この記事では、発達心理学の代表的な用語とその意味をまとめています。
はじめに発達心理学のキーワード、その後に著名な発達心理学者を「あいうえお順」で並べています。リンクからは、より詳しい解説をしている記事に飛ぶことができますので、気になるワードをチェックしてみてください。
※発達心理学がどういう分野なのか、研究対象や領域が知りたい方は以下の記事を参考にしてください。
>発達心理学とは?詳しい特徴や、関連のある資格・学会、大学について紹介
用語
あ行
愛着(アタッチメント) 養育者など特定の対象との間で形成される情緒的な絆のこと。乳幼児に限られず、生涯にわたって見られる。
アイデンティティ(自我同一性) 「これが自分だ」という感覚、「過去も現在も未来もすべて繋がっていて、私は私であり続ける」という感覚のこと。
一次の心の理論 ある人がどのように考えているかを推測する能力のこと。
安全基地 愛着が形成されている対象がもつ、心の拠り所としての機能のこと。
ウェルビーイング 世界保健機構(WHO)の定義では、「単に疾病や障害がないことではなく、身体的、精神的、社会的に良好な状態」とされている。
また、セリグマンによると、ウェルビーイングの構成要素はP(ポジティブ感情)、E(物事への積極的な関わり)、R(他者との良い関係)、M(人生の意味や意義の自覚)、A(達成感)からなり、PERMAと呼ばれている。
SOC理論(補償をともなう選択的最適化理論) 加齢による衰えに対し、「選択」、「最適化」、「補償」という3つの要素を駆使して適応していくための仕組みのこと。
か行
外言 自分以外の人とコミュニケーションを取るために発せられる言語のこと。⇄内言
外発的動機づけ 報酬や罰などのように、やる気の要因が自分の外部にあるもの。⇄内発的動機づけ
学校心理士 学級担任や保護者とチームを組んで、心理教育的援助サービスを行う専門家であることを示す資格。
感覚運動期 0〜2歳の時期にあたり、自分の身体感覚や運動を通して周りの世界を認識していく時期のこと。さらに6段階に分類される。
キャリア 家庭、職場、社会などにおける役割の積み重ねのこと。
キャリア発達 生涯にわたり、キャリアを通して自分らしい生き方を追求して追求していくプロセスのこと。スーパーは、成長期から衰退期に至るまでに担う様々なキャリアをライフキャリア・レインボーとして表現した。
ギャングエイジ 児童期の後半頃、同性・同年齢で作られたグループで行動することが多く見られる時期のこと。
吸啜反射 新生児期に見られる、唇に触れたものを吸おうとする反応のこと。
協同遊び イメージやルールが共有され、目的を持って役割に従って遊ぶもの。3〜6歳頃で見られるようになる
共同注意 自分と相手が同じ対象に注意を向けること。他者の指さす方を向いたり自分が指をさすなど、三項関係の成立を示す行動。
具体的操作期 7〜11歳の時期にあたり、目に見える具体的な物があれば、論理的な思考が可能となる時期のこと。保存の概念も獲得される。
形式的操作期 11、12歳以降、具体的なことや現実のことだけではなく、抽象的なことや架空のことについても考えられるようになる時期のこと。
結晶性知能 自国の生活に適応していく中で身につく知識や、実生活での問題解決能力など、年齢とともに上昇していく知能のこと。⇄流動性知能
原始反射 新生児期に見られる自然に体が動く反応のこと。吸啜反射、モロー反射、把握反射など。
語彙爆発 1歳半〜2歳以降、ものに名前があることを知り多くの言葉を覚えていく時期のこと。
高齢期 65歳以上の時期で、エリクソンによれば喪失や別れを経験しながら人生をまとめあげる時期とされる。
心の理論 自分が経験していない場面において、他者が経験したことを推測する能力のこと。4、5歳頃に心の理論が成立し(一次の心の理論)、8、9歳頃にそれがさらに発達する(二次の心の理論)。
個性化 その人らしさを追求していく過程のこと。
ごっこ遊び 前操作期にイメージの発達に伴って見られるもので、実際の自分とは異なる役割になりきる遊びのこと。お店屋さんごっこ、お医者さんごっこなど。
さ行
(発達の)最近接領域理論 子どもが自分一人でできる領域と今はまだできない領域との間にある、「手伝ってもらえればできる」領域を発達の最近接領域という。最近接領域に働きかけることが、できることを増やすために重要だという考え方のこと。
サクセスフルエイジング(健康な老い) 加齢に伴う様々な変化に適応しながら、より上手く歳を取るように心がけること。
サリー・アン課題 一次の心の理論の成立を調べるための課題。
「サリーがボールを自分のカゴの中に入れ立ち去った後、アンがそのボールを自分の箱に入れる。その後戻ってきたサリーはボールを取り出すのにどちらを探すか。」
3歳児では「箱」と答える場合が多いのに対し、4歳以降では「カゴ」という回答が増えていく。
三項関係 自分と相手だけの1対1の世界から、他の対象も含めた世界のこと。三項関係が成立するのは、9ヶ月頃と言われている。
視覚的断崖 乳児の奥行き知覚を調べる実験に用いられる装置のこと。実際にはガラスによって平面になっているが、乗っている乳児には断崖のように見える。
自己概念 自分がどのような存在なのか、ということに対するイメージのこと。
自己鏡映像認知 鏡に映っている自分を見て、自分だと認識できること。
自己決定感 誰かに強制されたのではなく、自分自身で決めたからするのだ、という感覚のこと。
自己決定理論 外発的動機づけには自己決定感の高さによって段階があり、自己決定感が高まる事で内発的動機づけに移行する、という考え方のこと。
自己効力感 自分ならできるという、自分自身に対する期待のこと。困難な状況に前向きに立ち向かう原動力となる。
自己中心性 社会性が未発達なため、自分の見ている景色や考えていることと同じように他者も見たり考えたりしていると思い込んでいること。
思春期 児童期後半から青年期の前半あたりの時期で、第二次性徴により情緒面にも大きな変化が見られる時。
10歳の壁 小学四年生頃から勉強内容が難しくなり、学業に支障をきたす子どもが増えてくる現象。
児童期 小学生に相当し、論理的な思考が始まり、友人や大人との関わりを通して社会で生きていくためのスキルを身につけていく時期。
児童心理司 児童福祉法及び地方自治法に基づいて、都道府県と政令指定都市に設置されている児童相談所において、主に心理的な側面に関する職務を行う資格。
小1プロブレム 小学校に入学したての子どもが、落ち着いて座っていられなかったり先生の話を聞かなかったりすること。幼保連携プログラムにより、スムーズに就学を迎えられるような工夫がなされている。
ジョンとメアリーのアイスクリーム屋課題 二次の心の理論の成立を確かめるための課題のこと。
「ジョンとメアリーがワゴン車のアイスクリームを買いに公園に行くが、お金がなかったためメアリーはお金を取りに家に帰る。
その後ジョンはアイスクリーム屋が教会に移動すると聞きメアリーの家に行く。アイスクリーム屋が移動途中にメアリーに会い、教会に移動すると伝える。
メアリーの家につき、『メアリーはアイスクリームを買いに行った』と聞いたジョンは、メアリーがどこに行ったと思うか」
4、5歳では「教会」という誤答が多いのに対し、8、9歳では「公園」という回答が増える。
新生児期 生後1ヶ月間の時期。
新生児微笑 新生児の頃だけに見られる、外部からの関わりとは関係なく反射的に現れる微笑みのこと。
ストレンジ・シチュエーション法 乳児の愛着形成のタイプを把握するための観察法のこと。
乳児が母親との分離や対面、ストレンジャーとの対面等によりどのような反応をするかにより、回避型、安定型、アンビバレント型、無秩序型に分類される。
成人期 20代中頃〜65歳くらいまでの時期、もしくは40代の中年期に入る前までの時期。
青年期 中学生頃〜20代中頃までの時期。
前操作期 2〜7歳の時期にあたり、イメージをする力が育ちごっこ遊びができるようになる。自己中心性が強く、保存概念も獲得されていないことが特徴的。
た行
第一次反抗期(イヤイヤ期) 2、3歳頃に見られるため「魔の2歳児」と言われることもある。自分でやりたいという気持ちが高まる一方で、できないことや気持ちの表現や切り替えも未熟なため、主張が激しい行動となる。
理解者から気落ちを代弁してもらったり必要な手助けをしてもらいながら、言葉で表現できるようになっていく。
胎児期 出生前の約10ヶ月間のこと。
第二次性徴 児童期後半頃に性ホルモンの分泌が盛んになることから、男子は男性らしい体型に変化し、女子は女性らしい体型に変化すること。
第二次反抗期 思春期や青年期に親や教師などに対して批判的な態度を取りながら、自分自身の価値観を確立しようと葛藤する時期のこと。
脱中心化 自己中心性をの状態を脱し、他者の視点が自分の視点とは違うことを認識するようになること。
探索行動 歩けるようになった幼児が、安全基地である養育者の元から離れて外の世界を探索し、不安や恐怖を感じるとまた養育者の元に戻る、という行動のこと。
中年期 成人期の後半にあたる40代以降から65歳の高齢期に入る前までの時期。中年期の危機を通してアイデンティティの再構築が行われる。
な行
内言 他者とのコミュニケーションを目的とするのではなく、自分が考えるために使われる言語のこと。⇄外言
内発的動機付け それ自体が楽しかったり、やりがいを感じられるなど、自分の「したい」という思いがやる気の要因となっているもの。⇄外発的動機づけ
二次の心の理論 ある人がどのように思っているかを別の人がどのように思っているか、を推測できること。
乳児期 出生後から1歳ないし1歳半までの時期のこと。
は行
把握反射 原始反射の1つで、手のひらを刺激すると握りしめようとする反応のこと。
保存の概念 見た目の変化に惑わされず、実際の量や数が変わらないという認識のこと。同じ量の水を違う形の入れ物に移し替えても、水の量は変わらない、など。
ま行
三山課題 自分の見え方と他者の見え方を区別できるかどうかという「空間的視点取得能力」を調べるための実験。台座に特徴の異なる3つの山の模型を置き、子供がいる位置とは違う位置に置いた人形からは、どのように見えるかを選ばせる課題。
4、5歳では人形の位置から見える景色は自分と同じだと答え、7歳頃から両者が異なることが分かるようになり、9、10歳頃になると自分以外の視点から見える景色を正しく認識出来るようになる。
モロー反射 原始反射の1つで、大きな音や強い光などを受けると、素早く両手を広げてしがみつこうとする反応のこと。
や行
幼児期 1歳半頃〜就学前までの時期。第一次反抗期を経て自律性や自主性が育つ時期。
ら行
ライフサイクル論 エリクソンによる生涯発達論のこと。乳児期から老年期までの8段階からなる。
流動性知能 新しい情報を身につけ処理していく能力で、30代〜50代をピークに低下していく知能のこと。⇄結晶性知能
臨床発達心理士 臨床発達心理士会に所属し、発達心理学をベースにした発達的観点から、乳児期から高齢期までの発達支援を行う資格。
人名
ヴィゴツキー(Vygotsky,L.S.) 内言と外言について研究し、幼児のひとりごとは心の中で考える事ができるようになるにしたがい減少していくと考えた。また、発達の最近接領域の概念を提唱した。
エインズワース(Ainsworth,M.D.H.) ストレンジ・シチュエーション法を考案し、観察法により乳児の愛着のタイプを類型化した。
エリクソン(Erickson,E.H.) ライフサイクルを8段階に分け、それぞれにおける発達課題を示した。
ギブソン(Gibson,E.J.) 視覚的断崖実験により、乳児が奥行き知覚の能力を持つことを示した研究が有名。
キャッテル(Cattell,R.B.) 結晶性知能と流動性知能を区分した。
ピアジェ(Piaget,J.) 子どもは、感覚運動期、前操作期、具体的操作期、形式的操作期、という4つの段階を経て発達していくと提唱した。
ボウルビイ(Bowlby,E.J.M.) 愛着(アタッチメント)理論の提唱者。
参考文献
- 麻生武・浜田寿美男(編)(2012) やわらかアカデミズム・<わかる>シリーズ よくわかる臨床発達心理学[第4版] ミネルヴァ書房
- 子安増生・丹野義彦・箱田裕司(監修)(2021) 有斐閣現代心理学辞典 有斐閣
- 林洋一(監修)(2010) 史上最強図解 よくわかる発達心理学 ナツメ社
- 渡辺弥生(監修)(2021) 完全カラー図解 よくわかる発達心理学 ナツメ社