいことではなく、望むことに注意を向けます。
- 望ましい状況で自分が得た結果を、永久的で、全体的に広がり、自分のものであると考えます。
- すべての結果にポジティブな意味を見つけます。
ボルスタッド(2009)
つまり、何かが上手くいかない状況というのは、「上手くいかない」物の見方をしているためだと考え、その捉われから自由になり全体を見渡すことで、問題の解決が促進されると考えるのです。
日常生活に活かせるリフレーミング
家族療法など、心理療法として用いられることが多いリフレーミングですが、日常生活にも活かすことができます。
ただし、他のコミュニケーションと同様に、相手との信頼関係があることが前提です。心理カウンセリングの場では、これをラポールと呼んでいます。
ただでさえ、これまで慣れてきた物の見方を変えるのは簡単ではないのですから、信頼していない相手との会話に耳を傾けるのは難しいでしょう。
ですから、いきなりリフレーミングをするのではなく、まずは相手を理解しようとすることが大切です。
その事を前提として、今回は、ビジネスと子育てにおけるリフレーミングの活かし方を考えてみましょう。
リフレーミングをビジネスに活かす
例えばあなたが、部下に新しい仕事を任せたいとします。けれども部下は、「やったことがないから自信がない」と消極的です。
このような場合には、部下の不安感に寄り添いつつ、「やったことがない」という仕事へのリフレーミングを行うことができるでしょう。
「自信がない」という気持ちは「丁寧に仕事をすることができる」という可能性と捉えられるかもしれません。「未経験の仕事に取り組む」ことを、「成長するチャンスを得られる」と捉え直すこともできるでしょう。
あなたと部下との間に信頼関係が築かれていれば、このようなリフレーミングを押し付けと感じずに受け入れてもらえる可能性が高まります。
リフレーミングを子育てに活かす
ボルスタッド(2009)は、こどもの幸福度は、出来事そのものよりも出来事をどう捉えているかによって決まると述べています。
そして、「満足しているハッピーなこども」は、次のようなリフレーミング・スタイルを持っているとしています。
- 「避けたいもの」ではなく、「欲しいもの」に注意を向ける。
- 望ましい状況での良い結果は、永久的で、全体に広がり、「自分のもの」であると考える。
- 望ましくない状況で起きた悪い結果は、一時的で、特定で、「状況による」と考える。
- すべての結果にポジティブな意味を見出す。
ボルスタッド(2009)
例えば、緊急事態宣言のために予定していた旅行に行けなくなってしまった時、こどもが「いっつも遊びに行けないなんて、もうヤダ!」と言ったとします。
これは、旅行に行けなくなったという避けたいものに注意が向き、望ましくない状況を永久的なものと捉えている状況です。
こどもとのラポールを築いた後、あなたならどのようなリフレーミングを提示しますか?
ヒントは、旅行に行けない状況は永久的なことではないこと、旅行に行けない時間=他の事に使える時間と考えられることなど、です。
リフレーミングについて学べる本
リフレーミングについて学べる本をご紹介します。また、文字数の関係でここでは取り上げていませんが、参考文献に載せた本はどれも読みやすいものですので、そちらもぜひ参考になさってください。
見開き2ページごとで読みやすい「図解でわかる!NLP」
心理学者ではなくビジネススキル研修講師による実践的なNLPの本です。
心理学としてのNLPというよりも、一般の社会人を対象として書かれているので、大変わかりやすいです。
リフレーミングについては3章にスキルの解説と例が、4章に人間関係に活かす実践例が載っています。
心理療法におけるリフレーミングを学びたい方へ「リフレーミングの秘訣ー東ゼミで学ぶ家族面接のエッセンス」
家族療法を初めとするシステムズアプローチを専門とする著者による、リフレーミングの臨床例です。
著者によるリフレーミングを用いた家族面接の事例が4つあり、それぞれについて著者と学生とのディスカッションが展開されています。
心理カウンセラーを目指している方や、現在のカウンセリングでリフレーミングの技術を向上させたい方にも勉強になる1冊です。
事実は1つ、フレームは無限
順風満帆な時は、私たちは馴染んだ物の見方を変えようとはしません。
けれども辛い時、壁にぶつかった時、光を求めて模索するうちに、新しいフレームを手に入れることがあります。
「辛い状況」「壁にぶつかっている状況」を変えようとするのではなく、見方を変えるのです。
リフレーミングは、クライエントと対峙する時、心理カウンセラーには必須の技術であり努力ですが、誰にとっても役に立つものです。
4度目の東京の緊急事態宣言、豪雨による災害。
辛い思いをされている方々が、どうか新しいフレームを手に入れることができますように。
参考文献
梅本和比己(2011) 面白いほどよくわかる!NLPの本 西東社
高橋かおり(2016) 今日から役立つ 実践!NLP 学研プラス
直井みずほ(2017) 図解でウェアかる!NLP 秀和システム
東豊(2013) リフレーミングの秘訣ー東ゼミで学ぶ家族面接のエッセンス 日本評論社
松島直也(2013) NLPのことがよくわかり使える本 明日香出版社
リチャード・ボルスタッド(著)ユール洋子(訳)(2009) 親の信頼がこどもを伸ばす NLP子育てコーチング 春秋社