学習心理学のキーワード80【代表的な用語と人名一覧】

2021-10-09

この記事では、学習心理学の代表的なキーワードとその意味をまとめています。

はじめに社会心理学の用語、その後に著名な学習心理学者を「あいうえお順」で並べています。リンクからは、より詳しい解説をしている記事に飛ぶことができますので、気になるワードをチェックしてみてください。

※学習心理学がどういう分野なのか、研究対象や領域が知りたい方は以下の記事を参考にしてください。
>学習心理学とは?特徴や歴史、勉強できる大学等について分かりやすく解説

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事項

あ行

意味記憶 長期記憶の1種で、言葉の意味や本で読んだ知識など、一般的な情報としての記憶のこと。

エピソード記憶 長期記憶の1種で、子供の頃の思い出などのように、過去の具体的な体験について記憶のこと。

エビングハウスの忘却曲線 意味のない綴りで作られた単語13個を全て記憶してから、忘れるまでにかかる時間を示したもの。始めの数時間の忘れ方が大きく、そこからは忘れ方が緩やかになっていく。

オペラント条件づけ(道具的条件づけ) 行動の直後に好子や嫌子を与えることにより、ある行動の生起頻度を増やしたり減らしたりすること。

か行

外発的動機づけ ある行動を引き起こしたりやめさせたりする外的な誘因のこと。シールをもらうために勉強をする場合、シールが外発的動機づけとなる。⇄内発的動機づけ

回避学習 嫌子を除去するような行動を取るようになること。うるさい音がしたら耳を塞ぐようになることも、これに当たる。

学習 新しい行動の獲得や行動の変化が、比較的長く続くこと。

学習曲線 学習の経過を表すグラフのこと。時間や回数の経過とともに、慣れや疲労がどのように現れるかを分析することができる。

学習性無力感(学習性無気力) 無気力の原因は、不快な出来事を自分の行動によって変えられないという認識による物であるという考え方。

算数に対して無力感を抱く子供達に対して、問題を間違えたのは努力不足のためだという経験を積ませることで、粘り強く取り組むようになったという実験がある。

感覚記憶 感覚に入力された情報が、短期貯蔵庫に運ばれるまでのほんのわずかの間、なんらの認知処理も受けずそのまま貯蔵されているもののこと。

間欠強化 オペラント条件づけにおいて、ある一定回数や一定時間などを空けて、強化を与えること。

気分一致効果 記憶と感情についての概念で、気分がポジティブな時にはポジティブな記憶を思い出しやすく、気分がネガティブな時にはネガティブな記憶を思い出しやすい、という考え方のこと。

強化 オペラント条件づけにおいて、反応の後に好子を与えるか、反応の後に嫌子を除去するかにより、その反応の生起頻度を増やすこと。

強化スケジュール 条件づけにおいて、どのような反応を強化するのかといった内容を決める手続きのこと。

強化子 オペラント条件づけにおいて、ある反応の後に提示あるいは除去した刺激によって、その反応の生起頻度が変化した場合、その刺激のこと。

系統的脱感作法 学習理論を元にした行動療法の一つで、段階的に緊張や不安を軽減させるために用いられる。

系列位置効果 記憶のしやすさがは刺激の提示順序によって影響を受ける現象のこと。序盤と終盤に提示されたものほど記憶されやすい。

嫌悪療法 望ましくない行動を消去したり変えたりするために、不快な刺激と行動を条件づける方法のこと。

顕在記憶 本人が意識的に思い出すことが可能な記憶のこと。⇄潜在記憶

嫌子(けんし) ある反応の後に与えるとその反応の生起頻度が減り、除去すると反応の生起頻度が増える物や事柄。「だめだよ」と言うことで反応が減るのであれば、「だめだよ」と言う言葉がけは嫌子となっていると考えられる。

効果の法則 ある行動が満足を伴う場合、その行動は生じやすくなり、ある行動が不快を伴う場合、その行動は生じにくくなる、という法則。

好子(こうし) ある反応の後に与えるとその反応の生起頻度が増え、除去すると反応の生起頻度が減る物や事柄。「だめだよ」と言うことで反応が増えるのであれば、「だめだよ」と言う言葉がけは好子となっていると考えられる。

行動主義 心理学の研究対象を客観的に観察することができる事象に限り、刺激への反応としての行動を予測し統制することを目的とした立場のこと。

古典的条件づけ(レスポンデント条件づけ) 中性刺激と無条件刺激との対呈示を繰り返すことにより、元々は中性刺激であった刺激に対しても反応が生じるようになること。

パブロフの実験では、肉粉(無条件刺激)とメトロノームの音(中性刺激)を対呈示するうちに、メトロノームの音だけで唾液分泌(条件反応)が生じるようになった。このように、唾液分泌を引き起こすようになったメトロノームの音は、条件刺激と言われる。

さ行

再学習法 一度学習した内容を、一定時間を経過した後に再度学習する際にかかる時間や誤答数などを測定する記憶の評価方法。

再認法 一度学習した内容について、学習しなかった内容と共に提示し、学習内容にあったかなかったかの答えを測定する記憶の評価方法。

三項随伴性 刺激(antecedent)ー行動(behavior)ー結果(consequence)という関係のこと。ABCとも表現される。

試行錯誤 偶然に上手くいく可能性に賭け、様々な行動を試してみるというような問題解決方法のこと。

自己強化 自らがコントロールできる報酬を用いて、自分の行動を強化すること。

自発的回復 馴化によって一旦弱まった反応が、時間の経過と共に自然に戻っていく現象のこと。

弱化 オペラント条件づけにおいて、反応の後に嫌子を与えるか、反応の後に好子を除去するかにより、その反応の生起頻度を減らすこと。

集中学習 休憩時間を入れずに、学習を続けること。⇄分散学習

馴化(じゅんか) 同じ刺激を繰り返すうちにそれに馴れてしまい、反応が低下していく現象のこと。

シェーピング オペラント条件づけを用いて、単純な行動からより複雑な行動を形成していく方法のこと。動物に芸を教えたり教育の場などに用いられる。

消去 条件づけによって一旦反応が形成された後に、無条件刺激(古典的条件づけの場合)や強化子(オペラント条件づけの場合)の提示をやめることにより、反応が減っていく現象やその手続きのこと。

条件刺激 元々は反応を結びつかない中性刺激であったものが、無条件刺激と対提示されるうちに反応と結びつくようになった刺激のこと。

条件反応 古典的条件づけにおいて、学習によって条件刺激によって引き起こされるようになった反応のこと。

初頭効果 初めに与えられた情報が、その後に与えられた情報に比べて、記憶や学習がしやすいという現象。

親近性効果 終わりの方に与えられた情報の方が、その前に与えられた情報に比べて、記憶や学習がしやすいという現象。

新行動主義 ワトソンの行動主義が刺激と反応のみを扱っていたのに対し、期待や動因といった生体側の要因も導入した。

スキーマ 長期記憶に貯蔵されている知識のうち、物、状態、出来事などを捉える時の枠組みとなるような一般知識のこと。

スキナー箱 オペラント条件づけに用いられる装置で、ラットやハトに対する自動給餌装置がついている。

刷り込み(インプリンティング) 雁のヒナに見られるように、生後まもない時に見た大きく動くものについていくようになる現象のこと。

正の強化 ある反応の後に好子を与えることにより、その反応の生起頻度を増やすこと。

正の弱化 ある反応の後に嫌子を与えることにより、その反応の生起頻度を減らすこと。

潜在記憶 意識的に思い出すことはないが、無意識的に働いている記憶のこと。

た行

多重貯蔵庫モデル 環境から入力された情報が、感覚レジスタを経て短期貯蔵庫に送られ、そこからさらに長期貯蔵庫に送られるという記憶モデルのこと。

短期記憶 保持時間や保持容量が限られる記憶のこと。例えば、相手の質問を聞いて、自分が答えるまでそれを覚えておく場合など。

チャンク わかりやすいまとまりになっている情報のこと。例えば、<1、1、9、2>だと4つの数字だが、<いいくにつくろう>とすれば1つのまとまりとなる。

中性刺激 元々は対象となる反応を引き起こさない刺激のこと。パブロフの条件付けにおいて、メトロノームの音がこれに当たる。

長期記憶 短期貯蔵庫から長期貯蔵庫に運ばれ、ほぼ永久に保持される記憶のこと。

手続き記憶(非宣言的記憶) 自転車の乗り方やピアノの弾き方など、言葉で説明するのとは異なり体験的に身についている記憶のこと。

動因 意欲などの、行動を引き起こす生体の持つエネルギーのこと。

動因低減説 動因に基づいてある反応が生じ、それによって目標が達成されると動因が低減するという考え方。

洞察学習 条件づけの積み重ねを経ることなく、突然問題解決に至るように見える学習のこと。

な行

内発的動機づけ ある行動を引き起こす、その行動そのものから生じる誘因のこと。「わかる」ことが増えて楽しいから勉強をする場合などがこれに当たる。⇄外発的動機づけ

は行

般化 条件づけに用いられた刺激と全く同じでなくても、似たような刺激に対しても条件付けが成立する現象のこと。

負の強化 反応の後に嫌子を除去することにより、その反応の生起頻度を増やすこと。

負の弱化 反応の後に好子を除去することにより、その反応生起頻度を減らすこと。

フラッシュバルブ記憶 その出来事が生じた時に感情を大きく動かされたため、長い時間が経った後でも同時の状況がまるで写真に撮ったかのように鮮やかに思い出されるような記憶のこと。

分散学習 休憩時間を入れながら、学習を行うこと。一般的には、集中練習よりも分散練習の方が効果が高いと言われる。

弁別(学習) 刺激の違いを認識できること。バッターがボールの種類に応じて打ち方を変えられるのは、球種について弁別学習ができているからである。

ま行

マジカル・ナンバー 短期記憶を保持できる容量のこと。多くの場合、7±2チャンクとされている。

無意味綴り 意味を持たない文字のまとまりのこと。学習や記憶の研究において用いられる。

無条件刺激 生まれながらにして、生理的な反射を引き起こす刺激のこと。梅干しを口に含むと唾液分泌を引き起こす現象における、梅干しがこれに当たる。

無条件反応 古典的条件づけにおいて、無条件刺激によって元々引き起こされる反応のこと。梅干しを口に含むと唾液分泌を引き起こす現象における、唾液分泌がこれに当たる。

迷信行動 オペラント条件づけにおいて、強化子の提示前に偶然行ったことで強化された行動のこと。

問題箱 動物の学習についての研究に用いられたもので、閉じ込められた動物がなんらかの操作を行うことにより開けて脱出することができるようになっている。

ら行

リハーサル 英単語の綴りを何度も繰り返すなどして、短期記憶の保持時間を伸ばす行為のこと。

臨界期 学習が成立するための限られた期間のこと。この時期を過ぎると学習は行われない。雁のヒナの刷り込み行動における臨界期が有名。

練習の法則 ある動作が繰り返し行われると、量的及び質的向上が見られる一方で、疲労や心的飽和も生じる現象のこと。

わ行

ワーキング・メモリー(作業記憶) 情報処理のための一時的な貯蔵庫という短期記憶の役割に着目した呼び方。音韻ループ、視空間スケッチパッド、中央実行系から成り立っている。

人名

スキナー(Skinner,B.F.) スキナー箱を用いて、オペラント条件づけやシェイピングの研究を行った。

ソーンダイク(Thorndike,E. L.) 問題箱を用いて動物の試行錯誤学習を研究した。効果の法則や練習の法則の提唱者。

トールマン(Tolman,E.C.) ワトソンの行動主義の極端な客観性を修正し、刺激と反応の間に「期待」という媒介変数を組み込んだ。

パブロフ(Pavlov,I.P.) 条件反射の研究で有名なノーベル生理学・医学賞の受賞者。

ハル(Hull, C.L.) 刺激と反応のみに着目したワトソンの行動主義に対して、トールマンと共に動機や期待などの内的要因を導入して新行動主義の流れを作った。

ミラー(Miller,G.A.) 言語心理学及び認知心理学のパイオニア。マジカルナンバー7±2を提唱し、記憶の限界が7±2チャンクであるという説を唱えた。

ローレンツ(Lorenz,K.Z.) ノーベル生理学・医学賞の受賞者。刷り込み(インプリンティング)や臨界期という概念を提唱したことで有名。

ワトソン(Watson,J.B.) 行動主義という言葉を広めた。ワトソンは、後の新行動主義と区別して、古典的行動主義者と呼ばれる。「私に健康な1ダースの子どもを与えてくれれば、どのような専門家にも育てることができる」という内容の記述が有名。

参考文献

  • 鎌原雅彦・竹綱誠一郎(2019) やさしい教育心理学[第5版] 有斐閣
  • 子安増生・丹野義彦・箱田裕司(監修)(2021) 有斐閣 現代心理学辞典 有斐閣
  • 繁桝算男・四本裕子(監訳)(2013) APA心理学大辞典 培風館
  • 長谷川寿一・東條正城・大島尚・丹野義彦・廣中直行(2020) はじめて出会う心理学 第3版 有斐閣

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    • この記事を書いた人

    こころ

     臨床心理学・実験心理学等を学んだ後、心理カウンセラーとして勤務。現在はライターとして活動中。

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