内田クレペリン精神作業検査とは?やり方や結果の読み取り方、定型曲線について解説

心理検査には様々な種類がありますが、日本で独自に開発された作業検査法である内田クレペリン精神作業検査はとりわけ異彩を放っています。

それでは内田クレペリン精神作業検査とはいったいどのような検査なのでしょうか。そのやり方や結果から何が分かるのか、定型曲線について詳しく解説していきます。

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内田クレペリン精神作業検査とは

内田クレペリン精神作業検査とは、日本の心理学者である内田勇三郎によって開発された心理検査です。

この検査は元々、精神科医として著名なクレペリン,E.による連続加算法という手法がベースとなっています。

連続加算法とは、列になっている1桁の数字をひたすらに足していくという連続加算課題です。

クレペリンはこの連続加算法を実験において実施し、作業の推移における精神機能について研究をしていましたが、内田はその考えに基づいて作業量やその質を分析することで個人の人格や適性を測定する心理検査へと改良したのです。

内田クレペリン精神作業検査のやり方

内田クレペリン精神作業検査では、特別な器具などは必要が無く次の用具で実施が出来ます。

【内田クレペリン精神作業検査で必要なもの】

  • 検査用紙
  • ストップウォッチ
  • 鉛筆(予備を含め2~3本)

検査を行う前に、被検者には課題に慣れてもらうために30秒間検査用紙についている加算作業の練習を行ってもらいます。

そして、「この検査用紙に書かれている数字を、できるだけ正確に、そしてできるだけ早くやってください」と教示を行います。

実際の検査は次のような流れで行われます。

前半:15分(横に並んだ数字の連続加算を1分間×15回)

休憩:5分

後半:15分(横に並んだ数字の連続加算を1分間×15回)

検査用紙には横に数字が並んでおり、それが何列も書かれています。

ほとんどの場合、1分間に列の端まで加算が終わることはないため、被検者は1分間横に加算をひたすら行い、1分経ったら検査者は下の列に移り、新たに加算をするよう指示をします。

この手続きを15回繰り返し、5分間の休憩、また後半の手続きを15回繰り返すことで検査は終了です。

結果のまとめ方と定型曲線

このようにして実施された検査では、右に向かって加算された数字の結果が並んでいます。

これらの結果を次のポイントから吟味していきます。

【評価のポイント】

  • 全体的な計算の量
  • 回答の計算ミスの数
  • 1分(1列)あたりの計算量の変化

そして、1列あたりの計算量はそれぞれの列における右端の計算結果で示されるわけですが、その右端を縦につないでいくことで作業曲線を作ります。

【例】

12345678

1234

12345678

これらの右端を繋ぐと平仮名の「く」の字を描いているような作業曲線が得られます。

この作業曲線は前半と後半それぞれ作成し、曲線の個別の分析に加え、定型曲線との比較を行い、曲線の類型がどのようであるかを判定します。

定型曲線とは

定型曲線とは、内田クレペリン精神作業検査開発までの知見の積み重ねによって得られた健常者の結果から描かれる曲線のことで、次のような特徴があります。

【前半の特徴】

V字もしくはU字の形をとる

この理由としては、最初の1行目に「初頭努力」がみられ、作業量が多くなるからです。

しかし、1行目を終えて、1分間で全ての計算を行うのは到底不可能であることに気付き、2行目から6~7行目までは基本的にゆるみが生じるため、作業量が低下します。

そして、6~7行目を過ぎると休憩に近づき終わりが見えてきたことで作業量が増える「終末努力」がみられます。

【後半の特徴】

右下がりの曲線になる

後半の序盤の成果は、休憩を挟んだこと及び作業への慣れや作業に気分が乗ってくる慣熱効果により、作業量はこれまでで一番になります。

しかし、中間から終末にかけ、疲れから徐々に作業量が低下してくことで、右下がりの曲線を描きます。

内田クレペリン精神作業検査の結果から何が分かるのか

この検査の元となる連続加算から、クレペリンは連続加算過程に係る精神機能について、次のような因子を抽出しています。

【作業機能の因子】

  1. 意志緊張:作業に臨むことで生じる緊張感、努力への動機に影響する
  2. 興奮:同じ作業を続けて行うことで生じる作業への没頭、気分が乗ってくること
  3. 慣熱:作業遂行のために様々な精神機能が統合される状態
  4. 練習:慣熱に比べると長く続く慣れ
  5. 疲労:作業量を減少させる疲れ

そして、健常者においてこれらの5つの精神状態が互いに働き合うことで、連続加算の結果が定型曲線に近しい形を描くと考えられているのです。

また、検査によって得られた情報は作業量、作業曲線の形、誤答の多さなどから24の類型に当てはめられます。

下の図では下に行くほど(D段階に近づくほど)、作業量が少なくなり、否定形型の特徴が強まること、右に行くほど、性格や行動に個性が強く現れ、バランスの乱れが出てくることになります。

浅川康吉・武田功(1994)『理学療法学科学生のパーソナリティと教育に関する研究―内田クレペリン精神検査と学業成績の関係―』より

また、性格や行動面の強い偏りや不適切な行動に繋がりやすい傾向も測定することができます。

【特異傾向】

  1. 気持ちや動作の一時的な停滞
  2. 気持ちや動作の一時的な高ぶり
  3. 情意の不安定
  4. 感動性の不足
  5. 発動障害(物事へのとりかかり)
  6. 気力の衰弱
  7. 抑制作用の減退
  8. 固執傾向(こだわりの強さ)
  9. 反発心・不熱心さ
  10. あせり・りきみ

ただし、このような傾向の存在を指摘されたとしても、その表れ方(傾向が強く出るかどうか)は、そのほかの要因を含め総合的に判断する必要があります。

例えば、特異傾向を指摘されたとしても、曲線類型や性格・行動の特性について問題がなく、総合的に定型群と判断されるようなケースでは、その特異傾向は極めて軽度のため、日常生活において問題とならないとされます。

また、パーソナリティに関しては次の3つの観点から分析されます。

【性格や行動面の特性】

  • 発動性:仕事などを始めるときのとりかかりや滑り出し
  • 可変性:日常や仕事での気分や行動の変化
  • 亢進性:仕事などをしていく上での勢いや強さ

このように、日常生活や仕事など何らかの活動を行う際の自分の行動や性格の特徴がつかめるため、心理臨床の現場以外でも、適職診断のツールとして使用されています。

産業領域での内田クレペリン精神作業検査

内田クレペリン精神作業検査では、仕事などの活動における行動傾向や性格特徴などを把握でき、実施に熟練度が求められないため、適職診断などのツールとして用いられることがあります。

特に、事故発生予測の有力な手掛かりとして内田クレペリン精神作業検査は国鉄の乗務員を判定する際に有効だとして実施されてきました。

また、精神疾患に特徴的な曲線の研究も行われていることから、精神疾患を罹患に関し、就労判定の指標として内田クレペリン精神作業検査の有効性を指摘する声もあります。

黒川(2014)は、うつ病患者に対し、内田クレペリン精神作業検査を実施し、症状の悪化による休職判定及び症状の改善から復職支援導入のために症状を把握する有効なツールであるとしています。

内田クレペリン精神作業検査の注意点・課題

内田クレペリン精神作業検査は、これまで企業の採用活動に用いられたこともある背景から、対策本なども出版され、より望ましい人物像に見せるよう練習が可能なようです。

また、黒川(2012)は内田クレペリン精神作業検査を60日間連続して実施し、ストレスなどの負荷がどのように結果に影響するのかを検討しています。

その結果、運動後や飲酒後には優位に作業量が低下したこと、4時間以内に4回連続で実施すると買いを重ねるごとに沿う作業量や後半の上回り率に低下がみられ、非定型曲線がみられることがあったと報告しています。

そのため、検査を受ける前後で何らかの心身の不調やこれまでの検査経験などが結果をゆがめてしまう可能性を考慮しなければならないでしょう。

内田クレペリン精神作業検査について学べる本

内田クレペリン精神作業検査について学べる本をまとめました。

就職適性試験 内田クレペリン検査 完全理解マニュアル

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つちや書店
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企業などの適性検査としても活用されている内田クレペリン精神作業を本当に正しく理解できていますか。

本書は内田クレペリン精神作業の詳しい解説に加え、検査での対応の仕方を丁寧に解説している本書で内田クレペリン精神作業について詳しく学びましょう。

内田クレペリン検査 完全理解マニュアル―就職適性試験

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多くの企業や自治体で実施されている内田クレペリン精神作業ですが、その検査の内容だけでなく、実際に検査を実施してみてどのようなものなのかを体験的に理解することは非常に重要です。

本書には、事前に検査機関へ判定を依頼できる公式検査用紙も付属しているため、まだ内田クレペリン精神作業を受けたことが無い方におすすめんの一冊です。

作業の結果からわかる個人の傾向

人間の普段意識していない何気ない行動の癖を作業検査という場で浮き彫りにするのが内田クレペリン精神作業です。

その信頼性や妥当性に対し、批判が寄せられたこともありましたが現在も幅広い現場で使用されている日本独自の心理検査について学びを深めましょう。

【参考文献】

  • 浅川康吉・武田功(1994)『理学療法学科学生のパーソナリティと教育に関する研究―内田クレペリン精神検査と学業成績の関係―』京都大学医療技術短期大学部紀要. 別冊, 健康人間学 (6), 30-41
  • 黒川淳一(2014)『内田クレペリン精神検査を用いた就労判定に関する試み』日本職業・災害医学会会誌62(3), 161-166
  • 島津貞一(1985)『内田・クレペリン精神検査の課題』(5), 39-51
  • 柏木繁男(1964)『内田クレペリン検査の信頼性と妥当性の客観的手法による検討』心理学研究 35(2), 93-95
  • 黒川淳一(2012)『内田クレペリン精神検査の連続実施による検討(第1報) : 連日実施における諸条件下での検討』日本職業・災害医学会会誌 60(2), 74-90

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    臨床心理士指定大学院に在学していました。専攻は臨床心理学で、心理検査やカウンセリング、心理学知識に関する情報発信を行っています。

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